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「法務省の人権擁護機関が把握する差別事例の調査」結果から明らかになった課題
1、部落差別を受けた被害者は法務局に相談にいっていない。
①法務省の人権相談件数は「氷山の一角」であり、件数ゼロ=「差別なし」ではありません。法務省へ部落差別を受けた被害者が相談に行くのは1%前後(各自治体の人権意識調査結果)で氷山の一角です。相談件数の少なさが、実態を反映している訳ではありません。
②法務省は市民・地域住民とのつながりなどはほとんどなく、部落出身者も法務省との信頼関係や心理的・物理的距離が遠いです。そのため、部落差別を受けても法務省などには相談に行きません。また、被害者が法務省に相談しても解決の見通しがたたず、相談機関を知らないなどの課題があり、現行の「人権相談」の在り方自体が問われています。
③部落差別の正確な現状認識をするためにも、相談体制の充実が必要。地方自治体や隣保館、当事者団体などとの連携が必要です。
2、結婚差別や特定個人への差別表現
①結婚・交際における部落差別の現実(毎年40~50件の相談)
毎年40~50件の交際・結婚差別の人権相談があり、人権侵犯事件としても10~20件の対応がおこなわれています。交際(結婚)相手の親族や家族が加害者となっているケースが多く、実効性のある対応が求められています。
②特定個人に対する誹謗中傷が多い
部落出身者などへの差別発言など特定個人への誹謗中傷が一番多く18%(2017年)、被害者が受ける傷は深刻です。人権侵害の被害者救済のために、政府から独立した実効性のある第3者機関の創設が必要です。
3、ネット上の部落差別(識別情報の摘示)への対応強化
①実社会における部落差別事件は減少傾向で、逆にネット上の部落差別が急増。
②ネット上の部落差別は「識別情報の摘示」が8割以上。
・インターネット上の部落差別は「識別情報(地区名)の摘示」が最も多く、現在も鳥取ループ・示現舎らの「識別情報の摘示」行為をとめることが出来ておらず、被害が拡大しています。当該「鳥取ループ・示現舎」らの行為を禁止する法整備やプロバイダ等の取り組みが急務です。
③法務省の要請で7~8割が削除されている。
地方自治体のモニタリングの導入によって、これまで放置されてきた「識別情報の摘示」が捕捉されはじめています。法務省のプロバイダ等への「要請」の「削除確認率」は高いため、地方自治体とのモニタリング団体等との連携により、迅速で実効性のある削除要請の取り組みを強化する必要があります。
すでに、法務省は地方法務局に対してネット上での「識別情報の摘示」については原則削除との依命通達を出しており、「表現の自由」ではなく人権侵犯事件としての処理するように徹底した取り組みを進める必要があります。
【参考情報①】第2章 法務省の差別事例 調査結果(メモ)
(1)法務省の部落差別等の人権相談の特徴
・年間約400件の相談件数(地方自治体、年間計2000~2400件)
・結婚・交際差別が年間40~50件
・実社会の相談が90%以上。→ネット上の差別の相談体制が不十分
・ネット上は「識別情報の摘示」が一番多い。
(2)法務省の部落差別等の人権侵犯事件の特徴
・年間約100件、人権侵犯事件として処理
・一番多いのは「識別情報の摘示」(43.7%)、次に個人の誹謗中傷(27.2%)2017年
・2013年は実社会90.0%(ネット上が10.0%)だが、2017年は実社会46.6%、ネット53.4%であり、半数以上がネット上になった。
・実社会は特定個人の誹謗中傷が増加している(27(2013年).8%→41(2017年).7%)
・結婚・交際差別も15%前後で推移している。
・被害者と相手方は「当人及び交際(結婚)相手の親族・家族」が最も多い20~30%
・ネット上の部落差別は「識別情報の摘示」が8割以上、全体の件数増加に直結
・モニタリング導入で、地方公共団体が認知する件数が増加した可能性が大きい。
・「識別情報の摘示」への対応は、プロバイダ等への削除「要請」が6~7割。
・要請後の「削除確認率」は96.6%(28/29件、2015)→74.1%(20/27件、2017年)
(3)法務省の差別事件の「まとめ」
- 人権相談総数、年間22~23万件、部落差別の割合は2%。人権侵犯事件の割合は0.5%前後。→相談体制の充実が課題。
- 被害者は60代以上、相手は50代以上が多い。「若年層は当事者となる事例はさほど多くない」→?若年層が法務局に相談に行ってないだけでは?
- 人権侵犯事件は、ネット上では「識別情報の摘示が大半を占めている」→鳥取ループへの対応、削除対応の徹底を!
- 実社会における差別事例は、結婚(交際)差別、差別落書き、特定個人への誹謗中傷(差別)が多い。→人権侵害の救済機関が必要