部落差別は、今 ~TUBAME-JIROのブログ~

当事者の声、マイノリティの視点、差別の現実を踏まえた情報発信をしています。

身元調査(戸籍等の不正取得)と登録型「本人通知」制度

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行政書士司法書士などによる戸籍不正取得事件

弁護士や司法書士行政書士などの8士業の人は、「職務上請求書」を使用するれば、他人の戸籍や住民票を自由に取ることが出来ます。

この間、探偵社や調査会社などが行政書士などに依頼し、他人の戸籍等の個人情報を不正取得する事件が全国で発覚しました。

 

 2011年に発覚した一連のプライム事件。

東京の司法書士行政書士、横浜・群馬の探偵社などにより、全国の市町村から3万件以上の戸籍・住民票が不正取得されていました。

不正取得された個人情報が、結婚の身元調査やストーカーやDVなどの犯罪に利用されていました。

プライム事件の逮捕者は33名。全員有罪判決。探偵、司法書士行政書士等のほかに行政や警察、docomo、NTT、SoftBankの店員など。戸籍や住民票以外に、納税情報や所得情報、携帯番号、車両情報、信用情報(借金)など、あらゆる個人情報が、売買されていました。

 

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鳥取ループの「保全異議申立」は棄却!~出版・ネット掲載はダメ!~

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横浜地裁は3月16日、鳥取ループ・示現舎が「仮処分決定」の取消しを求めた「保全異議申立」を棄却しました!

裁判所があらためて『全国部落調査・復刻版』の「出版禁止」と「サイト掲載禁止」の判断を下しました。

 

【今回の判決のポイント】

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奈良・水平社博物館前での差別街宣~部落差別は、いま⑨~

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◆水平社博物館前での差別街宣の動画

 ネット上の差別情報を内面化し、自分たちの「正義」を叫び、路上でマイノリティに対するヘイトスピーチを行い、その動画をYouTubeにアップする。

ヘイトスピーチは、在日朝鮮人に対してだけでなく、被差別部落に対しても行われている。

2011年1月、奈良県御所市の水平社博物館前で「在日特権を許さない市民の会」(在特会)元副会長Kらが、同館で開催中の企画展「コリアと日本『韓国併合から100年』について抗議するヘイト街宣を行った。

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「部落差別解消法」が成立!その意義と課題  ~奥田均さん(近畿大学)の講演より~

先日、大阪で「部落差別解消法」公開研究会があり、参加した。
近畿大学の奥田均さんから「部落差別解消法」の意義と課題についての講演があった。
以下は、講演概要の一部。

 

1、「部落差別解消法」制定の背景

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結婚差別の現実 ~部落差別は、いま⑧~

内田龍史さんの講演録「データーで見る部落問題」を読んだ。
結婚差別の具体的な事例2件を読み、胸が締めつけられた。
一人は、私も知っている青年だった。

涙を流し、その事を語ってくれた、彼の顔を思い出した。

彼は結婚差別を受け、ボロボロになり、自死を考えていた。でも、その時に、解放運動に取り組む仲間が支えてくれた。

同和教育に取り組む先生たちや、多くの人との出会いの中で、部落と出会い直すなかで、今は、解放運動をがんばっている。

結婚差別を受けたとき。当事者自身が、部落問題について偏見情報を内面化していた場合、最悪のケースが起きる。そして、誰にも相談出来ない。Bさんも、親には結婚差別を受けているとは言えずに、一人で抱え込んでいた。

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マンション開発でも同和地区調査(土地差別調査)!~部落差別は、いま⑦~

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大阪府民からの通報で発覚 

 2007年1月、大阪府府民から「土地調査会社(リサーチ会社)」が部落差別につながるおそれのある調査や報告をおこなっている。行政から是正して欲しい」との通報があった。その後、調査が行われ事件の解明が行われた。

マンション開発業者(デベロッパー)は、マンションを販売するために、必ず広告代理店とつながっている。広告代理店はサービスの一環として、マンション建設候補地のエリア情報を専門の土地調査会社(リサーチ会社)に依頼し、報告書を作成してもらう。

その報告書をデベロッパーに提供し、マンション建設を検討してもらう。採用されたら、その代わりに当該マンションの広告を担当させてもらえるという仕組み。

 

