部落差別は、今 ~TUBAME-JIROのブログ~

当事者の声、マイノリティの視点、差別の現実を踏まえた情報発信をしています。

法務省が同和地区情報の削除対応を強化!

mainichi.jp

鳥取ループ・示現舎を意識した通知

 法務省同和地区の所在地情報の削除強化に取り組む方針を出しました(2018.12.27 通達)。明らかに鳥取ループを意識した、同和地区の所在地情報のバラまきへの対応指針です。あえて「差別解消」という名目をつけ、拡散する確信犯の対応もアウトにすると明確に位置付けました。

「部落差別解消推進法」施行から3年もかかったけど、一歩前進です。

このガイドラインをもとに、モニタリングと削除要請をプロバイダへ。企業へは広告撤退の通報など、どんどん展開していく取り組みが重要になってきます。
 2017年3月に国内プロバイダ業界団体も「同和地区情報の掲載」に関して差別禁止規定に該当するとの解釈を示し、各事業者の利用規約等の改正を呼びかけています。 法務省Googleマップ、ヤフーマップ、ヤフオク、メルカリも含めて「部落地名総鑑」への対応について、しっかりと取り組みを進めて欲しいです。

「諸刃の剣」には警戒

ただし、気をつけないといけないのは、この方針は諸刃の剣であることには注意する必要があります。正当な目的での実態調査や研究などの発表などの場合でも、規制・削除されることがないように注意しなければいけません。

法務省は「学術・研究などの正当な目的があり、情報の公表に合理的理由が認められるケースも想定されるため、『例外に該当するかどうかは個別事案ごとに判断する必要がある』としている」と回答しています。

上記の点をしっかりと踏まえて取り組んで行く必要があります。

法務省の削除依頼に法的拘束力がない

そして何よりの課題は、法務省がプロバイダに削除要請をしても法的拘束力がなく、あくまでSNS事業者の判断次第ということです。モニタリングで個人や行政が削除要請をし、法務省から削除要請をしても消えないケースもあります。それらの立法事実をしっかりと積み上げて行くことが今後、重要になってきます。

部落地名総鑑」はアウトという最低限のルールは、ネット上でも通用するようにする必要があると思います。

 

以下が、毎日新聞の記事(2019年3月24日)です。

インターネット上にある同和地区(被差別部落)に関する情報について、法務省人権擁護局が対応を強化した。従来は特定の人物を対象としていたり、差別の助長・誘発が目的だったりする場合に限ってプロバイダーなどに削除要請をしていたが、目的に関係なく、特定地域を同和地区であると明示していれば原則として削除を要請する強制力はないものの、これまでの運用に比べ、踏み込んだ対応となる。

 法務省がインターネット上の書き込みなどの情報を「人権侵害」とみなすのは、主に(1)名誉毀損(きそん)

(2)プライバシー侵害

(3)不当な差別的言動

(4)人種、社会的身分、門地(家柄)などの属性を理由に差別の助長・誘発を目的とした情報

――の4種類に分けられる。

同和地区の明示は(4)に該当する。

 現行の運用では、各地の法務局や地方法務局は(1)~(4)について被害者らからの申告を受けると調査を開始。

特定人物が対象となっている場合はプロバイダーへの削除要請などの措置を講じるが、(1)~(3)の不特定多数に対するものは削除要請までは行っていない

(4)については、差別を助長・誘発する目的であることが認められる場合、削除要請している。

 しかし、同和地区に関するネット情報の中には「部落差別の解消目的」などを掲げていながら、実質的な狙いは差別の助長・誘発であることが疑われるケースもあるという。法務省は削除要請の要件を逆手にとっている可能性があると判断し、昨年末に法務局・地方法務局に従来の運用を見直す通知を出した。

 通知は「特定の地域が同和地区である、またはあったと指摘する情報を公にすることは、差別の助長・誘発目的かどうかにかかわらず、人権擁護上許容し得ない」とし、「原則として削除要請などの措置の対象とすべきだ」と明記。ただし、学術・研究などの正当な目的があり、情報の公表に合理的理由が認められるケースも想定されるため、「例外に該当するかどうかは個別事案ごとに判断する必要がある」としている。

 

参考:2018年12月27日、法務省が地方法務局へ出した通達
 

 

以下、法務省通達の全文です。

                      法務省権調第1 2 3 号
                      平成30年12月27日
法務局人権擁護部長殿
地方法務局長殿

                    法務省人権擁護局調査救済課長
                     ( 公印省略)

インターネット上の同和地区に関する識別情報の摘示事案の立件及び処理について(依命通知)

今般, インターネット上の同和地区( 被差別部落)( 以下, 単に「同和地区」という。) に関する識別情報の摘示事案の立件及び処理についての考え方を下記のとおり整理しましたので, 今後は, これに従って取り扱い願います。

 

