部落差別は、今 ~TUBAME-JIROのブログ~

当事者の声、マイノリティの視点、差別の現実を踏まえた情報発信をしています。

ネット公開される「部落」「部落民」~部落差別は、いま②~

 

f:id:TUBAME-JIRO:20161215231105j:plain

ット版「部落地名総鑑」の公開

 現在、ネット上では鳥取ループ・示現舎によって「部落地名総鑑」が公開され、「同和地区WIKI」のコピーサイト、類似サイトが無数に拡散され、電子図書化し販売されています。

1936年に政府の外郭団体である中央融和事業協会が作成した『全国部落調査』をもとに、全国5300の被差別部落の名称、戸数、職業等がネット上に公開。「同和地区特定ガイド」や便利ツールなども紹介しています。

◆部落出身者の名字リスト

 部落出身者の人名リスト(「同和地区と関連する人名一覧」「人物一覧」)もネット上に公開。そこには全国の市町村別に、その地域に多い部落出身者の名字を1万人以上が公開。さらに、解放同盟や同和会などの部落解放運動団体の役員等の名前・住所・電話番号等、1000人以上の個人情報が本人同意なく、公開されています。

◆同和地区マップ

 さらに、「同和地区マップ」としてGoogleマップストリートビューを利用し、全国の同和地区の地図が作成され、マッピングされています。「大阪の同和地区」などは地図上に地区指定の線引が記されています。

◆部落の写真や家・表札、墓、子どもの顔が映っている動画まで

 鳥取ループは、実際に全国の同和地区を回り、改良住宅や個人宅の表札・車のナンバー、商店などを写真や動画で撮影し、示現舎のサイトで「部落探訪」とシリーズ化し、公開し続けています。
また、子どもたちや青年の顔が映っている動画までもアップされ、地元の保護者たちが削除要請しても、拒否し、ネット上で公開し続けています。

 彼らは、「一度公開された情報は、二次利用しても問題ない」と法のグレーゾーンをねらい、NTTの電話帳の情報を二次利用し、身元調査が安易にできるアプリ(サイト)を作りました。

対象者がNTTと契約していれば、検索をかけると住所などの個人がわかります。その住所を「部落地名総鑑」と照合すると、部落出身者かどうか、分かる仕組みを作り上げています。

 f:id:TUBAME-JIRO:20161215231116j:plain

鳥取ループ・示現舎とは?

鳥取ループ」とはブログ名で、「示現舎」は出版社名です。宮部龍彦と三品純の2名が中心です。宮部は自身で、鳥取市内の同和地区の近隣の出身で育ったとのこと。三品純は法学部出身のライターで、主に解放同盟批判を展開した記事を書いています。

彼らの行動の根底には、部落解放同盟や同和行政に対する強い反発があります。
「行政・司法の取り扱いは平等でなく、むしろ同和に対してだけ異常な扱いをしている」(7/5 記者会見・配布資料)

「なぜ、同和地区の場所を晒すのか?・・・『同和はタブー』だと思い込んでいる人をおちょくるためです」(「鳥取ループ」HP)

と書いています。

また、「『全国部落調査』がインターネットで拡散され、回収不能になることは、被告宮部が望むところである。これが『ふと湧いてでた“いたずら心”』などと思うのは、あまりにも甘い考えである」(8月3日、東京地裁準備書面)として、確信犯として、同和地区の所在地情報を次々とネット上に公開してきました。 

 

③10年前から部落暴き、どんどんエスカレート!

鳥取ループは10年以上前から、同和地区の所在地情報を行政に開示請求を求、非開示となると裁判を起こし、同時にネット公開を繰り返してきました。

鳥取市内の同和地区情報の開示請求をおこない、行政がそれを拒むと訴訟を起こす。「鳥取県の同和地区」というサイトを立ち上げて、GoogleMapsに同和地区をマッピングしていきました。

2008年に滋賀県に対しても同和地区を特定しうる施設情報の開示請求を行い、滋賀県が「情報公開条例」にもとづき一部を非公開とする決定をすると、それを不服として大津地裁に提訴。

2015年の最高裁判決で「地区の居住者や出身者等に対する差別意識を増幅して種々の社会的な場面や事柄における差別行為を助長する恐れがあると」と、滋賀県が勝訴しています。