差別調査の報告書

問題となったのは、調査報告書に記載されていた地域情報の内容だった。そこには、同和地区であることや在日外国人の集住地域であるなどを示す差別的情報も書かれていた。

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「部落民が差別と言えば、なんでも差別」と歪曲された「朝田理論」 ~部落問題の基礎知識④~

1、「部落民以外はすべて差別者」「解放同盟が差別と言えば、何でも差別」とデマを流し続けた日本共産党

部落民以外はすべて差別者」→「解放同盟が差別と言えば何でも差別」→「糾弾(暴力・リンチ)」→「同和利権」=「だから、部落差別がある」】

 そう叫んでいる人たちがいる。

「部落差別解消推進法」の法案審議では共産党だけが反対していた。そこでは「解放同盟は『部落民以外はすべて差別者』『部落排外主義』で反対勢力を組織から排除し『窓口一本化』で行政から『利権を独占』するため暴行・監禁など無法な「糾弾」闘争で、県市町村など自治体を好き勝手動かした。」と言う。

彼らの主張を鵜呑みにして、ネット上では「『解放同盟』=糾弾=暴力リンチ」「なんでも差別だ~!糾弾だ!」と言っている悪い奴らだと、必死で叫んでいる人たちがいた。ネット上の一方的な情報や共産党の主張だけを鵜呑みにして、その主張を正義感を持って語っている人たち。

「ウソも100回言えば、本当になる」とのヒットラー式の大量デマ宣伝、ネーム・コーリングを見事に体現しているなぁと思った。ネット社会の怖さ、情報発信の必要性を改めて感じた。

 そこでは、下記のようなことが主に語られている。

①「部落民以外はすべて差別者・・・」(共産党の言い方)

②「部落・部落民にとって不利益な問題は一切差別である」

⇒「解放同盟が差別だと言えば、なんでも差別。そして糾弾」(共産党の言い方)

 

2,「部落・部落民にとって不利益な問題は一切差別」(朝田理論)とは?

 ほんとに、当時の解放同盟は、そんな主張していたの?これは40年以上前の理論であり、当時の議論を確認するため『部落解放理論の根本問題-日本共産党の政策・理論批判』(大賀正行、解放出版社、1977年)を読んでみた。

すると、いかに共産党が自分たちの都合のいいように解釈し、40年以上も差別デマを流し続けてきたのか、あらためて実感した。

簡単に言うと、50年前、差別問題を単なる個人の差別意識・観念の問題(「心理的差別」)として捉えるのではなく、「実態的差別」の現実にも現れているということを、部落大衆に分かり易く言った理論。

50年前の当時、差別を個人の行為レベルとして捉らえていたものを、「差別と貧困の悪循環によって、部落の人たちの生活権、教育権等が侵害されている」と社会科学的に認識を転換し、解放運動を展開するようになったということ。

部落の人たちが差別と貧困の悪循環によって、劣悪な住環境や長欠・不就学、低学歴と不安定就労などに置かれている実態は、単なる個人の問題でなく、部落差別の結果なのだと。

そのように「差別のとらえ方」を発展させた解放理論だった。そうして、それらの劣悪な環境改善等の「生活要求闘争」に取り組む事で、差別によって奪われた権利を、自ら取り戻す自覚的な解放運動、大衆団体として展開しっていった。

この解放理論が、1965年「同和対策審議会」答申に、「心理的差別」と「実態的差別」という内容に反映され、これら差別の実態放置に対する行政責任が明記されていった。

これが50年前の「部落にとって、部落民にとって、不利益な問題は一切差別である」という朝田理論の命題の一つ。

この命題を、「解放同盟幹部の胸先三寸で、差別だと決まる」、というようなデマを大々的に流しつつづけたのが共産党であり、部落民や部落解放運動に対する差別と偏見を扇動し続けた罪は大きい。

 

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以下、上記の本より一部抜粋。

『部落解放理論の根本問題-日本共産党の政策・理論批判』
(大賀正行、解放出版社、1977年) 

