部落差別は、今 ~TUBAME-JIROのブログ~

当事者の声、マイノリティの視点、差別の現実を踏まえた情報発信をしています。

結婚差別の現実 ~部落差別は、いま⑧~

内田龍史さんの講演録「データーで見る部落問題」を読んだ。
結婚差別の具体的な事例2件を読み、胸が締めつけられた。
一人は、私も知っている青年だった。

涙を流し、その事を語ってくれた、彼の顔を思い出した。

彼は結婚差別を受け、ボロボロになり、自死を考えていた。でも、その時に、解放運動に取り組む仲間が支えてくれた。

同和教育に取り組む先生たちや、多くの人との出会いの中で、部落と出会い直すなかで、今は、解放運動をがんばっている。

結婚差別を受けたとき。当事者自身が、部落問題について偏見情報を内面化していた場合、最悪のケースが起きる。そして、誰にも相談出来ない。Bさんも、親には結婚差別を受けているとは言えずに、一人で抱え込んでいた。

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マンション開発でも同和地区調査(土地差別調査)!~部落差別は、いま⑦~

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大阪府民からの通報で発覚 

 2007年1月、大阪府府民から「土地調査会社(リサーチ会社)」が部落差別につながるおそれのある調査や報告をおこなっている。行政から是正して欲しい」との通報があった。その後、調査が行われ事件の解明が行われた。

マンション開発業者(デベロッパー)は、マンションを販売するために、必ず広告代理店とつながっている。広告代理店はサービスの一環として、マンション建設候補地のエリア情報を専門の土地調査会社(リサーチ会社)に依頼し、報告書を作成してもらう。

その報告書をデベロッパーに提供し、マンション建設を検討してもらう。採用されたら、その代わりに当該マンションの広告を担当させてもらえるという仕組み。

 

差別調査の報告書

問題となったのは、調査報告書に記載されていた地域情報の内容だった。そこには、同和地区であることや在日外国人の集住地域であるなどを示す差別的情報も書かれていた。

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「部落民が差別と言えば、なんでも差別」と歪曲された「朝田理論」 ~部落問題の基礎知識④~

1、「部落民以外はすべて差別者」「解放同盟が差別と言えば、何でも差別」とデマを流し続けた日本共産党

部落民以外はすべて差別者」→「解放同盟が差別と言えば何でも差別」→「糾弾(暴力・リンチ)」→「同和利権」=「だから、部落差別がある」】

 そう叫んでいる人たちがいる。

「部落差別解消推進法」の法案審議では共産党だけが反対していた。そこでは「解放同盟は『部落民以外はすべて差別者』『部落排外主義』で反対勢力を組織から排除し『窓口一本化』で行政から『利権を独占』するため暴行・監禁など無法な「糾弾」闘争で、県市町村など自治体を好き勝手動かした。」と言う。

彼らの主張を鵜呑みにして、ネット上では「『解放同盟』=糾弾=暴力リンチ」「なんでも差別だ~!糾弾だ!」と言っている悪い奴らだと、必死で叫んでいる人たちがいた。ネット上の一方的な情報や共産党の主張だけを鵜呑みにして、その主張を正義感を持って語っている人たち。

「ウソも100回言えば、本当になる」とのヒットラー式の大量デマ宣伝、ネーム・コーリングを見事に体現しているなぁと思った。ネット社会の怖さ、情報発信の必要性を改めて感じた。

 そこでは、下記のようなことが主に語られている。

①「部落民以外はすべて差別者・・・」(共産党の言い方)

②「部落・部落民にとって不利益な問題は一切差別である」

⇒「解放同盟が差別だと言えば、なんでも差別。そして糾弾」(共産党の言い方)

 

2,「部落・部落民にとって不利益な問題は一切差別」(朝田理論)とは?

