部落差別は、今 ~TUBAME-JIROのブログ~

当事者の声、マイノリティの視点、差別の現実を踏まえた情報発信をしています。

丹波篠山市長が部落差別動画の削除仮処分の申し立て!YouTube、ライブドアブログ、ニコニコ動画が削除!

◆部落を撮影した差別的な動画がアップ

2020年9月、YouTubeGoogle)とライブドアブログ(LINE)に兵庫県丹波篠山市被差別部落が撮影された動画がアップされていました。

地区名や地区住民の名前、同地区への道程なども撮影され動画で晒されていました。

動画では同地域が被差別部落であると摘示され、部落へのマイナスイメージ、偏見を助長する編集が行われていました(鳥取ループ・示現舎とは別の人物)。

YouTubeライブドアブログに削除仮処分の申し立て

市のモニタリング(差別投稿のネットパトロール)と地元住民からの通報により、差別動画の事実を知った丹波篠山市は市長と自治会長の連名で同年10月、YouTubeライブドアブログに対して動画削除の仮処分申立を行いました。

当初、YouTubeもLINEも「動画削除の仮処分申立」の却下を求める答弁書を裁判所に提出し争う姿勢でしたが両社とも2021年1月、動画を自主的に削除したために市と自治会は「仮処分申立」を取り下げました。

ニコニコ動画には「削除仮処分命令」が出され削除

一方、2020年11月、ニコニコ動画ドワンゴ)にも同様の動画がアップされました。丹波篠山市自治会はニコニコ動画に対しても同年12月、動画削除の仮処分申立てを裁判所に行いました。

ニコニコ動画は「任意では削除しない」と争う姿勢を示しており、2021年2月に裁判所の仮処分命令の決定を受けて動画を削除しました。

係争中、別途、3社に対して丹波篠山市長名で、差別動画を放置している企業の社会的責任について問う内容の質問状を送付していました。

◆市長の英断、毅然とした対応

今回、初めて行政が部落差別の動画投稿の削除仮処分の裁判を行いました。市長の「部落差別は許さない」という強い意志のもと、市と自治会が原告となり、結果的に3社から動画を削除させたことの意味は大きいです。

ニコニコ動画に対しては、発信者情報の開示、市の原告適格について争うことで裁判が長引くことが予想されたため早期対応を優先し、最終的に市が原告を降り、発信者情報の開示手続きは行わないという判断を行いました。

5月31日、丹波篠山市長は記者会見を開き「部落差別をなくすのは市の責務で、長年取り組んできた」「表現の自由があろうと、許されるものではない」と怒りのコメントを発表しました。

市の人権担当課は「差別動画を見る側にも問題がある」として人権啓発の重要性を強調しました。

顧問弁護士は「今後、別の動画サイトへ再び投稿するなどの動きがあれば、投稿者の特定も検討する」とコメントしています。

www.kobe-np.co.jp

 

成果

①行政が「同和地区の識別情報の摘示」「個人の特定」などの差別動画に対して、裁判(削除仮処分)を起こし、結果的に3社とも削除させることが出来たこと。

②地元自治会が「同和地区の識別情報の摘示」の原告になることが出来、削除させることが出来たこと。

③行政のトップ(市長名)として、同和地区の市民の人権侵害がネット上で行われていることに対いて、SNS事業者に対して社会的責任を問う質問状を送付していたこと。

今後、各自治体や自治会などでも裁判を使った削除要請を行うという方法も実施して欲しい。

 

課題

①行政・地元自治会からの任意の削除要請では、SNS事業者は各社とも差別動画を削除しなかったこと。

②仮処分申立てがあってもSNS事業者は当初、削除せず「争う」姿勢を示していたこと。

「プロバイダ契約約款モデル条項」の差別禁止規定(「同和地区の識別情報の摘示」禁止、2017.3)や法務省依命通知(削除対象、2018.12)が出されているにも関わらずプロバイダは、裁判所の仮処分命令が出ないと削除しない現実があらためて浮き彫りとなりました。

 

www.kobe-np.co.jp

 

 

「プロ責法」改正は部落差別解消にどう影響するの?

プロバイダ責任制限法」改正って?

2021年4月21日、「プロバイダ責任制限法」(「プロ責法」)が改正され、匿名の発信者が特定されやすくなりました。今後、ネット上で深刻化する誹謗中傷、差別投稿の民事訴訟刑事告発が増えることが予想さます。

すでに警察庁は「第4次犯罪被害者等基本計画」に初めて「ネット中傷」対策を記載し、本年4月からネット誹謗中傷等の相談体制の充実に取り組み始めています。

今回は「プロ責法」改正のポイント、部落差別解消に向けた今後の課題について考えたいと思います。

投稿者特定の裁判が1回に!(改正前は2回)

今回の法改正で1回の裁判で発信者が特定できるようになりました。これまでは裁判➀「IPアドレス」開示→裁判②「契約者情報」開示という2回の裁判をおこなっていましたが、今後は①「IPアドレス等」開示は裁判所の判断(非訴)で可能となりました。裁判所が「権利侵害」の可能性が高いと判断すれば、被害者はIPアドレス等(投稿日時)を教えてもらえます。そして次に接続プロバイダに契約者情報(名前や住所など)を教えてもらい匿名の発信者(投稿者)を見つけ出します。

 発信者が分かれば、相手に名誉毀損や侮辱、プライバシー侵害などで損害賠償請求の裁判(民事訴訟)を行います。同時に警察に 刑事告発(侮辱罪、名誉毀損罪、脅迫罪)も出来ます。

ネット被害者の負担が大きすぎ!(被害者救済の課題)

ネット中傷の裁判(開示請求・削除仮処分⇒本訴・賠償請求)は最低でも「50~100万円」は必要と言われています。勝訴しても弁護士費用などを考えると金銭的メリットはほぼありません(弁護士費用等=慰謝料)。刑事告訴しても「侮辱罪」は科料1万円以下。木村花さんの中傷投稿者は侮辱罪で、二人(大阪府福井県)とも科料9000円でした。日本ではネット人権侵害の被害者が圧倒的に不利な状況です。

 【課題】

➀被害者の裁判費用の支援
 国や地方自治体等で裁判費用支援が必要(人権侵害救済機関・制度の構築)
 例)長崎県はコロナ差別のネット中傷などの裁判費用を一部負担しています。
・弁護士料5万円(相談)、開示請求に関わる訴訟費用の半額負担(上限30万円)

➁部落差別解消の視点は、抜け落ちている。
今回は発信者情報の開示(裁判簡素化)が中心の改正でした。しかし、鳥取ループやヘイターなどの確信犯は名前や住所を公表して活動しています。それらの悪質な確信犯に対しては、今回の法改正では意味がありません。 


