部落差別は、今 ~TUBAME-JIROのブログ~

当事者の声、マイノリティの視点、差別の現実を踏まえた情報発信をしています。

ネットはヘイトにどう向き合うべきか~解消法施行から2年

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5月30日の院内集会「解消法施行から2年 ネットはヘイトとどう向き合うべきか」では、多くの学びと政策課題への新たな視点を持つことが出来ました。

なかでも、政府・自治体によるモニタリングに関しては、ヘイトスピーチと部落差別に対するこれまでの取り組みの違いなどを考えさせられました。

部落差別は、戦後50年におよぶ同和行政の取り組みにより、結婚差別や就職差別、身元調査、土地差別、賤称語(差別落書き、差別発言)など、どういう行為が部落差別であるのか、判断基準の認識が行政にもある程度あります。

現実社会では部落地名総鑑や差別身元調査はアウト!、「エタ」「ヨツ」などは部落差別に該当する差別語であり、差別落書として削除されます。差別身元調査も職業安定法や探偵業法、県条例などで規制されています。現実社会でダメなものは、ネット上でもダメというように判断しやすい。

一方、ヘイトスピーチについての政府によるモニタリングは、国家による「検閲」のリスクを問題視する指摘もあります。何をヘイトスピーチとするのかなど、まだ、行政の取り組みや認識も十分でないために、政府がモニタリングを実施することに対して、報告者の津田大介さんは慎重な見解でした。

政府の「検閲」リスクを回避するなら、ドイツの第3者機関(反差別団体や当事者団体も構成メンバー)のように、プロバイダーが差別投稿かの判断に迷った場合に、その機関に認定しもらうようなスタイルなら可能です。

すでに、マスメディアではBPO放送倫理・番組向上機構)があり、放送業界団体として、人権侵害への対応や見解、ガイドラインを示しています。その機関を政府が支援するという形です。

これを、国内のネットメディアやプラットホーム事業者の業界団体で、BPOのような機関や部会?などを設置することも一つの方法かと思いました。

プロバイダー等が削除を実施するにあたり、自分たちで判断できない場合は、第3者機関に相談し、判断をあおぐという形。そこが削除基準を作る。その第3者機関には、部落差別、在日外国人差別、障害者、LGBT、女性、アイヌ、沖縄など、ケースによって、当事者団体の意見を聴取し判断する仕組みなどが出来ないかとも思いました。

ネット差別の現実は、ある程度、わかってきました。これから、ネット対策をどうしていくいのか、しっかりと勉強していきたいです。

当日の様子は下記の報道を参照ください。

朝鮮新報 http://chosonsinbo.com/jp/2018/06/hj180601/
朝日新聞  https://www.asahi.com/sp/articles/CMTW1805311300001.html
神奈川新聞 www.kanaloco.jp

TBSラジオ 荻上チキ・Session-22 

twitter.com

Buzzfeed https://www.buzzfeed.com/jp/kotahatachi/no-hate
NHK https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180530/k10011458871000.html
共同通信 https://this.kiji.is/374495916864488545?c=39546741839462401
東京新聞 http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201805/CK2018053102000143.html

ネット上の人権侵害は過去最高2217件(法務省2017年度)

法務省が2017年度の「人権侵犯事件」を発表しました。

昨年度の人権侵犯の処理件数は19,722件。

「差別待遇事案」は785件で、同和問題86件ありました。


ネット上の人権侵害は、2,217件対前年比16.1%増加)で5年連続で最高記録を更新しています。

法務省が「救済措置」を講じた具体例(事例9)に、「インターネット上における識別情報の摘時」として、掲示版での同和地区の所在地情報に対し、法務省が削除要請を行い、削除された事例が報告されています。

*1

 

ネット上において部落差別を助長する地名の書込等はアウト!
ということが改めて示された結果となっています。今後も自治体や個人等でモニタリングおこない、削除要請に取り組んでいく必要があります。

 

法務省がもっと積極的に削除要請を!