 ほんとに、当時の解放同盟は、そんな主張していたの?これは40年以上前の理論であり、当時の議論を確認するため『部落解放理論の根本問題-日本共産党の政策・理論批判』(大賀正行、解放出版社、1977年)を読んでみた。

すると、いかに共産党が自分たちの都合のいいように解釈し、40年以上も差別デマを流し続けてきたのか、あらためて実感した。

簡単に言うと、50年前、差別問題を単なる個人の差別意識・観念の問題(「心理的差別」)として捉えるのではなく、「実態的差別」の現実にも現れているということを、部落大衆に分かり易く言った理論。

50年前の当時、差別を個人の行為レベルとして捉らえていたものを、「差別と貧困の悪循環によって、部落の人たちの生活権、教育権等が侵害されている」と社会科学的に認識を転換し、解放運動を展開するようになったということ。

部落の人たちが差別と貧困の悪循環によって、劣悪な住環境や長欠・不就学、低学歴と不安定就労などに置かれている実態は、単なる個人の問題でなく、部落差別の結果なのだと。

そのように「差別のとらえ方」を発展させた解放理論だった。そうして、それらの劣悪な環境改善等の「生活要求闘争」に取り組む事で、差別によって奪われた権利を、自ら取り戻す自覚的な解放運動、大衆団体として展開しっていった。

この解放理論が、1965年「同和対策審議会」答申に、「心理的差別」と「実態的差別」という内容に反映され、これら差別の実態放置に対する行政責任が明記されていった。

これが50年前の「部落にとって、部落民にとって、不利益な問題は一切差別である」という朝田理論の命題の一つ。

この命題を、「解放同盟幹部の胸先三寸で、差別だと決まる」、というようなデマを大々的に流しつつづけたのが共産党であり、部落民や部落解放運動に対する差別と偏見を扇動し続けた罪は大きい。

 

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以下、上記の本より一部抜粋。

『部落解放理論の根本問題-日本共産党の政策・理論批判』
(大賀正行、解放出版社、1977年) 

【「部落にとって、部落民にとって不利益な問題は一切差別である」と規定した第12回全国大会(1957年)の命題について 

日共宮本一派は、これをなんでも気にいらないものをすべて差別だとするかってな理論だと中傷する。わが同盟の主張は、部落にとって、部落民にとって不利益な問題が、けっして偶然に起こっているのではなく、部落の具体的な歴史的、社会的関係から生まれた部落差別とかならず結びついていることを明らかにしたものである。

部落民に対する直接的な差別だけが差別ではない。部落民が生活のあらゆる面、就職、結婚、教育、居住等々でうけているすべての不利益が部落差別である。】(P25)

【この命題は、1951年のオールロマンス事件を契機として行政闘争を通じ、この行政闘争が第12回大会の命題として定式化されたものである。したがって、第12回大会の命題は、差別は、個々の差別事象だけでなく、部落大衆の日常生活の中に、日常生起する問題で不利益な問題の中にあることを教えた。

すなわち、部落大衆の仕事がない、生活が貧困である、教育水準が低い、文化水準が低い、生活環境が悪い等の部落民にとって不利益な様々の問題が、実は差別の結果であり、あらわれであり、しかも差別の原因になっていることを明らかにした。

したがって、この命題は、部落民にとって不利益な問題は差別の本質からきている。差別として捉えるということである。

同時に大衆の要求(家が欲しい、職が欲しい等々)を功利主義的に捉えるのではなく、大衆の要求=不利益な問題は、差別の具体的あらわれであり、これを明確に理論づけ、差別があるからこそ要求が出てくるんだということを大衆に自覚させ、しかも万人に納得いくように説明せよということを要求しているのである(p63)】

 

参考1「戦後の部落解放運動の再建と闘い」
1945.10. 1 全国水平社の幹部を中心に再建協議
1946. 2.19 部落解放全国委員会結成 翌日:部落解放人民大会開催
1951.10.19 オールロマンス差別事件 → 差別行政糾弾闘争
      『差別観念は部落民の差別された実態の反映』
1953. 5. 6 全国同和教育研究協議会結成 翌日:第1回全同教大会
1955. 8.27 部落解放全国委員会第10回大会 部落解放同盟に改称
1957.12. 5 部落解放同盟第12回大会 国策樹立運動の方針
部落民にとって部落にとって不利益な問題はいっさい差別である』