【「部落にとって、部落民にとって不利益な問題は一切差別である」と規定した第12回全国大会(1957年)の命題について 

日共宮本一派は、これをなんでも気にいらないものをすべて差別だとするかってな理論だと中傷する。わが同盟の主張は、部落にとって、部落民にとって不利益な問題が、けっして偶然に起こっているのではなく、部落の具体的な歴史的、社会的関係から生まれた部落差別とかならず結びついていることを明らかにしたものである。

部落民に対する直接的な差別だけが差別ではない。部落民が生活のあらゆる面、就職、結婚、教育、居住等々でうけているすべての不利益が部落差別である。】(P25)

【この命題は、1951年のオールロマンス事件を契機として行政闘争を通じ、この行政闘争が第12回大会の命題として定式化されたものである。したがって、第12回大会の命題は、差別は、個々の差別事象だけでなく、部落大衆の日常生活の中に、日常生起する問題で不利益な問題の中にあることを教えた。

すなわち、部落大衆の仕事がない、生活が貧困である、教育水準が低い、文化水準が低い、生活環境が悪い等の部落民にとって不利益な様々の問題が、実は差別の結果であり、あらわれであり、しかも差別の原因になっていることを明らかにした。

したがって、この命題は、部落民にとって不利益な問題は差別の本質からきている。差別として捉えるということである。

同時に大衆の要求(家が欲しい、職が欲しい等々)を功利主義的に捉えるのではなく、大衆の要求=不利益な問題は、差別の具体的あらわれであり、これを明確に理論づけ、差別があるからこそ要求が出てくるんだということを大衆に自覚させ、しかも万人に納得いくように説明せよということを要求しているのである(p63)】

 

参考1「戦後の部落解放運動の再建と闘い」
1945.10. 1 全国水平社の幹部を中心に再建協議
1946. 2.19 部落解放全国委員会結成 翌日:部落解放人民大会開催
1951.10.19 オールロマンス差別事件 → 差別行政糾弾闘争
      『差別観念は部落民の差別された実態の反映』
1953. 5. 6 全国同和教育研究協議会結成 翌日:第1回全同教大会
1955. 8.27 部落解放全国委員会第10回大会 部落解放同盟に改称
1957.12. 5 部落解放同盟第12回大会 国策樹立運動の方針
部落民にとって部落にとって不利益な問題はいっさい差別である』


1971. 3. 1 部落解放同盟第26回大会『「三つの命題」にもとづく認識』
命題① 
部落差別の本質

部落民が市民的権利の中でも、就職の機会均等の権利を行政的に不完全にしか保障されていない、すなわち、部落民は、差別によって主要な生産関係から除外されているということである。これが差別のただ一つの本質である」


命題② 部落差別の社会的存在意義

部落民労働市場の底辺を支えさせ、一般勤労者の低賃金、低生活のしずめとしての役割を果たさせ、政治的には部落差別を温存助長することによって、部落民と一般勤労者とを対立させる分裂支配の役割をもたされている」


命題③ 社会意識としての部落民にたいする差別観念

「その差別の本質に照応して、日常生活化した伝統の力と教育とによって、自己が意識するとしないとにかかわらず、客観的には空気を吸うように一般大衆の意識のなかに入り込んでいる」

 

参考2「朝田理論について、ある先輩からのコメント」

社会科学の視点で部落差別をとらえた

第12回大会で出された「日常部落に生起する問題で、部落にとって部落民にとつて不利益な問題は一切差別である」というテーゼを、「解放同盟が差別と言えば何でも差別」と一方的に批判する日共の主張は、「社会科学が全く理解できていない」ということを自ら露呈しているだけのものです。

「日常起こる問題には、すべて社会的背景がある」ととらえることは、社会科学では当然のことです。

例えば、原発事故を「想定外」ととらえるが、そこには、「安全神話」をばらまきながら、コストを削減し利益を上げるために、一切の安全を検討してこなかった東電の責任、そしてそうした体質を生む利益中心の社会があると要因を深く追求していかなければ問題の本質はつかめないし、解決の方策も見出すことはできません。

当時、「部落民が競馬で負けてすっからかんになっても、それは差別なのか」と揶揄する言葉も赤旗に掲載されました。しかし、その人がなぜ競馬に手を出したのか、平日に仕事もしないで競馬に行っていたとしたら、そこに何があったのかと考えていくと、例えば、仕事につけない理由があった、競馬でしかお金を稼ぐことができない事情があったかもしれないと、背景が浮かび上がってきます。