                 -記-

1 従前の取扱い

インターネット上で, 特定の地域が同和地区である, 又はあったと指摘する情報については,「インターネット上の人権侵害情報による人権侵犯事件に関する処理要領について」( 平成1 6 年1 0 月2 2 日付け権調第6 0 4 号法務局人権擁護部長,地方法務局長あて当職通知。 以下「平成1 6 年当職通知」という。) に基づき,「不当な差別的取扱いをすることを助長し,又は誘発する目的」( 以下「助長誘発目的」 という。) が存する場合に削除要請等の措置の対象としているところである。

特定の地域が同和地区である,又はあったと指摘する情報の中には,差別解消目的を標榜し,紀行文の体裁をとっているものもあるところ, 従前, この種の情報については, 助長誘発目的が必ずしも明らかでないとして, 削除要請等の措置の対象としないことが多かったと思われる。 しかし, 以下のとおり, 部落差別の特殊性を踏まえると, このような運用は, 見直す必要があると考えられる。

2 部落差別の特殊性を踏まえた識別情報の摘示に関する考え方

( 1 ) 一般的に,「人種,民族,信条,性別,社会的身分,門地,障害,疾病又は性的指向」に関する識別情報を摘示するだけでは, 直ちに人権侵害のおそれがあるとまでは言い難く, 表現の自由として許容される場合もあり得るところである。

そこで, 平成1 6 年当職通知 は, 助長誘発目的を要件とし, 識別情報の摘示のうち人権侵害を助長・誘発するおそれが高い, すなわち違法性( 注) のあるものを類 型化し, そのような場合は特定人に対する人権侵害の発生の有無にかかわらず, 削除要請等の措置の対象とするという方針を示したも のである。

このように, 助長誘発目的の要件は, 識別情報の摘示のうち, 違法性のあるものを類型化する機能を有するものであるが, 同和地区に関する識別情報の摘示については, 別段の考慮を要する。

すなわち, 部落差別は, その他の属性に基づく差別とは異なり, 差別を行うこと自体を目的として政策的・人為的に創出したものであって,本来的にあるべからざる属性に基づく差別である。また, このような不当な差別の対象とされる人々が集住させられた地域であるかつての同和地区は, 差別の対象を画定するための地域概念とされてきたものである。

このような地域概念と密接に結びついていた部落差別は, 個人の尊厳や法の下の平等を基本的価値とする現行法秩序とおよそ相容れないものである。それにもかかわらず, このような身分差別が廃止され, 1 0 0 年以上が経過した現在もなお, その地域の居住者, 出身者等について否定的な評価をするという誤った認識が国民の一部に残っている。

このような現実を前提とした場合,特定の者を同和地区の居住者,出身者等として識別すること自体が, プライバシー, 名誉, 不当に差別されない法的利益等を侵害するものと評価することができ, また, 特定の者に対する識別ではなくとも, 特定の地域が同和地区である, 又はあったと指摘する行為も, このような人権侵害のおそれが高い, すなわち違法性のあるものであるということができる。

このように, 特定の地域が同和地区である, 又はあったと指摘する情報を公にすることは, その行為が助長誘発目的に基づくものであるか否かにかかわらず, また, 当該地域がかつての同和地区であったか否かにかかわらず, 人権擁護上許容し得ないものであり, その点で, 他の識別情報と性質を異にするものである。

したがって,「〇〇 地区は同和地区であった( ある)。」などと指摘する識別情報の摘示は, 原則として削除要請等の措置の対象とすべきである。

各局においては,この種の情報について,上記の考え方に基づき,適切に立件・処理されたい。

( 注) ここにいう「違法性」は, 行為自体の危険性に着目したものであり, 特定人の権利・利益の侵害を要しない点において, 民法第7 0 9 条の不法行為責任が成立する場合におけるそれとは異なる。

( 2 ) もっとも, 特定の地域が同和地区である, 又はあったと指摘する情報であっても例外的に削除要請等の措置を講じるのが相当でない場合も考えられないではない。例えば, 学術, 研究等の正当な目的による場合であって, かつ, 個別具体的な事情の下で, 当該情報の摘示方法等に人権侵害のおそれが認め難い場合や, 社会通念上, 当該情報を公表する合理的な理由が認められる場合等である。

このような例外に該当するか否かについては, 個別の事案ごとに実質的に判断する必要があるので, 各局においては, 人権侵犯事件調査処理規程第2 2 条に基づく報告を行うことはもとより, 立件の可否について疑義がある場合には, 事前に当課宛て照会されたい。

 

3  平成1 6 年当職通知との関係
平成1 6 年当職通知は, 違法性のあるインターネット上の情報のうち典型的なものを例示するとともに, これらの事案の処理の統一を図るための指針を示したものに過ぎない。したがって, 同通知に列挙されたもの以外のものであっても,違法性が認められるものについては,人権侵犯事件調査処理規程等に基づき, 立件・処理すべきはもちろんである。

上記のような部落差別の歴史的本質を踏まえると, 同和地区に関する識別情報の摘示は, 目的の如何を問わず, それ自体が人権侵害のおそれが高い, すなわち違法性のあるものであり, 原則として削除要請等の措置の対象とすべきものであるので, 今後は, 上記2 に従って処理されたい。