ネット上の人権侵犯は2217件(5年連続 過去最高 前年比16%増加)。

しかし、法務省が実際に削除したのは約3割(削除要請率25% 処理理件数568件/2217件)。

法務省は基本的に、ネット被害者が相談に来ても、
①本人がプロバイダーへ削除依頼するのが前提条件。その方法等を「援助」するだけ。
②本人が削除要請をしてもダメな場合などに法務局が削除「要請」(約2~3割)する。

プロバイダーが海外の場合は、自分で英語やフランス語などで削除依頼をしなければいけない。それも含めて、個人で対応することはほんとに大変です。

 ★氷山の一角
各地の人権意識調査の結果を見ても、人権侵害を受けた被害者の9割以上は、法務局に相談に行っていません

  そういう意味では、ここで把握されている数は氷山の一角。

多くの被害者が泣き寝入りしている現実を、しっかりと受け止める必要があると思います。

「差別がない」のでなはない。マイノリティがいないのではない。声を上げれない、相談できる場所や人がいないだけ。

その一歩として、人権に関わる人には、まずは、法務省の人権侵犯事件の報告書を読んでもらいたいです。

http://www.moj.go.jp/JINKEN/jinken03_00214.html

*1:「インターネット上の掲示版に、実在する特定地域を同和地区であると適示するとともに、当該地区の住民への差別を助長させるような内容が書き込まれている旨、法務局に情報提供がされた事案である。法務局で調査した結果、当該書込は、特定地域の地域住民に対して、不当な差別的な取り扱いをすることを助長又は誘発するおそれがあり、人権擁護上問題があると認められたため、法務局からサイト管理者に対して削除要請を行ったところ、当該書込は削除されるに至った。」(措置:「要請」)

大阪高裁で「ネットの電話帳」裁判、鳥取ループは敗訴!

阪高裁が「違法」と判決!鳥取ループ・Mは敗訴!

2017年11月16日、「ネットの電話帳」に、名前・住所・電話番号などが掲載されていることに対して、京都市内に在住する原告がプライバシー侵害を訴えた裁判で、大阪高裁は原告の訴えを認め、サイト運営者の鳥取ループのMに対して原告の個人情報の削除と5万5千円の損害賠償を命じました。

また、裁判中「特設サイト」に原告の氏名や住所・電話番号・郵便番号が掲載された裁判資料のネット公開についても、削除命令と5万5千円の損害賠償を命じました。

 「ネットの電話帳」(旧「住所でポン」)って?

 

「ネットの電話帳」は、鳥取ループことMが、NTTの電話帳(ハローページ)に掲載されている個人情報(名前・住所・電話番号)を「すでに公開されている情報」だからと二次利用し、ネット上で公開し、全国の電話帳の情報を一つにまとめ、住所順に加工し、ネット公開しているサイト(アプリ)です。

このサイトが利用され「解放同盟員人物一覧」が作成されているといわれており、現在でもコピーサイトにおいて運動団体の役員や同盟員などの自宅住所や電話番号などが次々とネット公開されている元になっています。その意味では「全国部落調査」復刻版裁判にとっても重要な判決だと思います。

 訴訟資料の公開(原告の名前・住所・電話番号をネットに晒す)

 

 また裁判中、被告のMは、特設サイトを作り、原告の氏名・自宅住所・電話番号・郵便番号等が掲載された訴訟資料をネット公開してきました。そのため、裁判での原告の陳述書の提出も公開される恐れが強く、断念せざるえない状況なども起きていました。

一審の京都地裁の判決では、訴訟資料のネット掲載は住所・電話番号は不許可として原告の氏名のみは掲載を認めました。しかし、2審の大阪高裁では、原告の氏名も掲載を不許可としました。

これは「復刻版」裁判でも同様の行為をおこなっており、出版禁止・サイト掲載禁止の仮処分を求めた原告らの住所や本籍地等を、示現社のブログで公開してきた行為と同じです。

訴訟資料に掲載されている個人情報(名前や住所等)を「本人同意」なくネット掲載することはダメであるという高裁判決が出た意義は、「復刻版」裁判にとっても大きな意味を持ちます。

★判決のポイント(争点と判決)

1,個人情報(氏名・住所・電話番号)はプライバシー権に該当する!

「氏名,住所及び電話番号などの個人を識別するための情報は,本来一定範囲の他者に開示することが予定された単純な情報であっても,本人が,自己が欲しない他者にみだりにこれを開示されたくない情報であると認められる以上,プライバシーに係る情報として法的保護の対象となるというべきである」(最高裁判所平成15年9月12日第二小法廷判決・民集57巻8号973頁参照)。

 

 ①紙媒体とネット公開は違う!

