部落差別は、今 ~TUBAME-JIROのブログ~

当事者の声、マイノリティの視点、差別の現実を踏まえた情報発信をしています。

鳥取ループがついに「部落地名総鑑」を出版!~部落差別は、いま③~

f:id:TUBAME-JIRO:20190412230507j:plain

 

①「全国部落調査」復刻版出版事件

2016年1月、鳥取ループ・示現舎の宮部らは都内の大学図書館で『全国部落調査』を発見し、現住所を追加した全国の同和地区一覧リストをネット公開しました。

そして2月5日、『全国部落調査復刻版』を4月1日に出版すると告知し、アマゾンで予約受付を開始しました。

多く人たちが、アマゾン本社に抗議し、アマゾン本社は不適切と判断し、3日後には取り扱いを中止しました。

すると彼らは、今度は書店で発売すると公言。今度はすぐさま各書店に話をして、ほとんどの大手の書店は取り扱わない判断となりました。しかし、彼らは「電子図書もある」として、出版する意向は変わりませんでした。

鳥取ループの言動】

2月5日「全国部落調査」復刻版の販売予告
「復刻・全国部落調査を4月1日に販売いたします。旅のお供に、図書館での添削に、役立つことでしょう。アマゾンで「全国部落調査」の予約販売を開始しました。熱烈な予約注文をお願いします。日本の出版しに変革をもたらす本です」

2月10日 アマゾンの販売中止に対する居直り

「多少年月がかかっても、全国部落調査の出版は必ず実現しますよ。たとえ印刷所に圧力をかけようと、最近は中国でも韓国でも印刷を外注できるので無駄です。紙に限らず、電子書籍もアプリもあります。全国部落調査は不滅です」


解放同盟が宮部と面会

同年3月8日、西島藤彦部落解放同盟中央書記長が彼と対話を持ち、発刊中止を要請しましたが、宮部は拒否。そのため解放同盟は3月22日、「出版差し止め」の仮処分の申し立てをしました。そして3月28日、裁判所が仮処分決定を出し、『全国部落調査・復刻版』は出版差し止めとなりました。

3月29日、東京法務局長も彼らの行為を「人権侵犯」として本人に「説示」(啓発)をしましたが、宮部は法的な強制力はないと開き直りました。この問題は国会でも取り上げられ、有田芳生参議院議員法務省を追及しました。

 

【東京法務局長の説示 2016.3/29】

 「(インターネット掲載は)・・・不当な差別的取り扱いをすることを助長し、又は誘発するものと認められ、人権擁護上到底看過することが出来ない。よって、あなたに対して、前記各行為の不当性を強く認識して反省し、直ちに前記各行為を中止した上、今後、同様の行為を行うことのないように説示する」

有田芳生参議の質問に対する法務大臣の答弁 2016.4/5】
岩城法務大臣「委員からご指摘があった通り、不当な差別的取り扱い、これを助長・誘発する目的で、特定の地域を同和地区であるとする情報がインターネット上に掲載さるなどとしていることは、人権擁護上、看過できない問題でありまして、あってはならないことだと、そのように考えています」

 

ヤフオクに出品!51000円で落札!

宮部はその翌日3月29日、出版差し止めの訴訟資料や「全国部落調査」のコピーなどの資料をヤフーオークションに出品しました。

アマゾン同様、多くの人たちがヤフオクに「違反通告」をして取引中止を求めました。部落解放同盟中央本部も弁護士を通してYahoo!本社に抗議をしましたが、Yahoo! 本社は「取り扱い中止」にしませんでした。

結果、150件の入札の末、鳥取ループの出品した「部落地名総鑑」等の資料は51,000千円で落札されました。

41年前の『部落地名総鑑』事件以降、身元調査規制・就職差別撤廃に向けて取り組んできたのに「部落地名総鑑」を規制する法律がない、法の不備も痛感しました。

今回「取扱中止」しなかったYahoo!オークションの対応は許せません。その後、この件が国会で取り上げられると、ヤフオクは取引情報自体を「隠ぺい」するかのように削除しました。

