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部落差別は、今 ~TUBAME-JIROのブログ~

当事者の声、マイノリティの視点、差別の現実を踏まえた情報発信をしています。

「部落差別解消法」が成立!その意義と課題  ~奥田均さん(近畿大学)の講演より~

先日、大阪で「部落差別解消法」公開研究会があり、参加した。
近畿大学の奥田均さんから「部落差別解消法」の意義と課題についての講演があった。
以下は、講演概要の一部。

 

1、「部落差別解消法」制定の背景

(1)人権政策の確立「法」制定を求める部落解放運動・国民運動の蓄積と底地力。

そこに歌山県の解放運動の取り組みが後押しした。
運動で勝ち取った法律。

 

(2)部落差別の増大と悪質化

・ネット上での差別横行、挑戦的な「全国部落調査」復刻版出版事件。

以前、差別はコソコソやっていが、今は堂々とやっていた。
「全国部落調査」復刻版出版事件を通して、「これは、あんまりだ」という雰囲気を作り上げた。

 

(3)国際人権運動と連動した差別解消法の社会動向

人種差別撤廃委員会、自由権規約委員会からの再三の勧告。
2006年障害者権利条約、障害者基本法が改正、
2016年障害者差別解消法が施行。
日本ではじめて「差別」という文言が入った法律。
障害者問題が「差別」の突破口を開いた。

その後、ヘイトスピーチ解消法の制定(2016年5月)。
障害者、外国人の権利を求める運動が、部落問題へと結実していった。

 

(4)部落問題解決に執念を発揮する政治家の存在

自民党の二階幹事長は、和歌山県の御坊出身。
保守の人たちをも取り込んできた、和歌山の解放運動の成果。

 

2、「部落差別解消法」の意義

(1)部落問題に関する法的空白が解消された。

特措法失効後は、法的根拠がないかのごとく、同和行政の後退の口実にされてきた。しかし、こうした状況を打ち破った。

 

(2)部落差別の存在を認知した。

①部落は「ある」と公式に認知した。

・差別の現実を訴えるという行為は、カミングアウトを意味する。
・差別の「沈黙効果」、当事者は声を上げられない。
・当事者が差別を訴えれないところに差別の厳しさがある。
・特措法失効後は、行政は差別の実態把握すらしようとしなかった。
・部落差別の現実に対する無視や軽視、認識不足が広がってきた。

 

②この法律により部落差別の存在認知について決着がついた。

「ある」「ない」は、法律を遵守するかどうかの問題になった。

 ※第1条「現在もなお部落差別が存在する」

 

3,部落問題の解決を初めて法律で明記した。

同和対策審議会答申では、同和問題の解決を目的としたが、具体的な法律として、部落問題の解決を明確にうたった法律は今までなかった。

同和対策事業特別措置法(1969年~)の目的は、「対象地域における経済力の培養、住民の生活及び福祉の向上等に寄与することを目的とする」こと。同和対策事業が目的であり、部落差別の解消ではなかった。

※第1条「部落差別のない社会を実現することを目的とする」

 

4,「部落差別解消のための施策の実施」を国および地方公共団体の責務とした。

特別措置法は「同和対策事業」を執行するための行政責任が定めれていた。しかし、この法律は「部落差別の解消に関する施策」を求めている。

特措法は同和対策事業を実施することが行政の目的だった。
今回は、「部落差別解消に関する施策を実施」することが目的に。

※第3条「部落差別の解消に関する施策を講ずる」

 

5,相談体制の充実を打ち出した。

①現在の人権擁護委員制度の限界を認めた。
人権侵害救済制度の確立の一歩になる。

※第4条「部落差別に関する相談に的確に応ずるための体制の充実を図る」

 

6,部落問題に関する教育・啓発の実施を明記した。

①特法後、部落問題学習だけが、薄まっていった。

部落問題抜きの人権教育がすすんできた。2015年に実施した近畿大学学生(一年生)の人権意識調査結果では、部落問題学習についての学習経験「覚えてない・受けていない」が42.7%(前回09年は23.2%)であった。

※「覚えていない・受けていない」 6年前の23%⇒今回42%

一番減っているのは大阪。次に、中国地方が落ちており、関東・東北と同じぐらいの状況になっている。

②同和地区の有無にかかわらず教育・啓発を求めている。
③今後は、部落差別を解消するための教育・啓発=部落問題をしっかりと教えていくという法律になった。

※第5条「国は、部落差別を解消するため、必要な教育及び啓発を行う」

 

7,実態調査の実施を明記した。

実態調査は、

①「部落差別解消のための施策実施」の内容を浮かび上がらせる。
②「教育・啓発の実施」の内容を浮かび上がらせる。
③「差別規制・救済法的部分」の法制定の必要性を浮かび上がらせる。

 

この法律は、理念法に過ぎない。
しかし、「発展とは、矛盾の発展」である。
実態調査・相談活動を実施するなかで、この法律も発展していく。
理念法は、理念法であるがゆえに、自らを否定し、発展せざるえない。
時限爆弾が仕組まれている。それに火をつけるのが運動。
とにかく、この法律が出来たことを、多くの人にしってらうことが大事。
時代が変わったのだということを、もっと、知ってもらうことが大事。
この法律の具体化を広げないことには、課題も成果も何もあない。

例えば、人権擁護士などの専門家を配置する。
これまでは部落対策だった。同和教育も、同和校だけではダメ。
この法律は時限法でなく恒久法。
現実可能なところから、一つひとをやっていこう。

※第6条「部落差別の実態に係る調査を行うものとする」