部落差別は、今 ~TUBAME-JIROのブログ~

当事者の声、マイノリティの視点、差別の現実を踏まえた情報発信をしています。

東京高裁も「全国部落調査」(復刻版)の出版禁止の決定を支持!

 2017年6月16日、東京高裁は「復刻 全国部落調査」出版禁止の仮処分決定について、横浜地裁判決を支持する決定を下しました。
※昨年4月に示現舎(川崎市)が、「部落地名総鑑の原点」と題した本(全国の被差別部落の所在地が書かれた一覧リスト「全国部落調査」の復刻版)を出版しようとし、解放同盟が出版差し止めの訴訟を起こしました。横浜地裁(相模原支部)は出版禁止の仮処分決定を命じました。この決定に対して示現舎は不服として、地裁、高裁に仮処分決定を取り下げるように求めていました。

 解放同盟と示現舎の抗告を棄却。示現舎の主張は一切認められず。また、解放同盟の業務妨害も認めれないままの課題は残りました。

しかし、出版禁止の仮処分決定は正しかったとの結果は出ました。あとは本訴で争うことになりました。

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部落差別と戸籍の非公開の闘い

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蓮舫代表が戸籍公開

民進党蓮舫代表が「国籍問題」で戸籍の一部を2017年7月18日に公開した。部落解放同盟中央本部は14日午後、民進党本部を訪問し、戸籍公開を求める発言が党内から起きていることに対する抗議をおこない、蓮舫代表が戸籍情報を公開することがないように申し入れをおこなってきた。

同様の事が二度と起こさせないためにも、戸籍と身元調査、部落差別との闘いの歴史をあらためて確認しておきたい。

◆「壬申戸籍」事件

戸籍は本人と親族などの血脈を証明するもの。そのため、戸籍に書かれた個人情報をもとに身元調査が行われ、結婚差別や就職差別などにおいて戸籍が悪用されてきた歴史がある。差別されたくないために、本籍地を何度も変えた部落民もいる。

部落解放運動は戸籍公開制限との闘いの歴史でもあった。戦前、全国水平社の闘いにより、壬申戸籍に記載された「元穢多」「新平民」などの族称欄が廃止された。

戦後も結婚や就職に際して、戸籍を用いた身元調査が後を絶たず、解放同盟は「戸籍の自由閲覧を制限させる運動」を展開。1968年に壬申戸籍が封印されてからも、戸籍の本籍地や親族情報を元に、身元調査が行われてきた。

◆「部落地名総鑑」事件

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1975年に「部落地名総鑑」事件が発覚。全国の部落の所在地一覧が掲載された本が販売され、企業や探偵者など300社が購入し、戸籍と「部落地名総鑑」を照合し、部落出身者の身元調査をおこなっていた。事件発覚後、法務省が10年以上をかけて現在まで10種類の「部落地名総鑑」が確認され、663冊が回収されている。

部落地名総鑑」事件をきっかけに1976年に戸籍法が改正された。請求事由の明示によって、不正目的が拒否できる「戸籍の閲覧制限」が行われた。さらに、こうした戸籍の閲覧制限が厳しくなるにつれ、次は住民票で「本籍」を調べ、身元調査を行う事件が続発し、1985年住民基本台帳法も改正し、「住民票の公開」制限を行った。

その後、大阪府をはじめ福岡、熊本、徳島、香川などでも身元調査規制条例が制定され結婚や就職に際して探偵などの差別身元調査を規制した。

◆就職・採用試験では戸籍提出は禁止!

就職差別撤廃運動では、就職試験のエントリーシートは本籍地や親の職業など本人の能力とは関係のない記載をさせない「全国高校統一応募用紙」が使用されるようなった。1999年には職業安定法が改正され、採用時における戸籍の提出の禁止、面接時において本籍地や親の職業など本人の能力以外の情報収集することが法的に禁止された。

 

◆戸籍法改正 「原則非公開」に!