その後も、彼らは『全国部落調査・復刻版』の原稿データーを無料公開し、各自で印刷・製本・販売するように教示・扇動しました。

f:id:TUBAME-JIRO:20161216003739j:plain

 

また、彼らは、出版物だけでなく「同和地区wiki」というサイトも運営しており、このサイトも、掲載禁止の仮処分になりました。しかし、「ミラーサイト」「コピーサイト」が作られ、現在も全国の同和地区の所在地情報が公開された状況になっています。

このような状況に対して、部落解放同盟は、同盟員1人につき100万円、原告総数248人、合計2億8千万円の損害賠償請求の民事訴訟を起こしました。

 

f:id:TUBAME-JIRO:20161216003835j:plain

f:id:TUBAME-JIRO:20161216003924j:plain

 

②差別性と問題点

明らかなプライバシー侵害!

本人同意なく部落出身者を「暴く」行為は、明確なプライバシー侵害です。部落差別が現存するなかで、「部落地名総鑑」をネット公開・出版することは、結婚や就職における身元調査、土地差別調査などの部落差別を誘発・助長する行為です。


ネットで身元調査を可能に!

彼らが行った最大の問題点は、ネット上で差別身元調査を可能にしたことです。戸籍の公開制限本人通知制度の導入、土地差別宅建業界への取り組みなど、これまでの部落解放運動や同和行政、同和教育運動の成果を破壊し、台無しにしています。

何より、部落差別が現存するなかで、「部落地名総鑑」をネット上に公開することは、部落差別を誘発・助長する行為です。

彼らは、部落解放同盟は誇りを持って部落を名乗っているのだから、それをネットで明らかにするのが差別というのは矛盾していると言います。

また、どこが部落かわかれば、隠す必要がないので差別する人はなくなる、という訳のわからない論理を持ち出しています。

第1回口頭弁論後の記者会見で、宮部は「ネットに公開することが問題であれば、自殺者が1人や2人出ていてもおかしくないのに、誰も出ていないではないか」と平気で言いました。この発言は本当に許せません。

彼らは、今実際に起きている差別事件や実態にはふれず、「部落差別はない。たいしたことない」の一点張り。もしまだ差別があるとすれば、責任は部落解放同盟にあるとして、差別を正当化する論理を主張。同和行政や解放運動を批判してもいいけど、部落差別を正当化していい理由にはなりません。

カミングアウトとアウティングは違う!

当事者のカミングアウトと、他者が「暴く」アウティングは意味がまったく違います。カミングアウトは自身が差別を乗り越えるうえで、相手や状況を判断し主体的にするもので、アウティングは単なる「暴き」です。

同和教育における部落民宣言、立場宣言は、部落の子どもたちが、差別に負けない力をつけ、肯定的なアイデンティティの確立、反差別の仲間づくりを目指しておこなわれてきました。

その前提として、しっかりとした部落問題学習や仲間づくり、地元の当事者との協議・信頼関係の上でおこなってきました。地元や当事者の同意もなく、勝手にアウティングする行為とは、まったく異なります。

また彼らは、過去の出版物にすでに地名が載っていると主張しています。部落史の本や資料、解放新聞などでの地名表記に際しては、基本的に、それぞれの地域の解放運動の状況を考慮し、掲載しています。その前提として、その書籍が「部落問題の解決に資するものかどうか」「どのような文脈や意図」で掲載するかで判断してきました。部落差別が現存するなかで、単に「どこが部落」を特定するだけの書籍は、「部落問題の解決に資する」とは到底、言えないことは当然です。

 

ヘイトクライムをやめろ!

鳥取ループ・示現舎に言いたい。

まじで、ほんとに、もうやめて!