1971. 3. 1 部落解放同盟第26回大会『「三つの命題」にもとづく認識』
命題① 
部落差別の本質

部落民が市民的権利の中でも、就職の機会均等の権利を行政的に不完全にしか保障されていない、すなわち、部落民は、差別によって主要な生産関係から除外されているということである。これが差別のただ一つの本質である」


命題② 部落差別の社会的存在意義

部落民労働市場の底辺を支えさせ、一般勤労者の低賃金、低生活のしずめとしての役割を果たさせ、政治的には部落差別を温存助長することによって、部落民と一般勤労者とを対立させる分裂支配の役割をもたされている」


命題③ 社会意識としての部落民にたいする差別観念

「その差別の本質に照応して、日常生活化した伝統の力と教育とによって、自己が意識するとしないとにかかわらず、客観的には空気を吸うように一般大衆の意識のなかに入り込んでいる」

 

参考2「朝田理論について、ある先輩からのコメント」

社会科学の視点で部落差別をとらえた

第12回大会で出された「日常部落に生起する問題で、部落にとって部落民にとつて不利益な問題は一切差別である」というテーゼを、「解放同盟が差別と言えば何でも差別」と一方的に批判する日共の主張は、「社会科学が全く理解できていない」ということを自ら露呈しているだけのものです。

「日常起こる問題には、すべて社会的背景がある」ととらえることは、社会科学では当然のことです。

例えば、原発事故を「想定外」ととらえるが、そこには、「安全神話」をばらまきながら、コストを削減し利益を上げるために、一切の安全を検討してこなかった東電の責任、そしてそうした体質を生む利益中心の社会があると要因を深く追求していかなければ問題の本質はつかめないし、解決の方策も見出すことはできません。

当時、「部落民が競馬で負けてすっからかんになっても、それは差別なのか」と揶揄する言葉も赤旗に掲載されました。しかし、その人がなぜ競馬に手を出したのか、平日に仕事もしないで競馬に行っていたとしたら、そこに何があったのかと考えていくと、例えば、仕事につけない理由があった、競馬でしかお金を稼ぐことができない事情があったかもしれないと、背景が浮かび上がってきます。

私が、確認糾弾会に参加していた時に忘れられないやり取りがあります。当時の支部書記長が、「電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも差別かと批判されるが、まさしく差別だ」と言い切られたのです。参加していた私もあまりの言葉に、何を言い出されるのかと思いましたが、引き続いて、「部落に入ってくる道路の電信柱をよく見ろ。地区の直前までコンクリートの高い電信柱だが、地区に入った途端、木製の低いものになる。なぜなら、部落の家は平屋か中二階で、高い電信柱が必要ないからだ。それを見て、私たちは悔しい思いをしてきた。郵便ポストは、部落の中に一つしかない。しかも、回収に来られたら一通も入っていない。赤い郵便ポストがあってもそれを使うことができない我々にとっては、あの赤さも悔しい対象なのだ」と言葉を続けられたのです。

「ためにせんがため」の屁理屈ではなく、部落大衆にわかりやすく、社会科学的な見方・考え方を伝えようとした当時の部落解放運動のリーダーたちの思いを、受け止められなくて何が「民衆のために党」なのかと私は思い続けています。

 

「主要な生産関係から除外」

 確かに「主要な生産関係から除外」ということは、社会科学が明らかにしている「相対的過剰人口=失業者」として位置づけられてきたこと、つまり今でいう「非正規雇用」「日雇い」としてしか多くの部落大衆が働けなかったことを示しています。

そうした「非正規・低賃金労働」の状態が、「正規雇用者」の賃金や労働条件を低下させる「しずめ」の役割を担わされたこと。そして、「積極的な雇用」を企業に求めても、「実力」を盾になかなか門戸が開かれない中で、行政が公務員といっても主に「現業部門」に雇用したこと。

また当時やそれ以前は、塵芥処理やし尿処理といった現業部門の仕事は大変な重労働で労働条件が極めて過酷なものであったために、一般公募してもなかなか就労者がいないという現実がありました。

それが、「優先雇用」などと言う言葉で非難されだしたのは、労働条件が改善されてきたうえに、不況で企業就職が困難になり「公務員志向」が増加してきた中で、人々の「経過に対する無知」を利用して、「劣情」を煽り立ててきただけ。ですから、この国で真の「アファーマティブアクション」など行われなかったとも思っています。

住宅販売会社が同和地区調査を!~部落差別は、いま⑥~

 

 

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1,土地差別とは?