 1980年代後半から、戸籍・住民票を他人が閲覧・取得できなくなったために、弁護士や行政書士等の有資格者に依頼し、戸籍等を不正取得し、身元調査をおこなう事件が多発した。

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そのため2006年には「探偵業法」制定され、探偵業務において部落出身などの差別身元調査が禁止となった。そして、2008年には戸籍法が改正され、請求時の本人確認の徹底、不正取得を依頼した人も刑罰となった。

戸籍の不正取得防止に向けては、全国の650以上の自治体で登録型「本人通知」制度が導入されている。

このように部落解放運動では身元調査に戸籍が利用されてきたために、一貫して戸籍の公開制限の闘いをおこなってきた。そして、現在、戸籍は「原則非公開」という人権基準を作り上げてきた。

 

◆戸籍公開はマイノリティへの差別を誘発する !

戸籍には『婚外子』『棄児』『アイヌ民族』『沖縄出身』『トランスジェンダー』などの情報もある。『差別につながる恐れのある個人情報は開示しない』というのが現在の到達点。

結婚相談所でも独身確認ためには戸籍でなく、自治体で発行される「独身証明書」を使用するように経産省が2008年にガイドラインを出している。

今回の蓮舫代表の戸籍公開は、日本のプライバシー権、個人情報保護の闘いで積み上げてきた到達点を壊してしまう危険性があり、今後、悪影響することがないように取り組みを強化していく必要がある。

 

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「冷たいレイシズム」鳥取ループ ~変装してイベントに潜入、強制退去~

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鳥取ループ・示現社のMらの行為は、部落問題をあまり知らない人からすると、一見、「ヘイトなの?」とわかりにくい。

彼は決して、ネット上でも、路上でも賤称語を使い「部落民を殺せ!」などとは叫ばない。その意味では「彼らの行為はヘイトなの?」と思う人がいるかもしれない。

しかし、Mは記者会見で「『復刻版 全国部落調査』を出版したら、結婚差別で「一人や二人くらい死ぬ人がいるかと思ったら、そんなことない」と平気で言い放つ。

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「部落差別解消推進法」の周知 各地の先駆的な取組

「部落差別解消推進法」(以下「推進法」)が施行されて半年が経とうとしてます。
国からの指示を待つまでもなく、各地の自治体で「推進法」の周知徹底の取り組みが始まっています。いつくかの先駆的な取り組みを紹介します。

 

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「私たちの部落問題」~上智大学で公開講座~

私たちの部落問題のイベントが6月上智大学で開催されます。
東京近郊の方はぜひ!「部落問題の今」について学べます。

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◆ Lecture「初めての部落問題」
             齋藤直子(大阪市立大学特任准教授)
                「ネットと部落差別」
               川口泰司(山口人権啓発センター)

 ◆Talk Event 「私と部落と反差別」
     【ゲスト】  三木幸美(とよなか国際交流協会)
           
上川多実(BURAKU HERITAGE)
             C  (BURAKU HERITAGE)
            李 信恵(ライター)
            ゆーすけ(C.R.A.C)
    【コメンテーター】香山リカ(精神科医)

 【コーディネーター】内田龍史(尚絅学院大学准教授) 

 
「部落差別解消法」施行~ネットと差別扇動

 2016年12月、「部落差別解消法」が施行されました。
背景には、ネット上での部落差別の深刻化があります。
ネット上では全国の被差別部落(五千ヶ所以上)と部落出身者(1万人以上)が「暴かれ」「晒され」ています。 

さらに、ネット上では部落への差別情報が多く、偏見やデマが大量に拡散・蓄積され続けています。差別に関する正しい知識がないため、偏見やデマ情報を鵜呑みにし、無自覚に差別をしている事例を多く見ます。

第1部では、「部落問題って何?」「部落差別は、いま、どうなっているの?」について学びます。

 

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同和地区の所在地情報のネット掲載はアウト!~プロバイダー業界団体が禁止規定に追加!

www.telesa.or.jp

プロバイダ関係の4大業界団体が、ヘイトスピーチと同和地区の所在地情報の差別的掲載を禁止しました!

