部落差別は、今 ~TUBAME-JIROのブログ~

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丹波篠山市長が部落差別動画の削除仮処分の申し立て!YouTube、ライブドアブログ、ニコニコ動画が削除!

◆部落を撮影した差別的な動画がアップ

2020年9月、YouTubeGoogle)とライブドアブログ(LINE)に兵庫県丹波篠山市被差別部落が撮影された動画がアップされていました。

地区名や地区住民の名前、同地区への道程なども撮影され動画で晒されていました。

動画では同地域が被差別部落であると摘示され、部落へのマイナスイメージ、偏見を助長する編集が行われていました(鳥取ループ・示現舎とは別の人物)。

YouTubeライブドアブログに削除仮処分の申し立て

市のモニタリング(差別投稿のネットパトロール)と地元住民からの通報により、差別動画の事実を知った丹波篠山市は市長と自治会長の連名で同年10月、YouTubeライブドアブログに対して動画削除の仮処分申立を行いました。

当初、YouTubeもLINEも「動画削除の仮処分申立」の却下を求める答弁書を裁判所に提出し争う姿勢でしたが両社とも2021年1月、動画を自主的に削除したために市と自治会は「仮処分申立」を取り下げました。

ニコニコ動画には「削除仮処分命令」が出され削除

一方、2020年11月、ニコニコ動画ドワンゴ)にも同様の動画がアップされました。丹波篠山市自治会はニコニコ動画に対しても同年12月、動画削除の仮処分申立てを裁判所に行いました。

ニコニコ動画は「任意では削除しない」と争う姿勢を示しており、2021年2月に裁判所の仮処分命令の決定を受けて動画を削除しました。

係争中、別途、3社に対して丹波篠山市長名で、差別動画を放置している企業の社会的責任について問う内容の質問状を送付していました。

◆市長の英断、毅然とした対応

今回、初めて行政が部落差別の動画投稿の削除仮処分の裁判を行いました。市長の「部落差別は許さない」という強い意志のもと、市と自治会が原告となり、結果的に3社から動画を削除させたことの意味は大きいです。

ニコニコ動画に対しては、発信者情報の開示、市の原告適格について争うことで裁判が長引くことが予想されたため早期対応を優先し、最終的に市が原告を降り、発信者情報の開示手続きは行わないという判断を行いました。

5月31日、丹波篠山市長は記者会見を開き「部落差別をなくすのは市の責務で、長年取り組んできた」「表現の自由があろうと、許されるものではない」と怒りのコメントを発表しました。

市の人権担当課は「差別動画を見る側にも問題がある」として人権啓発の重要性を強調しました。

顧問弁護士は「今後、別の動画サイトへ再び投稿するなどの動きがあれば、投稿者の特定も検討する」とコメントしています。

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成果

①行政が「同和地区の識別情報の摘示」「個人の特定」などの差別動画に対して、裁判(削除仮処分)を起こし、結果的に3社とも削除させることが出来たこと。

②地元自治会が「同和地区の識別情報の摘示」の原告になることが出来、削除させることが出来たこと。

③行政のトップ(市長名)として、同和地区の市民の人権侵害がネット上で行われていることに対いて、SNS事業者に対して社会的責任を問う質問状を送付していたこと。

今後、各自治体や自治会などでも裁判を使った削除要請を行うという方法も実施して欲しい。

 

課題

①行政・地元自治会からの任意の削除要請では、SNS事業者は各社とも差別動画を削除しなかったこと。

②仮処分申立てがあってもSNS事業者は当初、削除せず「争う」姿勢を示していたこと。

「プロバイダ契約約款モデル条項」の差別禁止規定(「同和地区の識別情報の摘示」禁止、2017.3)や法務省依命通知(削除対象、2018.12)が出されているにも関わらずプロバイダは、裁判所の仮処分命令が出ないと削除しない現実があらためて浮き彫りとなりました。

 

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