【部落差別解消に「プロ責法」改正をどう活かせる?】

「侵害情報」(第3条)に「同和地区の識別情報の摘示」を該当させる。

今回の法改正では新たに「侵害情報」という言葉が使われています。「侵害情報」と判断された場合のみ「削除」や「開示」が可能となります(第3条2項)。

②「名誉毀損・プライバシー関係ガイドライン」の削除対象に「同和地区の識別情報の摘示」を明確に盛り込むこと!
どのような投稿を削除対象とするのか、過去の裁判判例法務省の見解などにもとづきガイドラインが作成されています。今後、法改正を踏まえたガイドラインの改定(第5版)があると思います。そこにしっかりと、法務省の依命通達を踏まえ、削除対象に「同和地区の識別情報の摘示」を盛り込ませる必要があります。
また、鳥取ループ・示現舎との裁判判決が9月27日に出されます。この裁判に勝訴し、その判例を踏まえ、今後、プロバイダの削除基準にしていくことも大事です。

3、「部落差別解消推進法」を強化改正が必要!
「部落差別解消推進法」には「差別禁止」規定がありません。「推進法」を強化改正し、「差別禁止」規定を盛り込む必要があります。その際にポイントが「行為規制」という視点です。解放運動の活動家など個人に対する誹謗中傷などはどこまでが「批判」なのか、プロバイダには判断が難しいところがあります。

しかし、差別身元調査や土地差別調査などの「行為」は現実社会では部落差別であるとして、行政や企業なども「禁止」ということで取り組みを進めています。

そこで下記の3つのは部落差別「行為」として、最低限、法令・ガイドラインで禁止する。

➀結婚や就職の差別身元調査
➁土地差別調査(不動産取引において同和地区の物件か調べる)
③同和地区の識別情報の摘示(暴露)

すでに、和歌山県の「部落差別解消推進条例」(2020年12月改正)は上記のような形で「行為規制」の項目を入れました。プロバイダに対しても、条例で示した部落差別(行為)を認識したら「削除」(拡散・送信防止)義務を入れています。今後、鳥取ループ裁判の完全勝利、「部落差別解消推進法」の強化改正、包括的差別禁止法の制定、人権侵害救済機関の設置に向けた取り組みにむけて、一つひとつ立法事実を積み上げていきましょう。

衆議院法務委員会で部落差別の実態について質問!

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部落差別解消法の具体化に向けて質問する宮崎政久議員
2021年3月17日の衆議院法務委員会で宮崎議員(自民)から、「部落差別解消推進法」の具体化についての質問が行われました。法務省が実施した「推進法」第6条にもとづく実態調査結果を踏まえた課題について明らかになりました。
★成果
法務省は部落差別について結婚や交際で現存しているとの認識をあらためて明らかにした。
②「識別情報の摘示」(ネット上で同和地区を晒す行為)は、結婚差別などの部落差別に直結するとの認識を示し、法務省としてプロバイダ等の事業者に徹底するとの姿勢をあたらめて明らかにした。
③人権相談を地方自治体とさらに連携して取り組む姿勢を示した。
★課題
法務省の依命通達だけでは、鳥取ループの「部落探訪」は削除できていない。

法務省が依命通達をもとに「識別情報の摘示」を削除要請しても消されない現実が浮き彫りになった。ネット事業者も訴訟リスクを恐れて対応しない。削除させるための法令が必要!!
②相談体制の充実では職員の部落問題研修を充実するというが、法務局の職員は「中立性」という名のもとに、解放同盟などが関わる集会や学習会には一切参加していない。当事者団体や地元の部落の人たちとかかわらずに、どうやって部落差別を理解するのか。
③これまで当事者は、そんな法務局への不信感から結婚差別や差別発言を受けても法務局に相談してこなかった。その結果で、部落差別が「少ない」という認識をしてきた。
今後、一つひとつの部落差別事件を法務局へ報告、人権侵犯事件として相談して、差別行為者に対しての説示や限界の立法事実を積み上げて、包括的差別禁止法や人権侵害救済法の必要性を求めていく必要がある。
・・・・・・・・・・・
以下、具体的な質問と答弁になります。

◆部落差別解消推進法
【宮崎議員:部落差別の現状認識について】
部落差別については「政府は部落差別の実態についてどう認識しているのか?」「6条調査結果をふくめて政府の認識」を問いました。
【小野田法務大臣政務官
「同和地区の出身を理由に結婚を妨げられたり、差別発言、落書きをされたりなどの事案が存在しており、以前として部落差別はあるものと認識している。
法務省人権擁護局は2020年6月、実態調査結果をとりまとめた。この調査においても、国民の間に部落差別についての正しい理解が進む一方で、特に交際、結婚に関しては心理面における偏見、差別意識が依然として残っていることが明らかになっている。」
法務省の人権擁護機関においてはこの実態調査の結果も踏まえて、部落差別の解消に向けて国民の理解と共感を得られるような人権啓発活動や、相談者に寄り添った人権相談等にしっかりと取り組んでまいりたい」と答弁。
【宮崎議員:削除要請について】 
同和地区の識別情報を誰もがネット上で検索できて、リストすら入手できる状況がある。これまでは興信所に聞くなどをしていたが、そんなことをしなくても出来るようになっている。2018年12月の法務省の依命通知後、削除要請とその結果、運用前後の変化があるのか。
【菊池人権擁護局長】
部落差別は依然として存在している。結婚や交際などの部落差別を可能にしているのが、特定の地域を同和地区と特定する情報であり、「識別情報の摘示」といわれる情報である。
法務省の人権擁護機関としては従前から、ネット上の人権侵害情報に関して、プロバイダ等に削除要請等をおこなうこととしている。
特に識別情報の摘示の事案については、2018年12月27日の依命通知により、その目的の如何に問わず、それ自体が人権侵害の恐れが高い、すなわち違法性の高いものであり、原則として削除要請の対象とすべきものであるとの考えのもと対応している。」
「具体的に依命通知の前後の状況について、ネット上の「識別情報の摘示」の人権侵犯事件の件数は2018年が40件(削除要請5件)、2019年が200件(削除要請20件)であり、2020年も増加傾向にある。しかし削除要請後の削除率は残念ながら顕著な変化はない。
この点について、「識別情報の摘示」が「部落差別に直結する情報であって、すみやかに削除されるべきでものであるとの認識を事業者との間で協議・認識できるよう、意見交換の場を設けてまいりたい。」
「いずれにしても識別情報の摘示の事案に対して、適切に対処していきたい。」との答弁。
【宮崎議員:相談体制の充実について】
調査結果では、都道府県の人権相談窓口の設置は半数以下。相談体制の充実に向けてどう取り組むのか。その際、地方法務局が各地の地方法務局と自治体が連携することが大事。モデル地区を設置した取り組みをしてはどうか?
【菊池人権擁護局長】
法務省・地方法務局・各支局もいれると311カ所の人権相談窓口がある。まずは、相談に応じる職員が部落差別について正しく理解する必要があり、職員に対する研修をしっかりとおこなっていく。」
地方公共団体の連携として人権啓発活動ネットワーク協議会があり、都道府県レベルで50、市町村レベルで193ある。このネットワークは人権啓発活動を中心としてものであるが、既存の窓口やネットワークを活用して、相談体制の充実に取り組んでいきたい。」
信恵、他40人
 