「部落差別は、利害が絡んだときに顕在化する」と言われる。
そのうちの一つが不動産売買における部落差別。いわゆる土地差別と言われている。

住宅購入に際して、同和地区を避ける市民が多くいる。各地の意識調査を見ても、約半数近くの市民が同和地区の物件を「避ける」と回答。

不動産業者への実態調査でも、約2~3割の不動産の担当者がお客さんから「同和地区の物件かどうか」の問合せを受けたことが「ある」と回答している。

同和地区に住めば、自分たちまで「同和地区の人間とみなされる」=「差別される立場になる」との意識、「同和地区はガラが悪い。子どもの教育環境が悪い」などの市民が持つ同和地区へのマイナスイメージや偏見の中で忌避されている。

 

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2,中古住宅販売会社による同和地区調査事件

中古住宅販売会社のK社は、全国46都道府県に107店舗を持つ、業界トップの中古住宅販売会社。競売にかかった中古物件など入札し、リフォームし販売。1000万円でマイホームが購入出来るとして、この10年で大きく成長した会社。

競売物件の入札に際しては、現地調査をおこない、中古物件の築年数やリフォームにかかる費用、立地や環境など、詳細な事前調査をおこない、入札価格を決定する。

営業担当者と支店長、エリア課長が決済した後に、本部の営業部長が最終入札価格を決定する。その際に、価格決定の重要な社内資料が「競売仕入チェック表」(「仕入表」)だ。

K社では、全国13府県(12支店)で、物件が同和地区かどうか調査し、同和地区の物件であった場合には「仕入表」に、「同和地区」「特殊部落」「同和ド真ん中」「不人気エリア」などと差別記載をおこない、上司や本部に入札を中止したり、仕入れ値を安くするように注意喚起していたことが発覚した。

同和地区の物件の場合は、競売物件を入札してリフォームして販売しても、一般地区よりも安くしなければ売れにくいからだ。

市民が同和地区を忌避する実態があり、その結果、販売価格が低下する。住宅販売会社は「損をしたくない」との思いから、市民の差別意識・忌避意識に同調し、同和地区調査を行っていた。

 

3,事件の発覚

2012年11月、中古住宅販売会社のK社和歌山店の社員が、ある物件について和歌山県庁(出先機関)に照会をおこなった。

その際、FAX送信した「仕入表」の特記事項覧に、その物件が「同和地区であり、需要はきわめて低くなると思われます」との記載があり事件が発覚した。

K社和歌山店は、同様に3件の物件に対しても同和地区の物件であることを明記する記述があった。

その後のK社(本社)は国交省の指導を受けて、同様の同和地区調査がないのか全国46都府県107店舗を社内調査した。その結果、全店舗の「仕入表」14,070枚(過去5年分)のうち、全国13府県(12支店)で26件の差別記載の存在が明らかとなった。

同社の仕入表には同和地区の物件については、仕入票に「同和地区」「特殊部落」「同和ド真ん中」「不人気エリア」など同和地区の物件であることが差別的に記載されていた。

記載した担当者は「同和地区の物件は売れにくい」ので、上司へ「入札を断念して欲しい」「仕入れ価格を抑えて欲しい」と「注意喚起」のために記載した証言している。上司は差別記載を同和地区と認識した上で「受け取り」「指摘せず」「値決め」し続けていていた。

その物件が同和地区か否かをどう判断したのかについては、近隣住民や地元の従業員、インターネット(隣保館等の施設)等で入手した情報で判断していたことが明らかになった。

K社は全国46都道府県に107店舗を持ち、業界トップの中古住宅販売会社。しかし、創業以来35年間、1度も人権研修をおこなっていなかった。そのため、差別調査や差別記載に対して社内の誰も指摘する人がいなかった。

今回の事件では、不動産売買で同和地区情報を営業活動に利用してきた宅建業者の差別体質が明らかとなった事件。

 