今後、この「契約約款モデル」を各サービス会社に実際に導入させる取り組みが必要となります。

課題としては海外のプロバイダは適用されません。でも、まずは一歩前進です。

ヘイトスピーチ解消法」「部落差別解消法」は理念法だけど、やはり法律があることは大きいです。

この間の経過

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もう一つの教科書無償闘争~絵本『おたまさんのおかいさん』(長谷川義史)より~

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大阪・日之出の教科書無償化闘争

教科書無償闘争と言えば、高知・長浜の闘いが国を動かす決定的な闘いとなった。しかし、実は、その前段として京都・大阪の闘いがあったことは、あまり知られてない。

当時、20代だった部落の青年たちが差別と貧困により、教科書すら買えず、給食代を持って行けない部落の子どもたちが、教員から「給食代を忘れた子」とプラカードを首から下げられ、運動場を走らされていた。

そして、子どもたち自身も教育闘争に立ち上がり、やがては教科書無償化を勝ち取る。

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知ってた?小中学校の教科書が無償(タダ)になった理由!

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今日は、全国の小中学校で入学式・始業式。
新学期になると、いつも教科書が無償(タダ)で配られる。

すべての小中学校の教科書の裏に、かかれている言葉がある。

「この教科書は、これからの日本を担う皆さんへの期待をこめ、税金によって無償で支給されています。大切に使いましょう」

これ、知っていましたか?

高校生になると、教科書は自分で購入しなければいけない。

教材等も入れると2~3万円くらいする。

なぜ、小中学校の教科書がタダ(無償)なのか、多くの人が知らない。

 

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増えている「同和地区」問い合わせ

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(1)増えている行政への「問い合わせ」

都府県や市区町村役場、隣保館などへの同和地区の問い合わせは、年々増えています。

1995年~2015年まで、過去20年間で確認出来ただけでも207件(『あいつぐ差別事件』『解放新聞』等で確認)の差別問い合わせがありました。

1995年~2005年は計46件ですが、2005年~2015年では計160件となっています。この10年間で差別問合せ事件は3倍以上に増えています。

問い合わせ先の多くは、都府県や市区町村役場・教育委員会などの行政です。その他に隣保館、人権啓発センター、解放同盟都府県連、小学校などもあります。

世代としては20代~80代までの各年齢層であり、不動産会社・マンション開発業者・住宅会社などの社員も目立ちます。

(2)直接窓口にくるケースも2割ある

行政等への同和地区問い合わせの8割が電話です。その多くが匿名または自称(〇〇市在住、偽名)で問い合わせをおこなっています。

なかには、直接、行政等の窓口まで来て、堂々と「同和地区はどこか」と問い合わせるケースも2割あります。

結婚相手の身元調査では、親子(母と娘)が役場を訪ね、「結婚する相手が同和地区に在住しているのか知りたくて調査したい。結婚相手の戸籍を請求できるか」(大阪2006)という事件も起きています。

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身元調査(戸籍等の不正取得)と登録型「本人通知」制度

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行政書士司法書士などによる戸籍不正取得事件

弁護士や司法書士行政書士などの8士業の人は、「職務上請求書」を使用するれば、他人の戸籍や住民票を自由に取ることが出来ます。

この間、探偵社や調査会社などが行政書士などに依頼し、他人の戸籍等の個人情報を不正取得する事件が全国で発覚しました。

 

 2011年に発覚した一連のプライム事件。

東京の司法書士行政書士、横浜・群馬の探偵社などにより、全国の市町村から3万件以上の戸籍・住民票が不正取得されていました。

不正取得された個人情報が、結婚の身元調査やストーカーやDVなどの犯罪に利用されていました。

プライム事件の逮捕者は33名。全員有罪判決。探偵、司法書士行政書士等のほかに行政や警察、docomo、NTT、SoftBankの店員など。戸籍や住民票以外に、納税情報や所得情報、携帯番号、車両情報、信用情報(借金)など、あらゆる個人情報が、売買されていました。

 

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