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2、法務省が把握する部落差別の実態~法務省「部落差別」実態調査から~

  • 法務省の人権擁護機関が把握する差別事例の調査」結果から明らかになった課題

1、部落差別を受けた被害者は法務局に相談にいっていない。

法務省の人権相談件数は「氷山の一角」であり、件数ゼロ=「差別なし」ではありません。法務省へ部落差別を受けた被害者が相談に行くのは1%前後(各自治体の人権意識調査結果)で氷山の一角です。相談件数の少なさが、実態を反映している訳ではありません。

法務省は市民・地域住民とのつながりなどはほとんどなく、部落出身者も法務省との信頼関係や心理的・物理的距離が遠いです。そのため、部落差別を受けても法務省などには相談に行きません。また、被害者が法務省に相談しても解決の見通しがたたず、相談機関を知らないなどの課題があり、現行の「人権相談」の在り方自体が問われています。

③部落差別の正確な現状認識をするためにも、相談体制の充実が必要。地方自治体や隣保館、当事者団体などとの連携が必要です。

 

2、結婚差別や特定個人への差別表現

①結婚・交際における部落差別の現実(毎年40~50件の相談)

毎年40~50件の交際・結婚差別の人権相談があり、人権侵犯事件としても10~20件の対応がおこなわれています。交際(結婚)相手の親族や家族が加害者となっているケースが多く、実効性のある対応が求められています。

特定個人に対する誹謗中傷が多い

部落出身者などへの差別発言など特定個人への誹謗中傷が一番多く18%(2017年)、被害者が受ける傷は深刻です。人権侵害の被害者救済のために、政府から独立した実効性のある第3者機関の創設が必要です。

 

3、ネット上の部落差別(識別情報の摘示)への対応強化

①実社会における部落差別事件は減少傾向で、逆にネット上の部落差別が急増。

②ネット上の部落差別は「識別情報の摘示」が8割以上。

・インターネット上の部落差別は「識別情報(地区名)の摘示」が最も多く、現在も鳥取ループ・示現舎らの「識別情報の摘示」行為をとめることが出来ておらず、被害が拡大しています。当該「鳥取ループ・示現舎」らの行為を禁止する法整備やプロバイダ等の取り組みが急務です。

 

法務省の要請で7~8割が削除されている。

地方自治体のモニタリングの導入によって、これまで放置されてきた「識別情報の摘示」が捕捉されはじめています。法務省のプロバイダ等への「要請」の「削除確認率」は高いため、地方自治体とのモニタリング団体等との連携により、迅速で実効性のある削除要請の取り組みを強化する必要があります。

すでに、法務省は地方法務局に対してネット上での「識別情報の摘示」については原則削除との依命通達を出しており、「表現の自由」ではなく人権侵犯事件としての処理するように徹底した取り組みを進める必要があります。

 

【参考情報①】第2章 法務省の差別事例 調査結果(メモ)

(1)法務省の部落差別等の人権相談の特徴

・年間約400件の相談件数(地方自治体、年間計2000~2400件)

・結婚・交際差別が年間40~50件

・実社会の相談が90%以上。→ネット上の差別の相談体制が不十分

・ネット上は「識別情報の摘示」が一番多い。

 

(2)法務省の部落差別等の人権侵犯事件の特徴

・年間約100件、人権侵犯事件として処理

・一番多いのは「識別情報の摘示」(43.7%)、次に個人の誹謗中傷(27.2%)2017年

・2013年は実社会90.0%(ネット上が10.0%)だが、2017年は実社会46.6%、ネット53.4%であり、半数以上がネット上になった。

・実社会は特定個人の誹謗中傷が増加している(27(2013年).8%→41(2017年).7%)

・結婚・交際差別も15%前後で推移している。

・被害者と相手方は「当人及び交際(結婚)相手の親族・家族」が最も多い20~30%

ネット上の部落差別は「識別情報の摘示」が8割以上、全体の件数増加に直結

・モニタリング導入で、地方公共団体が認知する件数が増加した可能性が大きい。

・「識別情報の摘示」への対応は、プロバイダ等への削除「要請」が6~7割。

・要請後の「削除確認率」は96.6%(28/29件、2015)→74.1%(20/27件、2017年)

 

(3)法務省の差別事件の「まとめ」

  • 人権相談総数、年間22~23万件、部落差別の割合は2%。人権侵犯事件の割合は0.5%前後。→相談体制の充実が課題。
  • 被害者は60代以上、相手は50代以上が多い。「若年層は当事者となる事例はさほど多くない」→?若年層が法務局に相談に行ってないだけでは?
  • 人権侵犯事件は、ネット上では「識別情報の摘示が大半を占めている」鳥取ループへの対応、削除対応の徹底を!
  • 実社会における差別事例は、結婚(交際)差別、差別落書き、特定個人への誹謗中傷(差別)が多い。→人権侵害の救済機関が必要

1、地方自治体が把握した部落差別の現実 ~法務省「部落差別」実態調査結果から~

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2019年法務省「部落差別」実態調査より

法務省が2019年に「部落差別解消推進法」第6条にもとづき「4つの実態調査」を実施し、2020年6月に「報告書」が出されました。

「4つの実態調査」とは、

1、法務省が把握した差別事例(過去5年)
2、地方自治体が把握した差別事例(過去5年)
3、インターネット上の部落差別事例
4、国民意識調査(全国1万人対象)
 
地方自治体が把握する差別事件の調査」から見たいと思います。

(1)年間2000件以上、部落差別の相談

①毎年、全国の県市町村の自治体に対して年間2000~2400件の部落差別の相談があることが明らかになりました。

人権侵害の被害者が法務局や市役所等に相談にいくのは1割もいません。この数字は「氷山の一角」であり、差別を受けた被害者が相談できていないいケースが圧倒的に多いことを踏まえておく必要があります。

②相談内容としては「結婚・交際差別」が毎年50~100件、差別表現は年間500~600件あり、厳しい部落差別の現実が明らかとなっています。差別の被害者救済、差別禁止法の整備が急がれます。

(2)結婚差別、差別発言は2倍、ネット差別は3倍に!