差別と貧困のなか、学校にも行けず、それでも、たくましく生きてきた部落のおばあちゃんたちが、ネット上の差別に対して、ふるえている。

孫たちが差別の危険にされされ、晒ものにされている。
「今すぐになんとかしたいけど、ネットすら使えない自分たちはにどうするこもできない」「たのむから、おねがいだから、彼をとめてほしい」と涙を流して、私は手を握られた。

「おばあちゃん、ごめんね。ボクもほんとくやしいよ。なんとかするから」と、そんなことが何度あったことか。

頼むから、やめてくれ!


④「冷たいレイシズム

鳥取ループ・示現社のMらの行為は、部落問題をあまり知らない人からすると、一見、「ヘイトなの?」とわかりにくい。

彼は決して、ネット上でも、路上でも「部落民を殺せ!」などとは叫ばない。これまで賤称語を使ったり、露骨に「部落民との結婚はやめろ!」「あいつらは穢れている!」などとストレートな差別言動を発したことはない。

その意味では「彼ら行為はヘイトなの?」と思ってしまう。

しかし、「復刻版 全国部落調査」を出版したら、結婚差別で「一人や二人くらい死ぬ人がいるかと思ったら、そんなことない」と平気で言い放つ。

「同和タブーをおちょくる」として、市役所などに部落の所在地情報等の開示請求を繰り返し、「非開示」となると裁判を起こしてきた。

部落民の名字リスト(1万人以上)や、部落解放運動団体の役員や会員名簿(名前・住所・電話番号、生年月日等)の個人情報をネット上に晒してきた。(「解放同盟関係人物一覧」等は、「自分が作成したものではない。誰かがやった」と主張。しかし、その情報を二次利用し、掲載を許可・掲載し続けてきたのは事実)。

 

何度も法務局から「あなたがやっている事は部落差別を助長・誘発するからやめなさい」と言われ、国会でも法務大臣が、彼らのアウティング行為、「部落地名総鑑」の出版、ネット公開が「人権侵犯」であると指摘され続けてきたが、公然と反発し、やめない。

当事者が「やめてくれ」と訴えても、「いやだ」と笑いながら、その部落や部落出身者の個人情報や地域名、写真をアウティングし続ける。

当事者や主催者が拒絶しても、原告がいる講演会に、平気で土足で何度も侵入してくる。

2017年6月25日の上智大学でのABDARCでのイベントでは、主催者が事前に拒否していたのに被告本人Mが会場に侵入し、バレて追い出された。

「追い出されるのは分かっていた。だから、いつもと同じじゃ、おもしろくないから、ジョン・レノンの恰好を真似して、バンダナと黄色いサングラス、そしてマスクで、左翼系を意識して、入った」と冷笑しながら、示現舎のラジオで語っていた。

それを聞いて、私はぞっとした。
当日、彼の侵入により、講演を妨害され、動揺しながら、それでもた話し続けた出演者たち。

恐怖と精神的苦痛を受けて、動揺した当事者や関係者。彼のマイノリティを冒涜した行為を目の当たりにし、イベント中に体調を崩し、トイレで吐いた人もいた。

鳥取ループ・示現社は、まじめに部落解放に取り組む人たち、部落出身者を、あざ笑うかのように、自己の理屈をまき散らし、当事者が嫌がる事を、楽しみながら、繰り返す。

彼はマジョリティ社会に問うている。

「部落問題の情報を、運動団体や行政だけが独占するのは不公平だ。おれが公平にしてやっているんだ」「俺は差別なんてしていない。あくまで、部落に関する情報を公開しただけだ」

「俺が公開した部落の情報を使って差別するのは、それはお前たちの責任だ」「俺は知らない。その事で部落差別がおきても、それは俺の責任じゃない。おまえの責任だ」と、マジョリティ社会に語りかけているように聞こえる。

私は思った。この間、ずっと、もやもやしていた、彼の行為への言葉にならない気持ち。

「冷たいレイシズム

だと。