私が、確認糾弾会に参加していた時に忘れられないやり取りがあります。当時の支部書記長が、「電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも差別かと批判されるが、まさしく差別だ」と言い切られたのです。参加していた私もあまりの言葉に、何を言い出されるのかと思いましたが、引き続いて、「部落に入ってくる道路の電信柱をよく見ろ。地区の直前までコンクリートの高い電信柱だが、地区に入った途端、木製の低いものになる。なぜなら、部落の家は平屋か中二階で、高い電信柱が必要ないからだ。それを見て、私たちは悔しい思いをしてきた。郵便ポストは、部落の中に一つしかない。しかも、回収に来られたら一通も入っていない。赤い郵便ポストがあってもそれを使うことができない我々にとっては、あの赤さも悔しい対象なのだ」と言葉を続けられたのです。

「ためにせんがため」の屁理屈ではなく、部落大衆にわかりやすく、社会科学的な見方・考え方を伝えようとした当時の部落解放運動のリーダーたちの思いを、受け止められなくて何が「民衆のために党」なのかと私は思い続けています。

 

「主要な生産関係から除外」

 確かに「主要な生産関係から除外」ということは、社会科学が明らかにしている「相対的過剰人口=失業者」として位置づけられてきたこと、つまり今でいう「非正規雇用」「日雇い」としてしか多くの部落大衆が働けなかったことを示しています。

そうした「非正規・低賃金労働」の状態が、「正規雇用者」の賃金や労働条件を低下させる「しずめ」の役割を担わされたこと。そして、「積極的な雇用」を企業に求めても、「実力」を盾になかなか門戸が開かれない中で、行政が公務員といっても主に「現業部門」に雇用したこと。

また当時やそれ以前は、塵芥処理やし尿処理といった現業部門の仕事は大変な重労働で労働条件が極めて過酷なものであったために、一般公募してもなかなか就労者がいないという現実がありました。

それが、「優先雇用」などと言う言葉で非難されだしたのは、労働条件が改善されてきたうえに、不況で企業就職が困難になり「公務員志向」が増加してきた中で、人々の「経過に対する無知」を利用して、「劣情」を煽り立ててきただけ。ですから、この国で真の「アファーマティブアクション」など行われなかったとも思っています。

住宅販売会社が同和地区調査を!~部落差別は、いま⑥~

 

 

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1,土地差別とは?

「部落差別は、利害が絡んだときに顕在化する」と言われる。
そのうちの一つが不動産売買における部落差別。いわゆる土地差別と言われている。

住宅購入に際して、同和地区を避ける市民が多くいる。各地の意識調査を見ても、約半数近くの市民が同和地区の物件を「避ける」と回答。

不動産業者への実態調査でも、約2~3割の不動産の担当者がお客さんから「同和地区の物件かどうか」の問合せを受けたことが「ある」と回答している。

同和地区に住めば、自分たちまで「同和地区の人間とみなされる」=「差別される立場になる」との意識、「同和地区はガラが悪い。子どもの教育環境が悪い」などの市民が持つ同和地区へのマイナスイメージや偏見の中で忌避されている。

 

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2,中古住宅販売会社による同和地区調査事件

中古住宅販売会社のK社は、全国46都道府県に107店舗を持つ、業界トップの中古住宅販売会社。競売にかかった中古物件など入札し、リフォームし販売。1000万円でマイホームが購入出来るとして、この10年で大きく成長した会社。

競売物件の入札に際しては、現地調査をおこない、中古物件の築年数やリフォームにかかる費用、立地や環境など、詳細な事前調査をおこない、入札価格を決定する。

営業担当者と支店長、エリア課長が決済した後に、本部の営業部長が最終入札価格を決定する。その際に、価格決定の重要な社内資料が「競売仕入チェック表」(「仕入表」)だ。

K社では、全国13府県(12支店)で、物件が同和地区かどうか調査し、同和地区の物件であった場合には「仕入表」に、「同和地区」「特殊部落」「同和ド真ん中」「不人気エリア」などと差別記載をおこない、上司や本部に入札を中止したり、仕入れ値を安くするように注意喚起していたことが発覚した。