 結婚差別の相談は毎年50~100件あります。過去5年間(2013~2017年)で比較すると、個人を対象とする「差別表現」は101件から194件へと2倍に増えています。そのうちインターネット上は3倍(13%から43%)に増加しています。

(3)土地差別事件の実態把握を!

①「その他」の相談は年間1400~1500件あり、「同和地区の所在地」の問い合わせなども含まれています。今回の調査では、土地差別については調査項目に入っていませんでした。

②この間、マンション開発業者や住宅販売会社による土地差別調査事件、市民の同和地区問合せ事件などが問題となってきました。

今後、国交省による土地差別、宅地建物取引における部落差別の実態調査の実施に取り組んでい引く必要があります。すでに全国10府県以上で実施されてきた土地差別に関わる実態調査の結果を集約することなどはすぐにできます。

 (4)ネット上の部落差別とモニタリング

①インターネット上の部落差別解消にむけて全国で133の自治体がモニタリングを実施していました(2019年2月時点)。

地方自治体の部落差別等の相談事例の調査では「モニタリングによる認知は『相談等』に該当しない」としており、上記の相談件数(年間2400件)には含まれていません。

③ネット上の部落差別を含めるとさらに差別事例の件数は増加することになります。特に現在の部落差別の主戦場はネット上となっています。ネット上における部落差別の現実は別項目で報告したいと思います。

④今回の調査では「国が公権力によるモニタリングを推奨していると受け止められるような調査内容を及び手法を避けるなど、表現の自由に十分留意したものとすべき」としています。

インターネット上の部落差別解消に取り組む自治体のモニタリング(削除要請)の取り組みを、法務省が否定しかねない記述となっており注意する必要があります。

新型コロナウイルスの感染者や家族等に対するネット上での誹謗中傷や個人情報さらしなどの深刻な差別の現実を踏まえ、全国で20府県以上の自治体がコロナ差別のモニタリングをおこなっています。個人の出自や差別を扇動する投稿、人権侵害の誹謗中傷は表現の自由ではありません。無法地帯化しているネット上の差別に対する取り組みを強化する必要があります。

 

⑥すでに同和地区の所在地情報をインターネット上に掲載すること(識別情報の摘示)は「表現の自由」ではなく人権侵犯事件として処理(削除対応)するよう各地方法務局に依命通達を出しています。
 モニタリングの取り組みを否定するのではなく、法務省地方自治体と連携しネット上の部落差別の解消に向けた取り組みを強化していく必要があります。

 

  (5)差別事件の加害者に対する改善要求は1割

 地方自治体の差別事件への対応は「関係機関の案内・紹介等」が4割前後であり、差別事件の加害者(行為者)への改善要求は1割でした。差別事件の加害者に対する改善要求等の取り組みが今後の課題です。そのためには「和歌山県部落差別解消推進条例」(2020年施行)のように、差別行為を禁止し、行政として説示・改善をもとめる法令を整備する取り組みが求められています。

 地方自治体の今後の課題

(1)人権問題の専門相談窓口の設置

「人権問題の専門相談窓口・人権相談対応は半数以上」ですが、専門の職員を配置した常設の窓口は少ないです。専門相談窓口の設置・周知、相談員のスキルアップなどが課題です。

 

(2)学校での同和教育が重要

「差別表現」はネット上のものが多数を占めていますが、根本的な解決のためには、学校教育における部落問題学習の充実、地域や職場などにおける市民啓発の徹底が必要です。

(3)鳥取ループ・示現舎の「部落探訪」の削除
 ネット上の差別事件は「同一のウエッブサイトの重複相談もある」として課題が明確である。鳥取ループ・示現舎の「部落探訪」のような悪質な同一サイトへの対応強化が求めれています。

「同和地区のアウティング」通報のポイント

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YouTubeの通報フォーム(2021.3.3現在)

 

同和地区の地名を掲載し、動画や写真で撮影しYouTubeTwitterなどに掲載する悪質な投稿も目立っています。鳥取ループ・示現舎の行為に影響を受けて、同様の行為する人が出はじめています。

現在、全国200以上の都府県の自治体がモニタリングを実施しています。自治体や個人等などがそういった差別投稿を発見した場合に、掲示板(2ちゃん、5ちゃん、爆サイ)、YouTubeTwitterなどのSNS事業者に通報することで投稿を削除されるケースも増えてきました。

そういった同和地区の所在地情報の削除要請の際に、下記のポイントを押さえて通報すると削除されやすいです。同和地区の暴露(所在地情報の摘示)などに対する、この間の政府や法務局、業界団体などの取り組みをまとめてみました。 

1、法務大臣の答弁(2016年3月10 岩城光英法務大臣の答弁)

2016年3月10日、参議院法務委員会で有田芳生議員が、インターネット上において同和地区の所在地が流布され、部落差別が助長・誘発されている状況について、法務省に見解と対策を求めました。

岩城法務大臣は「・・・インターネット上で不当な差別的取扱いを助長・誘発する目的で、特定の地域を同和地区であるとする情報が今なお掲載されていることは、人権擁護上、看過できない問題であり、あってはならないことであると考えている。」として、プロバイダ等への削除要請を強化すると答弁しました。

 2、「部落差別解消推進法」施行(2016年12月16日施行)

2016年12月に「部落差別解消推進法」が成立・施行しました。
同法律の第1条の目的には「現在もなお部落差別存在するとともに、情報化の進展にともなって部落差別に関する状況が変化している」として、インターネット上に同和地区の所在地情報の一覧を掲載したり、ブログや動画等で同和地区を晒す差別行為が深刻化していることが大きな立法事実として法律が作られました。 

3、総務省が国内のプロバイダ業界団体に要請(2017年1月)

2017年1月、総務省が通信関連業界団体に対して「同和地区の所在地情報の摘示行為は部落差別を助長・誘発する行為」であるとして、対策の要請をおこないました。

 同和地区の所在地情報のネット掲載はアウト!~プロバイダー業界団体が禁止規定に追加! - 部落差別は、今 ~TUBAME-JIROのブログ~ (hatenablog.com)

 

 4、違法・有害情報「契約約款モデル条項」の禁止規定に該当する

2017年3月15日、国内のプロバイダ等の通信関連業界4団体の代表メンバーからなる「違法情報等対応連絡会」において「違法・有害情報への対応等に関する契約約款モデル条項の解説」の改訂がおこなわれました。

参照:https://www.telesa.or.jp/consortium/illegal_info/20170315_press(違法情報等対応連絡会HP)

 

その第1条「禁止事項」の(3)「他者を不当に差別もしくは誹謗中傷・侮辱し、他者への不当な差別を助長し、またはその名誉もしくは信用を毀損する行為」に、

不当な差別的取扱いを助長・誘発する目的で、特定の地域がいわゆる同和地区であるなどと示す情報をインターネット上に流通させる行為が追加され、同和地区の所在情報の摘示行為は人権侵害につながるための対策が求めれました。 