すでに電話帳に掲載されている(公開)されている個人情報(氏名・住所・電話番号)だからという理由で、ネット上に掲載することは許されない。

判決では「不特定多数の者からのアクセスが容易になり、生活の平穏について不安を抱く者がいることは否定できない。」「本人が、自己が欲しない他者にみだりにこれを公開されたくない情報であると認められる」として、プライバシーの侵害に該当すると判断しました。この判例をもとにすれば、「解放同盟員人物一覧」でも同様の事が言えます。

 

②掲載承諾は必要!

被告Mは、すでにハローページに掲載されている情報であり、公開された情報を自分が掲載しているだけで問題ないと主張しています。

しかし、判決では「特定の相手方や開示方法を指定した情報開示の同意が、他の者や他の開示方法に対する同意ないし承諾と同視できるとは考えられない」としました。

つまり、原告はNTTのハローページで「紙媒体での情報の開示(しかも、配布先は原則として掲載地域に限定されている。)に対して同意ないし承認」したにすぎません。公開されている情報だから無断でネット掲載してもいいという事ではないということです。

しかも、「インターネットに掲載された情報の複製は極めて容易であるため、いったんインターネットで情報を公開してしまうと、情報が容易に拡散し、いったん拡散してしまった情報の削除は事実上不可能となってしまうことから、紙媒体を用い、配布先が基本的に掲載地域に限定されているハローページヘの掲載とは,著しく異なるものである。」と指摘しています。

つまり、すでに書籍や紙媒体で個人情報が掲載(公開)されていることをもって、ネット上への掲載を許可したことにはならないということです。しかも、原告本人はネット掲載を「不同意ないし不承諾の意思を明らかにしている。」からおなおさらです。

上記の理由から、「ネットの電話帳」に本人の了解なく、原告の名前・住所・電話番号の個人情報を掲載したことは「違法である」と判断されました。

 ★被告Mの反論を裁判所は却下

①「プライバシーは憲法上の権利であり私人間に直接適用されることはない」

裁判所⇒適用される。「私人間においてプライバシーを法的利益とする人格権侵害を理由として民法709条の不法行為」等が成立する。

 

②「電話帳は個人情報保護法の規制対象の除外だから、(自分の行為は)違法ではない」

裁判所⇒「法の規制対象外にあたることをもって、直ちに当該行為(ネット掲載)に違法性がないということはできない」

 

③「全国の図書館等で閲覧が可能だから公知の事実で、プライバシー情報に該当しない」

裁判所⇒「情報の内容が同じであっても、ハローページは、紙媒体を用いたもので、配布先が原則として掲載地域に限定」されている。ハローページへの掲載をもって「その情報が公知の事実であると評価することはできない。」

 

④「ネットの電話帳は、災害時の被災者の安否確認等で活用され、社会的に有用性が高い」


裁判所⇒「個人の氏名、住所及び電話番号といった公共の利害に直結しない事実を整序し、検索可能にして掲載したというもの」「表現の自由により保護されるということはできない」

 

鳥取ループ・M、またも敗訴! サイト削除の仮処分決定、東京高裁も支持

東京高裁は9月28日、サイト削除(同和地区WIKI)の仮処分決定に対する異議審決定を支持する決定を下し、鳥取ループ・Mの抗告を棄却しました。

今後は、Mが今回の決定に対して許可抗告・許可抗告をしており、その結論待ちになります。(抗告が棄却されたら、サイト削除も敗訴が確定)

『復刻版・全国部落調査』出版禁止の仮処分決定についてはすでに9月4日、東京高裁がMの許可抗告を棄却しています。

今回の高裁決定では、解放同盟の業務遂行権の侵害は認められないという課題も残りました。

しかし、東京高裁でもサイト削除の仮処分決定が支持されたことについては、今後の本訴にとっても、大きな意味があります。

本訴は東京地裁で審理継続中で、来年の夏頃が一つの節目と言われています。

不動産仮差押については7/11、横浜地裁相模原支部がMの抗告を棄却し、現在、高裁で審議中。

この間の全ての訴訟で裁判所は、示現舎の行為は権利侵害と認定していることは、みなさんと確認しておきたいです。

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鳥取ループ・示現舎、Mのマンション差押え~決定は妥当!との判決~

「全国部落調査」復刻版出版事件では、現在、鳥取ループ・示現舎のMの自宅マンションは、仮差押えとなっています。

損害賠償請求で支払えない場合のために、マンションを差し押さえているということ。

この決定を不服だと、Mは異議申立をしていたが2017年7月11日、横浜地裁相模原支部は、Mの申立を棄却し、マンションの仮差押えの決定を支持しました。

判決の全文はこちらから

不動産仮差押命令異議申立に対する横浜地裁相模原支部の決定 | 「全国部落調査」復刻版 出版差し止め事件裁判

争点(判決)のポイント

部落の地名掲載について(解放運動の基本スタンス)