5,事件の差別性と問題点、背景と要因

①同和地区を差別的に評価し、差別的表現で記載している

・市民の同和地区への差別的価値観に、会社(担当者)も同調し、部落を差別的に評価。

・「特殊地区」「特殊地域」とは、「特殊な地域」という予断と偏見にまみれた部落への

差別表現である。かつての「特殊部落」「特種部落」の現代版ともいえる表現。

・「旧同和地区」「D地区のド真ん中 地域性注意」「不人気エリア」などと差別的に表記された当該住民(校区)からすれば、自分の大切な「ふるさと」を差別されたことに。

 

②近隣住民や同僚、インターネットなどで入手した同和地区情報をもとに土地差別調査

・物件調査に際して近隣住民や同僚、過去の販売経験、インターネットで「隣保館」等を検索し、同和地区情報を入手。

・その情報をもとに同和地区かを判断、値決めの判断材料に利用してきた。近隣の人から「教えられた」としても、仕入表へ差別記載したのは担当者の強い意志で行っている。

・同和地区でない物件も「同和地区」と誤認し、差別記載している。担当者の予断と偏見によって「隣保館」「刑務所」などが付近にあれば、同和地区と「見なして」差別をしていた。

 

③人権を無視した営利優先の企業活動を行ってきた会社の体質

・同和地区の物件は「売れにくい」ために、「長期在庫」になると自身の給与(評価)にも影響する。そのため、担当者は上司に「同和地区」であることを伝え、仕入価格・販売価格を「抑えてもらうように」に差別記載してきた。

・同和地区を忌避する市民の差別意識を前にして、無批判に営業活動を行えば、当然、自らも差別的行動をとることになる。その行動が社内で「あたりまえ」となっていた会社の差別体質が問われている。

 

④企業活動で明確な差別行為に自浄作用が働かなかった

・上司も差別記載を認識した上で、指摘することなく、「値決め」をし続けてきた。差別記載を指摘するといった人権感覚は、店長・課長・部長にも全くなかった。

・「創業以降35年間、一度も人権研修はおこなっていない」というように、人権問題への取り組みが欠落していたからこそ、誰も差別記載を指摘できなかった。

 

宅地建物取引業において土地差別調査が常態化している

・「会社は指示していない」と土地差別調査を個人の責任に矮小化している。現場では土地差別調査が常態化し、会社として指示する必要性がなかっただけ。「会社として指示する必要性」があったのは、従業員に対する人権研修であった。

宅地建物取引業に携わるものとして、同和問題について正しく理解していなければ、無自覚のうちに部落差別に加担していく。

 

⑥市民の同和地区(校区)への忌避意識と、「避けられる」実態的差別の現実が背景に

・今回の土地差別調査事件の背景には、市民の同和地区への根強い忌避意識と「避けられる」同和地区の実態がある。

・「調べる業者が悪いのか、調べて欲しい市民意識が悪いのか」、どちらも問題である。

・さらに、交通の利便性(道路が狭い、急傾斜地等)や教育環境、生活・福祉・就労などにおける社会的矛盾が集中的に表れている厳しい同和地区の実態がある。

宅地建物取引業に関する差別システムの改善策については、早急なる対応が求められているが、同和地区を忌避する市民の差別意識の払拭が、何より優先される課題である。部落問題に関する学校教育、市民啓発の充実が求められている。

・同時に、市民が忌避する「事実」として、高齢化、過疎化、生活保護や一人親世帯、就労面など、社会矛盾が集中的にあらわれている同和地区の実態的差別の現実に対して、

今後、宅建業界や企業、行政、NPOなどによる具体的取り組みが必要となってくる。

 

【参考:宅建業者への実態調査結果】

(物件が同和地区かの問い合わせ「あり」)

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⑦国及び自治体・業界団体による宅建業者への指導、人権問題に対する取り組みの欠落

・今回の事件は、中古住宅販売業界トップであり、全国展開している会社が起こした差別事件であり、宅建業者の差別体質と差別構造が浮き彫りとなった。

宅建業界において、このような土地差別調査が放置されてきたという業界の差別体質と、その差別体質にメスを入れてこなかった国及び自治体の取り組みの欠落が背景にある。

・今後、国及び業界団体による全国的なアンケート調査(実態把握)の実施、土地差別調査の根絶を目的とした「宅建業法」の抜本的改革、宅建業団体における人権ガイドラインの策定と同和問題解決に向けた主体的な取り組みが求められている。