5、法務省が地方法務局へ「依命通知」(2018年12月)

2018年12月、法務省は各地方法務局・人権擁護機関へ「同和地区の所在地情報」に関する依命通知を出しました。依命通知では「特定の地域が同和地区である、またはあったと指摘する情報を公にすることは、差別の助長・誘発目的かどうかにかかわらず、人権擁護上許容し得ない」とし、「原則として削除要請などの措置の対象」としました。


鳥取ループ・示現舎らが「部落探訪」「部落差別解消推進」などの名目で、同和地区の所在地情報や写真・動画などを掲載することが続いているために、従来の部落差別の削除基準を大きく変更しました。

参照:法務省HP 「依命通達」http://www.moj.go.jp/content/001290357.pdf

法務省が同和地区情報の削除対応を強化! - 部落差別は、今 ~TUBAME-JIROのブログ~ (hatenablog.com)

上記のポイントを押さえて、みんなでどんどん通報していこう!

 

追伸 通報のテンプレも作成!

ブログをみた方がさっそくYou Tubeに通報してくれまています。このテンプレ(500文字以内)を参考に各自でどんどん通報お願いします。You Tubeは半年以内に3つの動画を規約違反として削除させることができたら、チャンネルごと削除させることができます。


YouTubeの通報フォーム(500文字以内)

「攻撃的な、またはヘイトスピーチを含むコンテンツ」⇨「差別や暴力の助長」⇨次へ⇨詳細を入力⇨報告

 

次の4つの理由により、本動画の削除をお願いします。

1)2016年12月、インターネット上に同和地区の所在地情報の一覧が掲載され、ブログや動画等で同和地区を晒す差別行為が深刻化しているという立法事実を背景に「部落差別解消推進法」が施行されています。

2)2017年1月、総務省が通信関連業界団体に対して「同和地区の所在地情報の摘示行為は部落差別を助長・誘発する行為」であるとして対策の要請をおこなっています。

3)2017年3月15日、国内のプロバイダ等の通信関連業界4団体の代表メンバーからなる「違法情報等対応連絡会」において「違法・有害情報への対応等に関する契約約款モデル条項の解説」の改訂が行われています。これにより「同和地区の所在情報の摘示行為」は人権侵害につながり、対策が求められています。

4) 2018年12月、法務省は各地方法務局・人権擁護機関へ「同和地区の所在地情報」に関する依命通知を出しており「特定の地域が同和地区である、またはあったと指摘する情報を公にすることは、差別の助長・誘発目的かどうかにかかわらず、人権擁護上許容し得ない」とし「原則として削除要請などの措置の対象」としています。

「差別戒名」 死後まで差別された被差別部落


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 死者に対する「差別戒名」

被差別部落の人たちは死後も差別されてきた歴史があります。

戒名に「畜」「賤」「革」「穢」など差別されてきた人たちの身分や職業などをもとに、墓石や位牌、過去帳などに「差別戒名」が刻まれていました。

「差別戒名」は江戸時代中期から1940年頃までに、部落の檀信徒のみに「授与」され「不当に差別され、貶められた戒名」のことです。

また、各寺院が供養のために作成していた過去帳(戒名、俗名、死亡年月日、施主との続柄等記載)にも部落の死者に対しては「穢多、非人、新平民」などと添え書きされていました。

記載型式においても部落の死者のみが過去帳の「巻末に一括記載」「一字下げ記載」「別冊」などの差別事例も多く報告されいます。

差別戒名と知らず供養してきた部落の人たち

私は大学生の時、「リバティおおさか」で、初めて差別戒名を見て、死後まで部落差別されてきた歴史に悔しさでいっぱいになりました。

差別と貧困のなか教育を奪われ、その差別戒名の文字を読めずに、大切な先祖のお墓だと供養してきたムラの人たちもいました。

宗教が差別に加担してきた歴史をしっかりと学ぶことがいかに大事なことか。私たちの当たり前の生活や慣習のなかに差別の文化として根付いていないか、しっかりと見抜く力が、ほんと大事になってきます。

 

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教団に差別戒名の指南書が

これらは単に差別戒名をつけた僧侶個人の差別意識の問題ではなく、江戸時代初期に差別戒名をどのようにつけるかという本があいつで刊行されていました。

葬儀や戒名など全般にわたって差別的な指導がおこなわれてきた背景がありしました。
これらの指南書*1は、宗派の創始者の書物とともに宗派の教本となり、明治以後もその差別性が指摘されることがありませんでした。

1980年代に入り、仏教界、日本の宗教界も部落差別解消に向けて取り組むようになり、これらの問題が明らかになってきました。曹洞宗だけでなく、浄土真宗両派、天台宗真言宗、浄土宗、臨済宗日蓮宗などにも及んでいました。

 曹洞宗は40年間かけて回収・供養

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曹洞宗は1981年9月、永平寺において『曹洞宗差別戒名追善供養」をおこない、全1万カ寺以上の寺院を対象に実態調査をおこないました。特に、部落と関係がある寺院約550カ寺については、さらに詳細な追加調査をおこないました。

そこで253カ寺に差別戒名の墓石(145カ寺)・位牌(25カ寺)・過去帳218カ寺)の存在が明らかになり(2006年時点)、下記の基本方針のもと全ての差別戒名に対する改正等の取り組みを実施しています。

 ①「差別戒名」墓石は、差別を隠蔽することにならないように、埋めない」「砕かない」「隠さない」という原則にたち、身元調査に悪用されないように個人墓地から、寺院境内の「合同供養棟」などに合祀するようにしました。

②位牌や過去帳の「差別戒名」は、一般的な戒名への書き換えをおこない、寺院過去帳の書き換えをおこなってきました。

 

 今回、40年間かかり「差別戒名」墓石のすべてを寺社へ移設が完了しました。

2020年6月5日付けの「中外日報」に曹洞宗の差別戒名の記事が掲載されました。

【「差別戒名」が刻まれた墓石を檀家の墓地から三界萬霊供養塔に移設する「改正」作業を進めてきた曹洞宗はこのほど、全国145カ寺にあった全ての「差別戒名」墓石の移設を完了させた。今年3月、最後の1カ寺となっていた埼玉県の寺院で追善法要を営み、あらゆる差別の撤廃と人権の確立の実現に向け、さらなる精進を誓った。

宗務庁は全国寺院へのアンケートや現地調査などを実施し、全国253カ寺に差別戒名が記された墓石(145カ寺)と過去帳218カ寺)があることを把握した。】

  

www.chugainippoh.co.jp

*1: 曹洞宗の指南書・・・『禅門小僧訓』は、禅宗の儀式等の方法などが書かれている本であり、その最初の項目が「餌取ー穢多之事」という「差別戒名」のつけ方が掲載されていました。

江戸時代は『貞観政要格式目』(15世紀初頭成立)、『諸回向清規』(1566)、『無園慈悲集』(1660)など臨済宗や浄土宗の僧侶によって書かれた差別戒名の「指南書」もあいつで出されていました。

ここに脚注を書きます

「部落問題って?」ざっくり言うと(入門編)

1、 部落差別って?

