部落差別は、今 ~TUBAME-JIROのブログ~

当事者の声、マイノリティの視点、差別の現実を踏まえた情報発信をしています。

ヘイト・フェイク対策、求められる人権教育の教材

ネット上の差別、人権侵害の現実に対する人権教育の教材化が各地で検討されています。一番大事なのは、個別人権学習だと思っています。それを前提とした上でどのような教材や人権学習が必要なのか、個人的には以下のような教材や授業案があればいいなと思っています。

1,違反通報のスキル、相談窓口の紹介

①通報スキルを身につける

SNS上で差別投稿や誹謗中傷などの投稿を発見したら、スルーしないで違反通報をする。そのスキル、通報の仕方などの具体的なスキル研修が必要。スルーすることで、ネット上の環境が悪化していくため、つねにクリーニングする必要がある。サイレントマジョリティではダメで、具体的にコメントに「悪いね」ボタンを押す、違反通報をするなどのワンアクションが大事。

LINEやTwitter、インスタなどのSNS上で、子どもたちは芸能人や知人などの攻撃的な投稿を目にします。自分の好きなタレントや友人・知人への暴力的投稿、誹謗中傷・差別投稿、悪口などが書かれたり場合は、ワンアクションすることの重要性を学ぶ学習教材が必要かと思います。

また自分が被害者になったときに、どうすればいいのか、相談窓口の紹介、悪質な場合は警察に相談できるなど、そんな被害者救済のスキルも学習する必要があると思います。

反差別のロールモデルの提示

「保守速報」のエプソンへの広告通報の取り組み。昨年の春~夏にかけて、「ネトウヨ春のBAN祭り」と称した、YouTube上のヘイト動画に対して、がんがん違反通報をして、多くのヘイト動画が削除されたり、アカウント停止に追い込みました。これはすごく大きな出来事でした。そのような取り組みの成果なども共有することも大事だと思います。

現実社会では、火事を目撃したら消防署へ通報します。殺人などの犯罪を目撃したら警察に通報します。大怪我をした人がいたら救急車を呼びます。同じように、ネット上での人権侵害を目撃したら、放置せず、通報する。それが「あたりまえ」になる価値観とスキル(通報先先等)を教えておくことが大事です。

2,ポジティブ情報の発信

①「安心・おすすめ」「ヘイトサイト」リストの作成

SNS等を通じて、どんどんポジティブ情報を発信していくことの重要性。例えば人権学習で子どもたちや学生・教職員が参考にできる「安心サイト」「おすすめサイト」などのリスト化。情報がありすぎて何が正しい情報なのか、専門知がないと「見抜け」ません。

私が医療に関する情報サイトをみても専門知がないために、なにがフェイク情報なのか見抜けません。その意味では人権課題毎に、信頼できる団体や機関などが「おすすめ」「ヘイトサイト」リストを作成して、参考にしてもらうということが求められていると思います。

②差別言説のパターンを事前に学習(ワクチン、抵抗力をつける)

 デマやフェイクニュースに対する抵抗力を付けるためには、実際にネット上ではどのようなデマや偏見の言説が飛び交っているのか、具体的に代表的なパターン化された言説を学習してくことが大事。

例えば、災害時になると「外国人の窃盗団が闊歩している」などのデマ言説。デマによる関東大震災での朝鮮人大虐殺、東日本大震災での外国人犯罪の増加(デマ)など。事前にそのような傾向があることを知っておけば、同じような事態に遭遇しても、「ん?ちょっと待て」と「保留」⇒「ファクトチェック」の態度を身につけることが大事。

特に、現代的レイシズムの言説がポイントかと。「部落差別はもうないのに、自分たちの利権さりのために、騒いでいるだけ」「学校で同和教育をやるから、部落差別が残る」(寝た子を起こすな論)「同和対策事業=同和利権」などの言説。

在日朝鮮人たちは特権を持った悪い奴ら。税金も払わず、生活保護を不正受給している」「日本の犯罪の多くが在日コリアン」などの言説。

 部落の歴史を学ぶことも大切だけど、実際にネット上で飛び交っているのは、上記のような「現代的レイシズム」の言説。実際にネット上のこれらの言説を授業で確認し、その間違いやファクトチェック(事実に基づく指摘)の学習などが効果的です。

③動画テキスト

動画を活用した情報発信も重要に。学校や行政では「人権ポスター」「人権作文」「人権フォトコンテスト」などをやってきましたが、ネット上では文字でなく動画が主流。「人権動画コンテスト」など、YouTubeなどを使って、作品募集やアップするなども必要ではないでしょうか?

また、これまでの読み物を中心とした副読本でなく、過去の教材などを動画風にして再作成してく取り組みも必要かと。被差別当事者などの生い立ちや体験談などたくさんの教材があります。それを読み聞かせ的な感じで、動画にアップしてくだけでもすごく影響があると思います。

その他、いろいろあるかと思いますが、上記の点については、先生でどんどん教材開発をして欲しいと思っています。

④匿名のヘイト投稿でも摘発される!

 昨年12月に大分市の60代男性が、川崎市在日コリアンの中学生へのヘイト投稿で、警察により摘発されました。今年1月、沖縄の男性がヘイト投稿をおこない、検察が犯人を特定し、略式起訴で罰金10万円を命じました。

ヘイトスピーチまとめサイト「保守速報」の管理人も200万円の損害賠償の判決が出ています。「ネット上の投稿をまとめただけ」という理屈は通用しなくなりました。

これまで民事で被害者が裁判を行ってきたのですが、刑事としてもヘイトスピーチが「名誉毀損」「侮辱罪」として摘発されるようになってきました。匿名性での書き込みであっても、突き止めることが出来る。その時は社会的な責任が問われること、これらの事実を踏まえた学習教材も子どもたちに大事かと。

ネット上にも「マナーとルールが必要!」という価値観を当然にしていくことが教材も求められていると思います。