鳥取ループ・示現舎は、「解放同盟や行政などは自分たちの機関誌や書籍などには地区名を書いている。なぜ、私たちが同じように部落の地区名を掲載したり、部落地名総鑑を出版・ネット公開してはいけないのか」と、主張している。

まず、前提として「部落地名総鑑」は政府も認めた差別図書だからダメ!その上で、

ポイント①
「誰が作成したか」でなく、「何の目的で、どう使うのか」が問われている
。 

 

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『結婚差別の社会学』 齋藤直子(勁草書房、2017年)を読んで

「私は差別しない。でも親戚が・・・。世間が・・・」、結婚差別をする親たちの常套句だ。反対するのが親であれば、説得する対象が明確であり、対応も考えられる。

しかし、親戚やいとこの将来の架空のパートナー・親族まで、持ち出されて反対されてしまうと、カップルは説得が困難になる。

また、「私は差別してない」という親を、差別者呼ばわりすることもできなくなる。こうやって、差別への抗議が無効化され、カップルは差別を理由に反論できなくなり、「人柄」や「熱意」で勝負せざるを得なくなる。

運良く「人柄」や「熱意」が伝わり、「部落民だけど、この人は違う」と「例外化」され、結婚が容認されても、親の差別・忌避意識は変わってはいない。

結婚を認める代わりに条件がつけられる。

部落民ということは親戚には言うな」「部落には住むな」「子どもは産むな」といわれる。

本書ではこのような結婚差別のケースも多く取り上げられている。

『結婚差別の社会学』を読み終えたとき、これまで私自身が出会ってきた、たくさんの人たちの顔が浮かんできた。

自分の恋愛差別・結婚後差別のことを思いだし、ともに憤り、悲しみ、共感しながら本書を読みすすめた。

なぜなのか。この本では、聞き取り調査という手法を使い、数字では表すことが出来ない、生身の人間の声、差別の現実、心の奥底にある声をひろいあげている。

今も続く結婚差別のプロセスの中を生きる人たちの現実を、実証的に分析しているからだ。

私はこれまで結婚差別に関する多くの体験談を聞き、書籍や手記も読んできた。結婚差別に関する各地の実態調査や意識調査の結果も見てきた。

でも、それらの結婚差別をめぐるプロセス自体を分析し、結婚差別問題の解決のための研究がこれまで、ほとんどなかった。

この本は、学術書で終わらせず、結婚差別を受けた当事者、支援者にたいして、その解決に向けて少しでも役立つことを意識して書かれている。

著者の齋藤直子さんの研究者としての立ち位置、聞き取りを通して、かかわった目の前の人たちに対する思いが、すごく伝わってくる本である。ぜひ、多くの人に読んでもらいたい。

www.keisoshobo.co.jp

9/24 「私たちの部落問題 VOL2」が開催されます!

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9月24日(日)午後1時~、ABDARC主催のイベント「私たちの部落問題Vol.2」が東京・渋谷の「LOFT9」で開催されます!

9月25日(月)14::00~、東京地裁で「全国部落調査・復刻版」裁判の第6回口頭弁論があり、裁判にあわせた前日のイベントです。

⇒詳細・予約申込はこちらから http://www.loft-prj.co.jp/schedule/loft9/73287(LOFT9の公式サイト)

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東京高裁も「全国部落調査」(復刻版)の出版禁止の決定を支持!

 2017年6月16日、東京高裁は「復刻 全国部落調査」出版禁止の仮処分決定について、横浜地裁判決を支持する決定を下しました。
※昨年4月に示現舎(川崎市)が、「部落地名総鑑の原点」と題した本(全国の被差別部落の所在地が書かれた一覧リスト「全国部落調査」の復刻版)を出版しようとし、解放同盟が出版差し止めの訴訟を起こしました。横浜地裁(相模原支部)は出版禁止の仮処分決定を命じました。この決定に対して示現舎は不服として、地裁、高裁に仮処分決定を取り下げるように求めていました。