被差別部落(略して「部落」、「同和地区」)は「全国6000部落、300万人」と言われてきました。1993年の総務庁調査では同和地区は全国で4533カ所、同和地区人口(部落外からの転入者を含めた人口)は約216万人。同和関係者(部落出身者)は約89万人います。

現代の部落差別とは、部落に生まれた(育った)、住んでいる(いた)など、部落に地縁・血縁関係などにルーツを持っていたり、そう「みなされた人」への差別です。部落出身者でなくても、部落に引っ越して住むことで世間からは「部落の人」と「みなされて」差別を受けることもあります。

2、 どんな差別があるの?

部落に対する偏見や差別言動、差別投書など日常生活における差別のほかに、結婚差別、就職差別、土地差別(マイホーム購入などで同和地区を忌避)など利害が絡む場面において差別が顕在化しています。また、結婚相手が部落出身かどうか調べる差別身元調査も後を絶ちません。


子どもの結婚相手が部落出身だった場合、5人に1人が「反対」という調査結果があります。
 大分県…37%(2014年)
 熊本県…35%(2015年)
 堺市…20%(2015年)

 3、部落の歴史

江戸時代の身分制度において「武士」「百姓」「町人」とは別に「穢多」(えた)・「非人」(ひにん)などと呼ばれ、身分上厳しく差別れていた人たちがいました。

「えた」身分の人たちの多くは農業などに従事しながら「皮革業」(武具・馬具、太鼓や雪駄)、「竹細工」「村の警備」「神事・芸能」「薬の製造・販売」など、多様な仕事に従事していました。


1871年(明治4年)に「解放令」(賤民廃止令)が出され「えた」「ひんに」と呼ばれた被差別民も「平民」と同様になりました。しかし、人々の差別的慣習や意識は残ったままで、仕事や学校、地域社会などで様々な差別を受けてきました。

4、部落解放運動の歴史 

1922年3月(大正11年)、京都の岡崎公会堂で「全国水平社」創立大会がおこなわれ全国から2000人を超える部落出身者らが参加しました。「人の世に熱あれ、人間に光あれ」と謳われた「水平社宣言」「日本初の人権宣言」とも言われています。

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全国水平社

水平社は、差別者への抗議と謝罪・反省を求める糾弾闘争を展開していきました。「部落民を差別をして何が悪い」と差別が公然化し、被差別者も泣き寝入りをしていた状態を糾弾闘争によって変えていきました。

戦後1946年(昭21)、全国水平社の指導者たちにより「部落解放全国委員会」が結成され、1955年(昭30)に部落解放同盟と改称し、現在に至ります(全国35都府県連に組織)。


戦後の被差別部落は「累積した差別の結果」、劣悪な住環境の実態、長欠不就学、不安定就労など生活レベルにおいても様々な問題を引き起こしていました。

この「実態的差別」の現実が、部落への偏見や忌避意識などの「心理的差別」を生みだし「差別と貧困の悪循環」が続きました。

このような差別の結果の状態を放置していることが差別行政であるとして、行政闘争が展開されていきました。個人の差別意識レベルだけでなく、その差別の結果に対する補償を求めていく闘いが展開されていきます。

 5、同和行政って?

同和行政とは、部落差別解消に向けて取り組む行政のことです。

戦後の部落解放運動の高まりのなかで、1965年(昭40)に内閣「同和対策審議会」答申が出され、同和問題の解決は国の責務であり、国民的課題である」」「寝た子を起こすな」という考えでは差別はなくならいとして、同和問題解決に向けた施策がスタートしました。

1969年(昭44)に同和対策事業「特別措置法」(特措法)が施行され2002年までの33年間、同和地区の住環境整備や教育・福祉・就労対策、同和教育(部落差別解消の人権教育)などが行われてきました。


2002年に「特措法」が失効すると同時に「部落問題は解決した」「終わった」という誤った認識などが広がり、学校や社会教育などでも部落問題に関する研修が激減していきました。

同和行政・同和教育が後退するなかで、逆に部落差別に対する社会規範が緩み、各地で悪質な差別事件が続発していきました。同時に2000年代以降、インターネットの普及により、新たな部落差別の形を生み出し、深刻化していきました。

 

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参議院・法務委員会で「部落差別解消推進法」が可決・成立

6、「部落差別解消推進法」施行(2016年12月)

このような状況の中、2016年12月に「部落差別解消推進法」(以下、「推進法」)が成立・施行されました。

推進法の第1条では「現在もなお部落差別が存在する」として、部落差別の解消に向けて国・地方自治体の責務を明らかにしました。具体的施策として、部落差別解消に向けて

「相談体制の充実」(第3条)、

「部落差別解消のための教育・啓発の推進」(第4条)、

「部落差別の実態調査」(第5条)

など国や地方自治体は部落差別解消に向けて取り組むことが求められました。

 

7、情報化社会における部落差別の深刻化

「部落差別解消推進法」成立の背景には、インターネットを悪用した部落差別の深刻化があります。ネット上の部落差別として

①偏見・差別情報氾濫、

②「部落地名総鑑」(同和地区の一覧リスト)の公開

などの問題が指摘されています。

 

近年はインターネット・SNSを悪用した差別事件が深刻化しています。部落に対する偏見・差別情報の拡散、全国の部落の一覧リスト(ネット版「部落地名総鑑」)や部落出身者の個人情報リストなどがネットに掲載され、各地の部落の動画や画像をブログやSNS上で差別的に「晒す」などの差別扇動が起きています。

 

8、「全国部落調査」復刻版裁判

 2016年2月、「鳥取ループ」と名乗るMという人物が代表を務める神奈川県の出版社(『示現舎』)が、「部落地名総鑑の原点」との見出しで『復刻版 全国部落調査』を出版するとしてAmazonで予約受付を開始し、そのデータを「同和地区wiki」という形でインターネット上でも公開しました。

 

『全国部落調査』とは、戦前、1935年に政府の外郭団体が全国約5300カ所の部落の実態調査をおこなった調査報告書です。部落の所在地・戸数・生活程度などが書かれており、部落地名総鑑の原点」とも言われた本です。

 