 【土地差別調査が放置されていたという業界の差別体質】

・国の通達「宅建業法第47条」「同和地区を教えなくても抵触しない」を多くが知らない。

都道府県宅建協会で人権研修を実施しているのはごく一部。あっても参加していない

都道府県の法定講習(5年に1度の免許更新)で人権研修をやっているのも一部の府県。

都道府県や各市町村などで宅建業者を対象にした人権研修は、ほとんど行われていない。

 

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葬式の「弔電」「生花」の度に・・・~部落差別は、いま⑤~

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先日、解放運動の活動家の先輩がなくなった。その地域で、たった数世帯でも解放同盟員として、部落解放のために、最後までがんばってきた先輩だった。

ボクの住んでいるところは、解放運動が弱い地域だ。だから、葬儀の度に弔電と花束の名前に、解放同盟や人権関係団体の名前を入れるかどうか悩む。

親はバリバリの活動家でも残された遺族が喪主となり、葬儀がおこなわれる。子どもや家族、その友人や職場の上司なども参列している。それらの親族が、職場の上司や連れ合い、子どもなどに部落出身であることを言ってないケースもあるからだ。

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知ってる?「八鹿高校事件」の深層!(本編)~部落問題の基礎知識③~

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八鹿高校事件の友人の投稿で、紹介されていた本。著者の秋山良さんに、許可をもらったので、本文の八鹿高校差別事件のところを、一部抜粋して紹介させていいだきます。

詳細は、ぜひ本書を購入して読んでください。矢田教育差別事件の事も書かれています。

かなり長いですが、読み応えがあります。前回の投稿(部落問題の基礎知識②)を読んで、この記事を読めば、八鹿高校差別事件の「真実」が見えてくると思います。

 

※参考(一部抜粋)

『「同和利権の真相」の深層』(解放出版社、2004年)より、

「『真相』なるものが覆い隠した真実ー同和教育をめぐってー」

 

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八鹿高校事件って?「『解同』=『糾弾』=『暴力リンチ集団』」のデマと真相~部落問題の基礎知識②~

 ネット上では「糾弾=暴力リンチ=八鹿高校事件」の図式

部落問題をめぐる議論で必ず出てくる「糾弾」。そして、それを否定的に取り上げる象徴的な事件として、この「八鹿高校差別事件」がある。

先日の部落差別解消法案の参議院法務委員会の質疑でも、共産党議員は40年以上前の八鹿高校差別事件のことを取り上げて、ことさら「解放同盟=糾弾=暴力集団」と連呼し続けた。

八鹿高校差別事件(1974年)の時に生まれてない40~50代以下の若い人たちは、みんなネット検索で、wikiを見て「八鹿高校事件ってなに?」「解放同盟?糾弾って?」と情報収集。

「わぁー、こりゃひどいわぁ。解放同盟怖い。やっぱり部落は怖いねぇ。」「差別されて当然」「反省してないんでしょ?部落差別があるのは、差別もないにに、差別と騒ぐ『解同』があるからや」「私は部落差別はしていない。『解同』差別をしているだけ。そんな部落の人たちと結婚しないは当然。そんな地域に住みたくない」「部落って怖いね。やばいわ」とのコメントが爆発的にネット上に拡散していった。

こうして、寝た子が『気分悪く』起こされている。

 

ネット上では共産党の主張ばかり(デマもある)

八鹿高校差別事件(兵庫県)については、ネット上では被差別当事者の視点で書かれた情報がほとんどない。共産党系の差別的な主張がほとんどで、両論併記にすらなっていない。

ウィキペディアで「八鹿高校事件」を調べると、共産党系の主張で書かれて偏った記事。しかも、その量が多くて、みんな全文は読まない。ただ、そこに写る、ひどい写真ばかりの印象が残る、というのが現状。