 解放同盟と示現舎の抗告を棄却。示現舎の主張は一切認められず。また、解放同盟の業務妨害も認めれないままの課題は残りました。

しかし、出版禁止の仮処分決定は正しかったとの結果は出ました。あとは本訴で争うことになりました。

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部落差別と戸籍の非公開の闘い

tubame-jiro.hatenablog.com

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蓮舫代表が戸籍公開

民進党蓮舫代表が「国籍問題」で戸籍の一部を2017年7月18日に公開した。部落解放同盟中央本部は14日午後、民進党本部を訪問し、戸籍公開を求める発言が党内から起きていることに対する抗議をおこない、蓮舫代表が戸籍情報を公開することがないように申し入れをおこなってきた。

同様の事が二度と起こさせないためにも、戸籍と身元調査、部落差別との闘いの歴史をあらためて確認しておきたい。

◆「壬申戸籍」事件

戸籍は本人と親族などの血脈を証明するもの。そのため、戸籍に書かれた個人情報をもとに身元調査が行われ、結婚差別や就職差別などにおいて戸籍が悪用されてきた歴史がある。差別されたくないために、本籍地を何度も変えた部落民もいる。

部落解放運動は戸籍公開制限との闘いの歴史でもあった。戦前、全国水平社の闘いにより、壬申戸籍に記載された「元穢多」「新平民」などの族称欄が廃止された。

戦後も結婚や就職に際して、戸籍を用いた身元調査が後を絶たず、解放同盟は「戸籍の自由閲覧を制限させる運動」を展開。1968年に壬申戸籍が封印されてからも、戸籍の本籍地や親族情報を元に、身元調査が行われてきた。

◆「部落地名総鑑」事件

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1975年に「部落地名総鑑」事件が発覚。全国の部落の所在地一覧が掲載された本が販売され、企業や探偵者など300社が購入し、戸籍と「部落地名総鑑」を照合し、部落出身者の身元調査をおこなっていた。事件発覚後、法務省が10年以上をかけて現在まで10種類の「部落地名総鑑」が確認され、663冊が回収されている。

部落地名総鑑」事件をきっかけに1976年に戸籍法が改正された。請求事由の明示によって、不正目的が拒否できる「戸籍の閲覧制限」が行われた。さらに、こうした戸籍の閲覧制限が厳しくなるにつれ、次は住民票で「本籍」を調べ、身元調査を行う事件が続発し、1985年住民基本台帳法も改正し、「住民票の公開」制限を行った。

その後、大阪府をはじめ福岡、熊本、徳島、香川などでも身元調査規制条例が制定され結婚や就職に際して探偵などの差別身元調査を規制した。

◆就職・採用試験では戸籍提出は禁止!

就職差別撤廃運動では、就職試験のエントリーシートは本籍地や親の職業など本人の能力とは関係のない記載をさせない「全国高校統一応募用紙」が使用されるようなった。1999年には職業安定法が改正され、採用時における戸籍の提出の禁止、面接時において本籍地や親の職業など本人の能力以外の情報収集することが法的に禁止された。

 

◆戸籍法改正 「原則非公開」に!

 1980年代後半から、戸籍・住民票を他人が閲覧・取得できなくなったために、弁護士や行政書士等の有資格者に依頼し、戸籍等を不正取得し、身元調査をおこなう事件が多発した。

tubame-jiro.hatenablog.com

 

そのため2006年には「探偵業法」制定され、探偵業務において部落出身などの差別身元調査が禁止となった。そして、2008年には戸籍法が改正され、請求時の本人確認の徹底、不正取得を依頼した人も刑罰となった。

戸籍の不正取得防止に向けては、全国の650以上の自治体で登録型「本人通知」制度が導入されている。

このように部落解放運動では身元調査に戸籍が利用されてきたために、一貫して戸籍の公開制限の闘いをおこなってきた。そして、現在、戸籍は「原則非公開」という人権基準を作り上げてきた。

 

◆戸籍公開はマイノリティへの差別を誘発する !

戸籍には『婚外子』『棄児』『アイヌ民族』『沖縄出身』『トランスジェンダー』などの情報もある。『差別につながる恐れのある個人情報は開示しない』というのが現在の到達点。

結婚相談所でも独身確認ためには戸籍でなく、自治体で発行される「独身証明書」を使用するように経産省が2008年にガイドラインを出している。

今回の蓮舫代表の戸籍公開は、日本のプライバシー権、個人情報保護の闘いで積み上げてきた到達点を壊してしまう危険性があり、今後、悪影響することがないように取り組みを強化していく必要がある。

 

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