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部落差別は、今 ~TUBAME-JIROのブログ~

当事者の声、マイノリティの視点、差別の現実を踏まえた情報発信をしています。

結婚差別の現実 ~部落差別は、いま⑧~

内田龍史さんの講演録「データーで見る部落問題」を読んだ。
結婚差別の具体的な事例2件を読み、胸が締めつけられた。
一人は、私も知っている青年だった。

涙を流し、その事を語ってくれた、彼の顔を思い出した。

彼は結婚差別を受け、ボロボロになり、自死を考えていた。でも、その時に、解放運動に取り組む仲間が支えてくれた。

同和教育に取り組む先生たちや、多くの人との出会いの中で、部落と出会い直すなかで、今は、解放運動をがんばっている。

結婚差別を受けたとき。当事者自身が、部落問題について偏見情報を内面化していた場合、最悪のケースが起きる。そして、誰にも相談出来ない。Bさんも、親には結婚差別を受けているとは言えずに、一人で抱え込んでいた。

 部落差別解消法では「相談体制の充実」(第4条)が求められている。

でも、それは、知らない誰かの「相談窓口」に行くのではなく、「あの人なら、部落差別の相談をしても聞いてくれる」という具体的な「顔」が思い浮かぶ相手だから、相談にいく。

その前提として、日々の部落問題解決に向けた実践の中での「つながり」のある日常活動こそが、大切になってくると思う。

差別を受けた被害者が、その時、どこに相談に行くのか。

「相談窓口」にすら来ることが出来きない人を、どうキャッチするのか。考えさせられる。

 

以下は、内田さんの講演録から、結婚差別についての部分の概要。


【事例1】Aさん・30代女性

20歳の時に、2年間付き合った彼と結婚することになった。しかし、相手の母親がAさんの身元調査を行った結果、部落に住んでいることが分かった。

彼は、母親から「まわりの目もあるし、親戚が何と言うのか分からないから結婚はやめてほしい」と反対されていた。彼から、そのことを電話で聞いた瞬間、Aさんは頭が真っ白になり、涙が止まらなくなり、電話を切った。

今後、別の人と付き合っても、また同じことになると考えると、
「ああ、もう生きててもしゃあないわ」と思い、気づいたら手首を切っていた。

一緒に住んでいた親がAさんの異変に気づき、すぐに病院に連れて行ってくれたために、大事には至らかなかった。

【事例2】Bさん・40代男性

 

24歳の時に、1年間付き合った彼女と結婚しようという話になった。しかし、Bさんが住んでいる地域が部落だと分かり、彼女の両親から反対された。説得しようにも、彼女の父親はBさんに絶対に会ってくれなかった。

彼女は親を説得しようとしたが、「親子の縁を切るという条件でよければ勝手にしろ」と言われる。最終的に彼女は、親との縁を切りたくない、結婚するなら祝福してもらいたいので「別れて欲しい」と言われた。

Bさんは目の前が真っ白になり、しばらくは、木を見て「首を吊ったら終わりだよね」とか、「海に車ごと飛び込んだら、楽なのかなぁ」と、そんなことばかりを考えていた。

 

通婚の増加

この100年間で、部落と部落外との結婚は増えている。その背景には、結婚が「見合」から「恋愛」に変わったから。同時に、家意識の意味が低下し、それにつれて差別意識も減少してきから。

1930年代の結婚は「見合結婚」が83.7%、「恋愛結婚」16.3%。その後、高度経済成長期に、見合結婚と恋愛結婚の割合が入れ替わる。

1993年の総務庁の調査では、当時の80歳以上の人たちでは、部落出身者同士の結婚が85%ぐらい。年齢が若くなるほど減っていく。

 

結婚差体験の増加

部落と部落外との結婚が増加するにつれて、結婚差別体験も増加していることが各地の調査結果からも明らかになっている。結婚差別の事例として非常に多いケースは、親が反対するというパターン。

各地の意識調査や実態調査の結果を見ても、部落出身者の3割が結婚差別を受けている。

しかし、マジョリティの人には、見えにくい。

マジョリティの人が部落の人と結婚する確率は1%程度。そこで反対にあった人がいても、そのことを公にする人はほとんどいない。だから、実感として理解しずらい。

逆に、当事者の3割は結婚差別を経験している。しかし、マジョリティの人は1%以下。このギャップが「部落差別は、もうない」と平然と言われる、認識のズレ。マイノリティ問題のむつかしさ。

「差別は見ようとしなければ、見えない」

 

結婚差別の論理

結婚差別の原因としては、家意識、偏見やレイシズム、幸せな結婚のイメージ、利害関係の考慮が挙げられる。マジョリティは「普通に幸せだなあ」と思うようなこと以外は、だいたいリスクとしてみなして遠ざけようとする。

ほとんど部落問題を知らない、宮城や東京の大学生にアンケートをとっても、「部落の人との結婚に際して親から今後リスクだと言われて、反対されたらどうするか」との質問に、約70%しか「結婚する」とは、答えなかった。

これが100%にならない社会は、部落差別をを温存してしまう社会だと言える。

 

忌避的態度

結婚差別は、親が介入してくるケースが非常に多い。
しかし、近年の傾向では、家族の反対があれば、結婚しない割合が高くなっている。

(例)東京の調査結果

Q「(自分の結婚で家族が反対した場合)絶対結婚しない」

 1999年3,9% →  2014年は10%以上

 

強固に結婚を反対する人たち、あるいは家族や親戚の反対で結婚しない人が増えてくればくるほど、部落出身者にとっては、リスクが高くなる。

結婚差別に関しては、解消傾向にはなっていないということは確かだ。

 

※参照

「部落解放・人権入門2017」(雑誌『部落解放』増刊号、736号)より