同和地区の物件の場合は、競売物件を入札してリフォームして販売しても、一般地区よりも安くしなければ売れにくいからだ。

市民が同和地区を忌避する実態があり、その結果、販売価格が低下する。住宅販売会社は「損をしたくない」との思いから、市民の差別意識・忌避意識に同調し、同和地区調査を行っていた。

 

3,事件の発覚

2012年11月、中古住宅販売会社のK社和歌山店の社員が、ある物件について和歌山県庁(出先機関)に照会をおこなった。

その際、FAX送信した「仕入表」の特記事項覧に、その物件が「同和地区であり、需要はきわめて低くなると思われます」との記載があり事件が発覚した。

K社和歌山店は、同様に3件の物件に対しても同和地区の物件であることを明記する記述があった。

その後のK社(本社)は国交省の指導を受けて、同様の同和地区調査がないのか全国46都府県107店舗を社内調査した。その結果、全店舗の「仕入表」14,070枚(過去5年分)のうち、全国13府県(12支店)で26件の差別記載の存在が明らかとなった。

同社の仕入表には同和地区の物件については、仕入票に「同和地区」「特殊部落」「同和ド真ん中」「不人気エリア」など同和地区の物件であることが差別的に記載されていた。

記載した担当者は「同和地区の物件は売れにくい」ので、上司へ「入札を断念して欲しい」「仕入れ価格を抑えて欲しい」と「注意喚起」のために記載した証言している。上司は差別記載を同和地区と認識した上で「受け取り」「指摘せず」「値決め」し続けていていた。

その物件が同和地区か否かをどう判断したのかについては、近隣住民や地元の従業員、インターネット(隣保館等の施設)等で入手した情報で判断していたことが明らかになった。

K社は全国46都道府県に107店舗を持ち、業界トップの中古住宅販売会社。しかし、創業以来35年間、1度も人権研修をおこなっていなかった。そのため、差別調査や差別記載に対して社内の誰も指摘する人がいなかった。

今回の事件では、不動産売買で同和地区情報を営業活動に利用してきた宅建業者の差別体質が明らかとなった事件。

 

5,事件の差別性と問題点、背景と要因

①同和地区を差別的に評価し、差別的表現で記載している

・市民の同和地区への差別的価値観に、会社(担当者)も同調し、部落を差別的に評価。

・「特殊地区」「特殊地域」とは、「特殊な地域」という予断と偏見にまみれた部落への

差別表現である。かつての「特殊部落」「特種部落」の現代版ともいえる表現。

・「旧同和地区」「D地区のド真ん中 地域性注意」「不人気エリア」などと差別的に表記された当該住民(校区)からすれば、自分の大切な「ふるさと」を差別されたことに。

 

②近隣住民や同僚、インターネットなどで入手した同和地区情報をもとに土地差別調査

・物件調査に際して近隣住民や同僚、過去の販売経験、インターネットで「隣保館」等を検索し、同和地区情報を入手。

・その情報をもとに同和地区かを判断、値決めの判断材料に利用してきた。近隣の人から「教えられた」としても、仕入表へ差別記載したのは担当者の強い意志で行っている。

・同和地区でない物件も「同和地区」と誤認し、差別記載している。担当者の予断と偏見によって「隣保館」「刑務所」などが付近にあれば、同和地区と「見なして」差別をしていた。

 

③人権を無視した営利優先の企業活動を行ってきた会社の体質

・同和地区の物件は「売れにくい」ために、「長期在庫」になると自身の給与(評価)にも影響する。そのため、担当者は上司に「同和地区」であることを伝え、仕入価格・販売価格を「抑えてもらうように」に差別記載してきた。

・同和地区を忌避する市民の差別意識を前にして、無批判に営業活動を行えば、当然、自らも差別的行動をとることになる。その行動が社内で「あたりまえ」となっていた会社の差別体質が問われている。

 

④企業活動で明確な差別行為に自浄作用が働かなかった

・上司も差別記載を認識した上で、指摘することなく、「値決め」をし続けてきた。差別記載を指摘するといった人権感覚は、店長・課長・部長にも全くなかった。

・「創業以降35年間、一度も人権研修はおこなっていない」というように、人権問題への取り組みが欠落していたからこそ、誰も差別記載を指摘できなかった。

 