◆解放同盟員の名簿をネット公開、個人宅までマッピング

滋賀県との裁判中に、部落解放同盟滋賀県連が何者かによってハッキングされ、同盟員名簿が流出するという事件が起きました。

流出した同盟員名簿は、住所・氏名・電話・生年月日などの個人情報です。鳥取ループは流出したデータを入手し、800人以上の同盟員の個人情報をネットに公開しました。

さらに同盟員の自宅を一軒づつGoogleMapsにマッピングし、地図上でピンポイントでわかるようマップを作成・ネット公開。

宮部は「自分の犯行ではない」と警察に対しても主張。しかし、後日、ハッキングした本人と面会したことを明らかにしています。

鳥取⇒滋賀⇒大阪⇒全国の同和地区をネット公開

2010年には、大阪の同和地区一覧をネットに公開し、法務局から削除要請を受けたことに、不服として訴訟。その後も「滋賀の部落」をネット上に公開。

以降、順次、全国各地の部落や隣保館マップ等を公開していきます。同時に『同和と在日』という雑誌を発刊していきます。

2011年、示現舎という出版社を立ち上げ、『部落ってどこ? 部落民って誰』を出版。

2012年頃から、同和地区一覧に対する削除要請が多くなり、今度は国内法適応外の海外サーバーでサイトを開設します。

また「全国部落解放協議会」というエセ同和団体を立ち上げ、自分たちは、部落差別をなくす運動団体だと名乗り、「自覚のないものは部落地名総鑑を見て自覚し、立ち上がれ」と、全国の同和地区一覧リストをネット公開しました。

このように、全国の部落と部落出身者を暴き、ネット上に晒ものにしてきた。

 

ネットで拡散・助長されれる偏見と部落差別~部落差別は、いま①~

◆ネットで拡散・助長される偏見と部落差別
今回の部落差別解消推進法が制定された背景のひとつに、ネット上に部落差別の深刻化があります。

今、ネット上で「部落差別」や「同和問題」などのキーワードで検索すると、差別的情報が圧倒的です。行政や研究所などのサイトは、トップ画面に来ません。部落問題についての正しい認識がない人ほど、差別的情報でも検索上位にあるので「正しい」と判断し、偏見が爆発的に助長されている現実があります。

★ベストアンサー7割の差別的回答

(公財)反差別・人権研究所みえが、3年前に「ヤフー知恵袋」の質問サイトを分析しました。「同和」と検索すると1万件近くの質問があり、上位1000件を分析しました。

f:id:TUBAME-JIRO:20161214004427j:plain 

 

その結果、

3分の1が「部落差別って何?」などの
知識を問う質問313件(31%)、

3分の1が「部落の人は怖い」などの
偏見に基づく差別的な質問333件(33%)、

残り3分の1が、
身元調査70件、結婚差別57件、土地差別25件などでした。

なんと、これらの質問・相談に対する
ベストアンサーの約7割が、差別的回答でした。

また、「どこが部落か?」「結婚相手は部落出身か?」などの質問には、鳥取ループらの「部落地名総鑑」が紹介され、結婚相手の身元調査などに利用されています。

f:id:TUBAME-JIRO:20161214010949j:plain  

f:id:TUBAME-JIRO:20161214011035j:plain

 

f:id:TUBAME-JIRO:20161214011249j:plain

f:id:TUBAME-JIRO:20161214011255j:plain

 

学校での同和教育の後退などもあり、若い世代で部落問題について「無知」「無理解」な人たちが増え、ネット上の差別情報を鵜呑みにして、それらの情報を気軽に投稿・拡散し、偏見を助長している現実があります。

匿名性の中で、ネット上での差別と偏見の拡散・攻撃化がどんどんエスカレートし、差別と人権侵害のハードルを下げていきます。そして、ついには、ネット空間からリアル社会を侵食しはじめました。

 

奈良県・水平社博物館前でのヘイトスピーチ(2011年)
2011年、奈良県御所市の水平社博物館前での差別街宣では、在特会元副会長らが、白昼堂々と同和地区の中で「穢れた賤しい連中。出てこいエッタども!」などと、1時間にわたり、ヘイトスピーチを繰り返し、その動画をユーチューブで公開。

その動画はアクセスが集中し、すぐに検索上位に。

学校で子どもたちが「全国水平社」「水平社博物館」などをネット検索すると、これらの動画がトップにあり、動画を見てショックを受けているという、二次被害も学校現場から報告されています。

その後、水平社博物館が名誉棄損の裁判を起こし、慰謝料150万円の判決が下された。

 

*1

*1:判決では、「被告は、原告が開設する水平社博物館前の道路上において、ハンドマイクを使用して、「穢多」及び「非人」などの文言を含む演説をし、上記演説の状況を自己の動画サイトに投稿し、広く市民が視聴できる状態においている。

そして、上記文言が不当な差別用語であることは公知の事実であり、原告の設立目的及び活動状況、被告の言動の時期及び場所等に鑑みれば、被告の上記言動が原告に対する名誉毀損に当たると認めるのが相当である」とし、

原告に生じた損害の額としては、

「被告の不法行為となる言動はその内容が原告の設立目的及び活動状況等を否定するものであり、しかも、その時期、場所及び方法等が原告に対する名誉毀損の程度を著しくしていることなどの事情に鑑みれば、被告の不法行為によって原告に生じた有形、無形の損害は相当大きなものであるといわざるを得ない」とし慰謝料150万円とした。

「部落差別解消推進法」が成立!(12月9日)

