大阪府民からの通報で発覚
2007年1月、大阪府に府民から「土地調査会社(リサーチ会社)」が部落差別につながるおそれのある調査や報告をおこなっている。行政から是正して欲しい」との通報があった。その後、調査が行われ事件の解明が行われた。
マンション開発業者(デベロッパー)は、マンションを販売するために、必ず広告代理店とつながっている。広告代理店はサービスの一環として、マンション建設候補地のエリア情報を専門の土地調査会社(リサーチ会社)に依頼し、報告書を作成してもらう。
その報告書をデベロッパーに提供し、マンション建設を検討してもらう。採用されたら、その代わりに当該マンションの広告を担当させてもらえるという仕組み。
差別調査の報告書
問題となったのは、調査報告書に記載されていた地域情報の内容だった。そこには、同和地区であることや在日外国人の集住地域であるなどを示す差別的情報も書かれていた。
「地域下位地域」「指定地域」「同和問題にかかわってくる地域」「不人気地域」「地元で有名な問題あるエリアとして敬遠されている」など、露骨な表現が並んでいた。また地図上に印しを記されているものもあった。
デベロッパーは、この報告書をもとに建設候補地を判断にしていた。今回の事件ではデベロッパー13社、広告代理店14社、土地調査会社5社が同様の土地差別調査を行っていたことが発覚した。
部落解放同盟との確認会・糾弾会では、同種の調査が数十年前から行われており、京阪神を中心に数百カ所の地域で土地差別調査が行われていたことが明らかなとなった。
隠語を使用
今回の事件では、土地調査会社⇒広告代理店⇒デベロッパーと、報告書が多くの人に見られるため「地域下位地域」等の隠語が使われていた。
当初は「同和地区」とストレートに記載されていたが、社内でも表記についての指摘があり、隠語が使われていたことも明らかにとなった。つまり、「悪いこと」とわかった上での確信犯。
業界に蔓延していた土地差別調査
今回の事件は、利益追求のために購入予定者の差別的要望に業界が無批判に同調し、土地差別調査を行い、報告書作成という構造となっていた。
土地調査会社、広告代理店、デベロッパー、そして同和地区を忌避する市民という構造のなかで、引き起こされた差別事件だ。
業界団体における土地差別調査(部落差別調査)の現実と、その背景にある市民の根強い忌避意識が明らかとなった。また、同和地区だけでなく校区差別、外国籍住民、障害者への差別も浮き彫りとなった。
全国初、条例で「土地差別調査」を規制
業界団体自らも部落差別を拡大再生産してきた責任をふまえて「大阪不動産マーケティング協議会」を設立。条例で規制されたよりも厳しく自らの業務をチェックする体制づくりなどに取り組んでいる。
こうした事態を受け、2011年10月に大阪府では「大阪府部落差別等規制条例」(興信所・探偵社を対象として部落差別につながる調査を規制してきた条例)を改正した。全国で初めて土地に関する調査を行うすべての事業者を対象として「土地差別調査」を規制する条例が施行された。