部落差別は、今 ~TUBAME-JIROのブログ~

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身元調査(戸籍等の不正取得)と登録型「本人通知」制度

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行政書士司法書士などによる戸籍不正取得事件

弁護士や司法書士行政書士などの8士業の人は、「職務上請求書」を使用するれば、他人の戸籍や住民票を自由に取ることが出来ます。

この間、探偵社や調査会社などが行政書士などに依頼し、他人の戸籍等の個人情報を不正取得する事件が全国で発覚しました。

 

 2011年に発覚した一連のプライム事件。

東京の司法書士行政書士、横浜・群馬の探偵社などにより、全国の市町村から3万件以上の戸籍・住民票が不正取得されていました。

不正取得された個人情報が、結婚の身元調査やストーカーやDVなどの犯罪に利用されていました。

プライム事件の逮捕者は33名。全員有罪判決。探偵、司法書士行政書士等のほかに行政や警察、docomo、NTT、SoftBankの店員など。戸籍や住民票以外に、納税情報や所得情報、携帯番号、車両情報、信用情報(借金)など、あらゆる個人情報が、売買されていました。

 

 情報屋の存在

2012年9月、名古屋の「情報屋』が逮捕されました。
プライム事件で発覚した、個人情報大量不正取得事件の中心人物です。

全国の探偵者や調査会社からの依頼を受けて、戸籍や携帯、借金情報など、あらゆる個人情報の売買を仲介していました。

クライアントは1500以上。個人情報の転売で5年間で12億円を儲けていました。しかし、名古屋地裁の判決では、罰金200万円でした。

 全部で4万件の個人情報が売買されていました。なかでも、情報屋への注文は、戸籍情報が一番多かったです。

理由①自分たちでは取りにくい情報だから。

理由②調査対象者の正確な個人情報の基本は、戸籍・住基情報だから。

そこから、職業や所得、家族構成などを調べていく。

 

個人情報保護と「闇の個人情報ビジネス」

個人情報保護法の施行、戸籍法の改正(閲覧制限)などにより、個人情報が「金」になる時代。闇の個人情報不正ビジネスが闊歩しています。ベネッセの顧客情報漏洩事件も、内部協力者のスタッフが名簿屋に情報売買していました。

ハッカーなどの外部からの攻撃対策を取ることも大事です。でも、確信犯で内部協力者がいれば、なかなか、情報漏洩は、防ぎようがないのが現状。

プライム事件で逮捕された、企業や携帯ショップ店員など全員が、アルバイトや契約社員などの人たちでした。お金欲しさ、危なくなればバイトを辞め、情報を売買していました。

 

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戸籍は結婚相手の身元調査に利用

不正取得された3万件以上の戸籍・住民票の9割は、結婚相手の身元調査などに使用されていました。

その身元調査は、同和地区出身者かどうかを調べる調査だったことも裁判の証言で明らかになりました。

群馬の探偵社代表は、「同和地区出身か調べて欲しいという依頼する市民をなんとかしてくれ。自分たちは依頼されてやっているだけ」と、裁判で開き直っていました。

 現状、戸籍や住民票という個人情報の不正取得は防ぐことが出来ません。他人が市役所に行き、委任状を勝手に書いて請求したら、窓口は発行します。

その場で、本人に「委任状を書きましたか?」と電話して確認はしません。この手法で、堂々と窓口で不正取得をおこなっている探偵や犯罪も発覚しています。

 

【京都:身元調査と戸籍不正取得①】

2004年京都の結婚差別事件で、不正取得された戸籍により身元調査が行われて、女性の父親が同和地区出身であることを理由に反対されました。交際相手の親が、司法書士に依頼して、戸籍を不正取得し、身元調査をおこなっていました。

事件発覚後も、両親は部落出身ということを理由に、結婚を反対し、二人は「駆け落ち」をしました。

 

【兵庫:身元調査と戸籍不正取得②】

2005年 神戸市・宝塚市行政書士が、探偵からの依頼で戸籍等を不正取得。全国の自治体から900件近くの不正取得をおこなっていました。不正取得された戸籍や住民票は、同和地区出身者などの結婚調査や採用調査に利用されていました。

この事件では、大阪・兵庫の探偵社8社も摘発。探偵社らは、電子版の部落地名総鑑を所持していました。戸籍や住民票の住所だけでは、同和地区かどうかわからない。だから、手元の部落地名総鑑と照合し、調査対象者が同和地区出身者かどうか判断し、報告していました。

 

【三重:身元調査と戸籍不正取得③】

2007年三重県伊勢市行政書士の不正取得事件。 全国の自治体から500件以上の戸籍等不正取得していました。依頼者は横浜の探偵社(数年後、プライム事件でも再摘発)からの依頼で、1件3千円で、他人の戸籍等を不正取得していました。500件のうち、半数が結婚調査でした。

 

【名古屋の探偵:委任状偽造①】

2006年の名古屋の探偵社が、委任状を偽造して、調査対象者の戸籍や住民票を不正取得。家宅捜査に入ってビックリ!印鑑1500本を所持し、数千件の余罪が発覚。当時は、窓口で本人確認はなかったので、堂々と偽名を使って、調査対象者の戸籍を不正取得していた。

 

【大阪・兵庫の探偵:委任状偽造②】

2007年大阪・兵庫の探偵社ら3名が逮捕。有印私文書偽造・同行使の有罪。委任状を偽造して各地の市役所から戸籍等を不正取得。100件以上の不正取得をおこなっていた。

【大阪・民間人:委任状偽造③】

大阪府狭山市役所へ、警備保障会社を名乗る人物が委任状を偽造し、戸籍を不正取得しよとした。偶然、不正が発覚し、事件は未遂に終わったが、犯人は市役所から逃亡。犯人は近隣の市役所でも同様の手口で複数回、他人の戸籍等を不正取得していた。

 

【香川・探偵:委任状偽造④】

2016年香川県高松市 大阪の探偵社が委任状を偽造して不正取得。高松市役所から女性の住民票などを取得し、2名が逮捕。女性は二人と面識がなく、尾行に気づいた女性が住民票のある自治体に照会したところ、委任状が提出されていたことで発覚。

 

【登録型「本人通知」制度】

このように、あいつぐ、戸籍や住民票の不正取得を防止するために、部落解放運動の中で取り組んで作ってきた制度が、登録型本人通知制度です。

全国で600以上の市町村が導入しています。同和地区出身者だけでなく、ストーカーやDV、特殊詐欺などの犯罪や人権侵害を防止するために有効です。

自分の戸籍や住民票が、本人以外の第3者が取得した場合、市役所が本人に通知【郵送)する制度です。

本人に見に覚えのない請求であれば、一発で不正が発覚します。埼玉県では、実際に本人通知で不正が発覚し、犯人が逮捕された事例も報告されています。

 PCにセキュリティソフトを入れるのと同じです。 いざ、不正取得されたら早期に発見できます。地元の市役所の戸籍・住民票の窓口で登録できます。 導入されている市町村に住まれている方は、ぜひ登録をしましょう。

 

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