部落差別は、今 ~TUBAME-JIROのブログ~

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知ってた?小中学校の教科書が無償(タダ)になった理由!

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今日は、全国の小中学校で入学式・始業式。
新学期になると、いつも教科書が無償(タダ)で配られる。

すべての小中学校の教科書の裏に、かかれている言葉がある。

「この教科書は、これからの日本を担う皆さんへの期待をこめ、税金によって無償で支給されています。大切に使いましょう」

これ、知っていましたか?

高校生になると、教科書は自分で購入しなければいけない。

教材等も入れると2~3万円くらいする。

なぜ、小中学校の教科書がタダ(無償)なのか、多くの人が知らない。

 
実は、明治の「学制」がはじまり、敗戦後15年近く経つまで、教科書は無償ではなかった。それを無償化させたのは、差別と貧困で苦しめれてきた被差別部落の人たちの闘いがあったからだ。

この事実は、部落解放運動の教育闘争の中で、最も大きな成果の一つとも言える。

ぜひ、多くの人に、この事を知ってもらいたい。
同和教育、人権教育を熱心にやっている学校では、担任が毎年、この意味を児童・生徒の発達段階にあわせて、子どもたちの教育権の保障として無償配布されている意味を伝えて、手渡ししている学校がある。

以下は、『部落問題・人権事典』の「教科書無償」の項目からの抜粋。

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教科書・教育費無償を求める闘いは戦前からあり、戦後も各地でも多様に進められたが、その決定的な闘いは、1961(昭和36)年から始まる高知・長浜の教科書無償闘争である。

高知市長浜・H地区は土佐湾にのぞむ半農半漁の部落である。

仕事らしい仕事に恵まれず、母親たちの多くは*失業対策事業に出て働いていた。

当時の〈失対〉は1日働いて約300円。教科書代は小学校で当時約700円、中学校になると約1200円。

〈失対〉で働く親たちにとっては、かなりの負担であった。

そのころ母親たちは、学校の教師と学習会をもっていた。

憲法を学習している際に、憲法26条2項に〈すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う。義務教育は、これを無償とする〉とあることを学び、権利意識にめざめていく。

こうした母親たちの要求を軸に部落解放同盟長浜支部は地域の民主団体や部落外の人々にも働きかけて〈長浜地区小中学校教科書をタダにする会〉を結成、地元の熱心な小・中教師たちの協力を得て集会を開き、署名活動に取り組み、多くの団体にも働きかけた。

部落解放同盟を核として社共両党・教職員組合・全日自労・民主教育を守る会などが支持を決定。

小・中学校2000人の児童・生徒のうち1600人の家庭が署名した。

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このような動きを受けて高知市議会も、小・中学校の教科書を無償にするよう内閣総理大臣や文部大臣あてに〈意見書〉を提出している。

〈タダにする会〉から要求を突きつけられた高知市教育委員会は、憲法に定められた無償の原則は認めるが、一自治体の力にはあまるとして、これを拒否。

しかし、交渉につぐ交渉で詰められて、新学期までには教科書を無償で渡すと約束するが、新学期に入る直前に、約束をホゴにし総辞職、かわって市長が事態の解決にあたり、約束、またホゴという状態が続いたとき、すでに新学期から1ヵ月が経過していた。

〈タダにする会〉に反対する勢力も組織を作り、部落差別をあおって攻撃をかけてくるなかで、子どもたちも教師も、教科書なしでともに闘っていたが、脱落して教科書を買う家庭も増え、プリントでは授業が続けられなくなる。

収拾にのりだした市議会革新議員団の斡旋案によって、高知市全体で3倍、長浜は5倍(200人分)の大幅な無償枠の拡大をかちとり、涙をのんで闘いを打ち切る。そして部落の親たちは翌年もまた闘いにたちあがる。

この闘いには、部落大衆をはじめ、貧しい民衆の熱い要求がこもっていた。憲法の精神にも合致している。国会でもさすがに大きな問題であるとして取り上げられ、文部省1963(昭和38)年12月〈義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律〉を成立させた。

部落解放運動や教組の長い闘いが基礎となって、ついに、教科書無償が全国的に実現したのである。
1964年(昭和39)は小学校1~3年、
1965年(昭和40)は1~5年、
1966年(昭和41)には1~6年、

さらに67~69年にかけて中学校1~3年の各学年へと順次枠を広げ、小・中学校全体が無償となった。          

(中村拡三)

 

 

 

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出典:部落解放・人権研究所編『部落問題・人権事典』(解放出版社、2011年)P236

関連項目:義務教育無償闘争

参考文献:全国解放教育研究会編『部落解放教育資料集成』10巻(明治図書、1980)/『教科書無償』(同編集委員会編、解放出版社、1996年)