12月9日、参議院本会議で「部落差別解消法」可決され、成立した。マイノリティにとっては、宣伝法であっても、法律があることが、どれだけ勇気づけられるか。

「差別はなんかない」と「ある」のに「ない」ことにされ、「差別されるのはお前たちのせいだ」と言われ正当化されきたから。

そんななかで、明確に「部落差別は存在する」とし、解消に向けて取り組むと国が示したことは、ほんと大きい意味がある。

 今回の法案は付帯決議も含めて、どちらにも使えるように、ある意味曖昧なところがたくさんある。だからこそ、これから、私たちが「この法律をどう具体化させるのか」を真剣に考えて、提案していかなければいけない。うかれている場合ではないといけない。

 今回の法律の意義として、

①「部落差別は存在する」と、国が明確に認めたこと。

差別が「ある」「ない」の議論に決着をつけた。今後は、共産党の「部落問題は解決した」という主張は明らかに法律に反する主張であることが明確になった。

だから、行政や学校では部落差別は「ある」という前提にたち、その解消に向けて取り組むことが責務とされた。

 

 ②「寝た子を起こすな」論を、明確に否定したこと。

「学校などで教えなければ、差別はなくなる」「ことさら部落問題を取り上げた授業や研修をするから差別が残る」といった「寝た子を起こすな」論は、誤りであると、それでは「部落差別はなくらない」と国会答弁で何度も明確に否定した。

ネット社会で無知が新たな差別を生む。だから、正しく部落問題について学ぶ必要があることを示した。

この二点が、大変重要な点。共産党の主張は、もう明確に否定されたということ。恒久法であるため、これらの考えは、今後、完全に間違いであることが確定した。

そして、今後の私たちの課題として、この法律を具体化するための議論と方針をまとめ、提言・実施させていく取り組みを行わなければならない。

1965年に同和対策審議会答申が出され、その具体化をもとめ福岡から東京までの全国大行進を実施し、各地での具体化を求める議論と提言によって、ようやく1969年に同和対策事業特別特措法ができた。

今回も同じように、このままでは絵に書いた餅。たくさんの限界と矛盾、付帯決議にあるようにある意味、解放運動や同和教育を封じ込める側面もあるのが事実。

だからこそ、この法律にうたわれている、

①「部落差別を解消するための教育・啓発」
②「相談窓口の設置・充実」
③「実態調査の実施」

これらを、具体的にどう進めていくのかが問われている。国もまだ、具体的な方針は描けていない。

 

****************************

  部落差別の解消の推進に関する法律(2016.12.9成立)

(目的)

第1条 この法律は、現在もなお部落差別が存在するとともに、情報化の進展に伴って部落差別に関する状況の変化が生じていることを踏まえ、全ての国民に基本的人権の享有を保障する日本国憲法の理念にのっとり、部落差別は許されないものであるとの認識の下にこれを解消することが重要な課題であることに鑑み、部落差別の解消に関し、基本理念を定め、並びに国及び地方公共団体の責務を明らかにするとともに、相談体制の充実等について定めることにより、部落差別の解消を推進し、もって部落差別のない社会を実現することを目的する。

 

(基本理念)

第2条 部落差別の解消に関する施策は、全ての国民が等しく基本的人権を享有するかけがえのない個人として尊重されるものであるとの理念にのっとり、部落差別を解消する必要性に対する国民一人一人の理解を深めるよう努めることにより、部落差別のない社会を実現することを旨として、行われなければならない。

 

(国及び地方公共団体の責務)

第3条 国は、前条の基本理念にのっとり、部落差別の解消に関する施策を講ずるとともに、地方公共団体が講ずる部落差別の解消に関する施策を推進するために必要な情報の提供、指導及び助言を行う責務を有する。

2 地方公共団体は、前条の基本理念にのっとり、部落差別の解消に関し、国との適切な役割分担を踏まえて、国及び他の地方公共団体との連携を図りつつ、その地域の実情に応じた施策を講ずるよう努めるものとする。

 

(相談体制の充実)

第4条 国は、部落差別に関する相談に的確に応ずるための体制の充実を図るものとする。

2 地方公共団体は、国との適切な役割分担を踏まえて、その地域の実情に応じ、部落差別に関する相談に的確に応ずるための体制の充実を図るよう努めるものとする。

 

(教育及び啓発)

第5条 国は、部落差別を解消するため、必要な教育及び啓発を行うものとする。

2 地方公共団体は、国との適切な役割分担を踏まえて、その地域の実情に応じ、部落差別を解消するため、必要な教育及び啓発を行うよう努めるものとする。

 

 

(部落差別の実態に係る調査)

第6条 国は、部落差別の解消に関する施策の実施に資するため、地方公共団体の協力を得て、部落差別の実態に係る調査を行うものとする。

 

 付 則

この法律は、公布の日から施行する。

 

 

headlines.yahoo.co.jp

 


 

つばめ次郎 ブログデビュー

f:id:TUBAME-JIRO:20161213234239j:plain

 

はじめまして、つばめ次郎です。
初投稿になります。

私は同和地区(被差別部落、以下「部落」)出身の30代です。

当事者の視点からみた、差別問題について、いろいろ発信していきたいと思っています。

ネット上では部落問題に対する偏見や差別的情報が多くて、悲しい。

このブログでは、マイノリティの視点から、部落問題や差別の現実の「今、ここ」を考えていきたいです。