1975年(昭50)に発覚した部落地名総鑑』差別事件では、この本が悪用されて『部落地名総鑑』が作られ、大手の企業300社以上が一冊5万円で購入し、部落出身者の就職差別や結婚差別の身元調査に悪用されていました。法務省は10年間かけて663冊を回収し、すべて焼却処分にしました。この事件をきっかけに企業における就職差別撤廃の取り組み、同和問題・人権問題解決の取り組みがはじまりました。

 

鳥取ループ・示現舎は「同和問題のタブーをおちょくる」として、10年ほど前から同和地区の所在地を特定し、ネット上に晒してきた確信犯です。

法務局や行政から何度も人権侵犯事案との指導を受け、裁判でも負け続けていますが、ネット上に同和地区の所在地や動画や画像などをさらす行為を繰り返しています。

2016年3月、解放同盟の訴えをうけて裁判所は示現舎に対して『復刻版・全国部落調査』の出版禁止の仮処分決定を下しました。同年4月にはネット上に掲載された「同和地区wiki」というサイトも削除命令の仮処分決定が下されました。

 現在、部落解放同盟と同盟員ら248名が原告となり、一人110万円、合計約2億8000万円の名誉棄損等の民事訴訟をおこなっています。これまで東京地裁で8回の公判がおこなわれており、今年中に地裁判決が出される予定です。

 

★入門編のおすすめ図書

『知っていますか?部落問題 一門一答 第3版』(解放出版社、2013年) 
『はじめての部落問題』(角岡伸彦、文春新書、2007年)
『土地差別―部落問題を勧化る』(奥田均、解放出版社、2006年)
『結婚差別~データーで読む現実と課題』(奥田均、解放出版社、2007年)
『結婚差別の社会学』(齋藤直子、勁草書房、2017年)

『人権教育への招待』(神村早織・森実編著、解放出版社、2019年)

『部落差別解消推進法を学ぶ』(奥田均、解放出版社、2019年)
「ネットと差別扇動」(津田大介、谷口真由美、荻上チキ、川口泰司、解放出版社、2019年)

関西電力問題について解放同盟が声明!

関西電力高浜町の元助役の金品受領をめぐる問題について、解放同盟中央本部が10月7日に声明を表明した。

主なポイントは下記になる。

 ①「森山氏自身による私利私欲という問題に部落解放同盟としては一切の関与も存在していない」

②1975年の「女性教員に対する糾弾」は解放同盟が関与した差別事件ではない。

関西電力の問題の「本質が同和問題」にあるとする一部の間違った考への反論

④「同和利権」の「風評被害」がネットで増大、高浜町に差別的な文章やメール

⑤明らかにされるべきは原発建設をめぐる地元との癒着ともととれる関係、資金の流れ

⑥「同和利権報道」に対して、カウンターなど多くの団体や個人が批判を展開

 以下が解放同盟のコメントになる。

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福井県高浜町元助役から関西電力幹部への金品受領問題に関する部落解放同盟のコメント

 関西電力の幹部ら20人が福井県高浜町の元助役森山栄治氏(以下、森山氏という)から約3億2千万相当の金品を受け取っていたという問題で、森山氏自身にスポットをあて、森山氏の隠然たる力の背景には、部落解放同盟の存在があり、同和の力を利用し、差別をなくすという名目で、関西電力を恐れさせ、地元高浜町で確固たる地位を築くまでに至ったとする報道内容が一部で取り上げられている。

 また、森山氏が町長をもしのぐ権威をもつに至る背景に、部落解放同盟の存在があり、高浜町関西電力に対してプレッシャーをかけていたとも報道されている。

しかも週刊誌にとどまらずネット上でも、「高浜町助役は、地元同和のドンだった」など、差別的な書き込みが拡散され、社会意識として存在する部落差別意識を巧みに利用した差別文章が流布されている。

マスコミ関係者や一部のネットユーザーなどによって拡散されようとしている部落差別の助長拡大の現状に対して、わが同盟として明確な見解とこの事件に対する同盟としての態度を明らかにしておきたい。

 

まず、その第一には、森山氏自身による私利私欲という問題に部落解放同盟としては一切の関与も存在しないという点である。

森山氏は、1969年京都府綾部市職員から高浜町に入庁している。
1970年部落解放同盟福井県連高浜支部が結成され、福井県内唯一の解放同盟支部の結成ということもあって、部落解放同盟福井県連合会も同時に結成されている。

その結成に尽力したこともあって、森山氏は県連書記長(同時に高浜支部書記長)に就任。2年間書記長の要職に就いている。

しかし、その言動が高浜町への厳しい指摘であったり、福井県に対する過度な指摘等が問題とされ、2年で書記長職を解任されており、それ以後、高浜町の職員として従事するようになる。

確かに解放同盟の関係者であり、県連結成に尽力したひとりではあるが、解放同盟内で影響力を持っていたのは、2年間の書記長当時だけであり、それ以後は、解放同盟福井県連や高浜町支部の運営等において関与することはなく、もっぱら高浜町の助役として原発の3号機・4号機の誘致と増設に奔走したと思われる。

 

第二に、部落解放同盟福井県連(同高浜支部)の状況についてである。

部落解放同盟福井県連合会は、高浜支部の一支部だけで構成されており、その所帯数も80世帯ほどの被差別部落であり、同盟員数に至っても200名ほどの小さい県連の1つである。

福井県に対する交渉においても中央本部役員が同行し、県との協議を進めているのが現状であり、福井県高浜町、ましてや関西電力に大きな影響を及ぼすほどの組織ではない。

 ネットや週刊誌で一部指摘されている1975年の「女性教員に対する糾弾」という事例についても解放同盟福井県連・高浜支部ともにまったく知る由もない出来事であり、解放同盟が関与した差別事件ではないことを指摘しておきたい。

また、関西電力との関係においても、解放同盟福井県連・高浜支部はまったくの無関係であり、関電を相手に交渉を持ったり、要求書を提出したりなどの行為は一切ないこともつけ加えておきたい。

さらには、高浜町福井県に対しては、部落解放同盟中央本部と福井県連との合同の要求書を作成し、提出しており、年に数回程度協議の場をもっているなど、真摯に対応している。

つまり、「原発マネー」や度を超えた同和予算などが高浜町被差別部落に施策として実施された経緯はなく、社会性を持った要求内容であり、行政の議事録を振り返ってもらえれば理解できるものである。

 

第三は、この一連の経過の本質が、同和問題にあるとする一部の間違った考え方への反論である。

森山氏が培ってきた町を支配するかの如き振る舞いは、解放同盟の影響力を利用し、関電との蜜月な関係をつくりあげたのだと一部が報じている。

しかし、第二のところで指摘したとおり、福井県連は、高浜支部のみの組織であり、影響力が決して高いという団体ではない。

また、森山氏自身も1972年から書記長を退任し、解放同盟を離れ、同盟の影響力がまったくない状況時に、森山氏は助役へと上り詰め、高浜町全体に大きな影響力を持つに至るのである。