宅地建物取引業において土地差別調査が常態化している

・「会社は指示していない」と土地差別調査を個人の責任に矮小化している。現場では土地差別調査が常態化し、会社として指示する必要性がなかっただけ。「会社として指示する必要性」があったのは、従業員に対する人権研修であった。

宅地建物取引業に携わるものとして、同和問題について正しく理解していなければ、無自覚のうちに部落差別に加担していく。

 

⑥市民の同和地区(校区)への忌避意識と、「避けられる」実態的差別の現実が背景に

・今回の土地差別調査事件の背景には、市民の同和地区への根強い忌避意識と「避けられる」同和地区の実態がある。

・「調べる業者が悪いのか、調べて欲しい市民意識が悪いのか」、どちらも問題である。

・さらに、交通の利便性(道路が狭い、急傾斜地等)や教育環境、生活・福祉・就労などにおける社会的矛盾が集中的に表れている厳しい同和地区の実態がある。

宅地建物取引業に関する差別システムの改善策については、早急なる対応が求められているが、同和地区を忌避する市民の差別意識の払拭が、何より優先される課題である。部落問題に関する学校教育、市民啓発の充実が求められている。

・同時に、市民が忌避する「事実」として、高齢化、過疎化、生活保護や一人親世帯、就労面など、社会矛盾が集中的にあらわれている同和地区の実態的差別の現実に対して、

今後、宅建業界や企業、行政、NPOなどによる具体的取り組みが必要となってくる。

 

【参考:宅建業者への実態調査結果】

(物件が同和地区かの問い合わせ「あり」)

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⑦国及び自治体・業界団体による宅建業者への指導、人権問題に対する取り組みの欠落

・今回の事件は、中古住宅販売業界トップであり、全国展開している会社が起こした差別事件であり、宅建業者の差別体質と差別構造が浮き彫りとなった。

宅建業界において、このような土地差別調査が放置されてきたという業界の差別体質と、その差別体質にメスを入れてこなかった国及び自治体の取り組みの欠落が背景にある。

・今後、国及び業界団体による全国的なアンケート調査(実態把握)の実施、土地差別調査の根絶を目的とした「宅建業法」の抜本的改革、宅建業団体における人権ガイドラインの策定と同和問題解決に向けた主体的な取り組みが求められている。

 【土地差別調査が放置されていたという業界の差別体質】

・国の通達「宅建業法第47条」「同和地区を教えなくても抵触しない」を多くが知らない。

都道府県宅建協会で人権研修を実施しているのはごく一部。あっても参加していない

都道府県の法定講習(5年に1度の免許更新)で人権研修をやっているのも一部の府県。

都道府県や各市町村などで宅建業者を対象にした人権研修は、ほとんど行われていない。

 

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葬式の「弔電」「生花」の度に・・・~部落差別は、いま⑤~

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先日、解放運動の活動家の先輩がなくなった。その地域で、たった数世帯でも解放同盟員として、部落解放のために、最後までがんばってきた先輩だった。

ボクの住んでいるところは、解放運動が弱い地域だ。だから、葬儀の度に弔電と花束の名前に、解放同盟や人権関係団体の名前を入れるかどうか悩む。

親はバリバリの活動家でも残された遺族が喪主となり、葬儀がおこなわれる。子どもや家族、その友人や職場の上司なども参列している。それらの親族が、職場の上司や連れ合い、子どもなどに部落出身であることを言ってないケースもあるからだ。

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知ってる?「八鹿高校事件」の深層!(本編)~部落問題の基礎知識③~

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八鹿高校事件の友人の投稿で、紹介されていた本。著者の秋山良さんに、許可をもらったので、本文の八鹿高校差別事件のところを、一部抜粋して紹介させていいだきます。

詳細は、ぜひ本書を購入して読んでください。矢田教育差別事件の事も書かれています。

かなり長いですが、読み応えがあります。前回の投稿(部落問題の基礎知識②)を読んで、この記事を読めば、八鹿高校差別事件の「真実」が見えてくると思います。

 

※参考(一部抜粋)

『「同和利権の真相」の深層』(解放出版社、2004年)より、

「『真相』なるものが覆い隠した真実ー同和教育をめぐってー」

 

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