この一連の事件の本質が同和問題ではなく、原発3号機、4号機の誘致・建設にあると言うことがここからでも理解できよう。

つまり、解放同盟や同和問題という力を利用して隠然たる力を持つに至るという短絡的な問題ではなく、原発の建設運営をスムーズに持って行こうとする福井県高浜町関西電力による忖度が、森山氏を肥大化させ、森山氏が首を縦に振らなければ原発関連の工事が進まないという癒着ともとれる関係にまで膨れあがったのである。

また、助役退任後は、京都に住むところを移し、原発関連の企業の役員となり、権限を振るっていたという事実を見れば、「部落解放同盟の力を笠に着て」という範囲のものではないことが理解できるだろう。

 

さいごに、関西電力がとりまとめた調査委員会による報告書は、森山氏の一方的な叱責、罵倒、恫喝があり、それに臆してしまいズブズブの関係に至ったと記述されている。

そして、それが一部の週刊誌やネットでは、関電がビビった背景に同和がある。解放同盟の存在があると結びつけている。森山氏を高浜町のドンと扱い、逆らう者などいない。

ならず者呼ばわりするために、被差別部落の出身である。解放同盟の関係者であるという「部落は怖いもの」とする予断や偏見を利用し、さらに森山氏をアンタッチャブルの扱いにくい人物に一部マスコミは差別を利用して肥大化させているのではないだろうか。

部落と森山氏を結びつけることで、さらなる「風評被害」がネットで増大されている。高浜町にも差別的な文章やメールが後を絶たないと報告されている。

明らかにされなければならないのは、原発建設を巡る地元との癒着ともとれる関係であり、それにともなう資金の流れの透明化こそが、この事件の本質であるはずだ。

それを部落差別によって、事件の本質を遠のかせてしまうことになることだけは本意ではない。

原発の誘致・建設に至る闇の深さという真相を究明することは棚上げし、人権団体にその責任をすり替えようとする悪意ある報道を許すことは出来ない。
また、いち早くこうした“同和利権報道”に対して、ヘイトスピーチなどに反対してきた多くの団体や個人が批判を展開してくれていることもつけ加えておきたい。

 

2019年10月7日
部落解放同盟中央本部
執行委員長 組坂 繁之

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10/7に解放同盟中央本部が出したコメント

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関電事件は本当に「同和利権」なのか?~週刊「文春」「新潮」の記事をファクトチェック!~

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◆社会意識としての差別意識を利用

週刊文春週刊新潮(2019年10月10日号)は、関西電力高浜町の元助役の問題の背後には解放同盟がいて、元助役からの金品授与を拒否できなかったとのストーリーを展開している。

しかし、今回の金品授与問題で解放同盟が関与していた証拠はどこに示されていない。その証拠も出さずに、社会意識としての差別意識を利用し、共産党町議の証言で記事を展開。

鳥取ループ・示現舎のブログでは「関電が恐怖した高浜町助役は 地元同和のドンだった!」との記事が大反響。百田尚樹や著名なジャーナリスト、一部国会議員も示現舎の記事を参考に「関電問題は同和マター」との発信し始めている。Twitterやネット上では「関電問題=同和利権」としてトレンド入りまでしたという状況。

ただでさえ、今回の関電問題は「江戸時代の時代劇か!」と思わすぐらいの事件であり、社会的な関心も高い。そこに「同和マター」を入れることで、ネット上ではPVを稼げる絶好のネタになる。炎上商法で儲ける人たちにとってもおいしい話となっていく。

◆ネタ元は共産党鳥取ループ・示現舎

元助役を「『人権団体』で糾弾活動」(文春)と見出しに使い、社会意識として存在する「部落=怖い」の差別意識を利用していく。「人権団体を率いて、差別をなくす、糾弾活動の名目で恐怖政治を敷き、高浜町民を手懐けていく、まさに暗黒町政の時代だった」(文春)と地元関係者の証言として共産党町議の声を掲載。

何十年にわたり部落差別の存在を否定し、同和行政に反対し続けてきた共産党の地元町議の主張をベースに記事が展開。記事は「部落地名総鑑」出版事件の被告である鳥取ループ・示現舎のブログに掲載された三品純の記事と類似。本人が週刊誌に原稿を持ち込んだのかと思ったぐらい同じスタンスで書かれている。

「元助役=部落民?=解放同盟=糾弾=同和利権」のストーリーで、今回の問題の「本質」を「同和利権」「解同=糾弾」にすり変えていく典型的な印象操作。

◆フェイクと印象操作、ファクトから考える

ここで取り上げられた記事は約40年前の教員差別事件。しかも、これは解放同盟として行った糾弾会でない。そして、過去、多くの差別事件を「部落差別ではない」としてきた共産党の主張をもとにした一方的な記述。

そもそも高浜町でこの数十年間、解放同盟が行った糾弾会は10回もない。確かに、元助役は50年前に1~2年程、解放同盟で活動してたと記事には書いている。しかし、その後、町職員となってからは解放同盟の役員として糾弾会を実施した事実はなく、完全なフェイクである。

◆「同和行政=同和利権」という偏見

ただし、行政幹部として同和行政や同和教育に熱心に取り組んできた方ということは事実とのこと。差別と貧困の厳しい実態を改善するための対策として、国が特別措置法を制定し33年間にわたり格差是正と部落差別解消の取り組みを実施してきたのは事実である。

一部に不祥事はあったが、その多くは適正に実施され行政監査や議会承認を受けて実施れてきた。その結果、貧困や進学、進路保障など多くの成果があったことも事実。2002年、約20年前に「特措法」は失効した。

行政幹部が部落差別解消に向けて対応するのは当然であり、それの何が問題なのか。しかも、元助役は30年前の1988年に助役を退職し、今年3月に90歳で亡くなっている。
今回の金品授与問題に解放同盟支部がどう関与したのか、そんな証拠もしめさず、背景に部落問題、部落出身?というストリーを展開していく。

◆デマであれば自らも加害者になる自覚を

とにかく、現時点で明確な根拠や証拠もないのに「関西電力=解放同盟が~、同和利権が~」というノリで、拡散する人たちは、それが事実でないときは、部落に対する予断と偏見を広め、差別意識を増幅する加害者となっていることを自覚しておいてほしい。「森友問題=同和利権」のフェイクを思い出す。

今回の問題、「メディアと差別報道」「フェイクと差別扇動」「ニューレイシズム」の象徴的な部落差別の事例となっており、「部落差別解消推進法」施行3年の成果を一瞬で吹き飛ばす事態にならないか心配している。

メディアも含めて、しっかりとした対応をお願いしたい。