その印象・情報がまるで事実のようになり、部落=解放同盟=暴力集団=利権集団=差別されても仕方ない、という論理で、部落問題を知らない若い人たちに悪影響を及ぼしている。

八鹿高校事件を知らない方は、少し長いでずが、ぜひ読んで下さい。ボクの友人が分かりやすく「まとめ」てくれました。

 

【八鹿高校事件について本読んでまとめてみた】

よく部落問題の話になると「解放同盟は暴力集団だ!八鹿高校事件で多くの人が暴力にあったやんか!」的な話を聞く。

共産党側の主張
詳細はwikiをみてください。八鹿高校事件 - Wikipedia

 簡単に言えば、「八鹿高校の教師が解放同盟にリンチされて半殺しにあったよ。だから、解放同盟は暴力集団なんや。」って事件。

 

八鹿高校事件を簡単にいうと
学校で同和教育がまともに行われておらず、学校内でも部落差別により交際を破局されられた生徒もいたり、近くの高校の生徒が部落差別で自殺する中、部落出身の生徒を中心に部落解放研究会を結成しようとする。

しかし、教師は認めず、生徒たちが学校でハンガーストライキをするが教師は無視。それを知った保護者や部落解放同盟が抗議するが教師は無視。そんな教師たちにムカついて殴った人もいた。共産党はそれを理由に「解放同盟 = 暴力集団」というキャンペーンをはった。

つまり、差別側に抗議してるのに共産党は差別者を擁護した事件。

 

当時の八鹿高校の同和教育の状況
一言で言えば、まともに同和教育に取り組んでいなかった。

・生徒が部落民宣言をして同和教育をしっかりやってほしいと先生にいっても何もしようとしなかった。逆に、その生徒と仲の良かった友だちたちが話もしないようになっていった。

同和教育の授業中は、漫画を読んだり、私語をしたり、授業にでない生徒たちも多く、部落出身の生徒は人目を気にしながら授業を受けていた。

・先生のおかしい点を指摘しても、先生は笑ったり、またかという顔をしたり、生徒が話をしているのにもかかわらず、途中でプリントを配ったりして話を聞こうとしない。

 

事件の発端
1974年1月、兵庫県幹部職員の差別文書事件が発覚する。

当時、3年生の女子生徒と幹部の息子が付き合っていて、女子生徒が被差別部落出身だとわかる。

それを理由に息子に交際をやめるように「同和行政を口に唱えても本当にそれをやる人はいない。私が1番よく知っている。」「家族一同が不幸となり社会の片隅で小さくなって生活していかなければならない」などと書いた。

※幹部職員は、同和行政を推進する立場にいた。

この文書が見つかった後に、部落差別によって交際を断ち切られた生野高校(八鹿の隣町)の女子生徒が奈良県で自殺。

こういう事件が連続で起こったから、兵庫県但馬地方の部落民(青年部中心)が糾弾闘争に立ち上がり、この動きが当時の高校生や中学生にも影響を与え、各学校で部落解放研究会(解放研)ができていく。

 

放研結成への動き
学校がまともに同和教育に取り組んでくれないので、生徒達21人が1974年5月に解放研をつくろうとする。しかし、教師たちは認めない。

約半年間、教師たちは生徒たちと話し合おうともしない。1974年11月になり、2人の教師との話し合いが約束されるが、他の教師にもみ消される。

そのため、解放研の生徒は話し合いを求めて職員室の廊下に座り込みを始めた(11月18日)。

これを知った保護者や被差別部落の人たちが教師に抗議するようになる。

しかし、教師たちは態度を硬化させ集団登下校するようになり、11月20日から城崎の旅館に集団宿泊するようになる。


 ※なぜ解放研結成がみとめられなかったのか
すでに部落問題研究会(部落研)というものがつくられていたため。 教師たちは部落研を「民主的に部落問題を考えるサークルとして指導してきた」としている。

しかし、この部落研は1974年11月22日に教師を説得する保護者に校舎の窓から「エッタ帰れ」「四つ帰れ」とシュプレヒコールをしている。

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部落の生徒ら21名がハンスト(1974年11月21日) 
・11月21日
教師達は日本高等学校教職員組合(高教組)が手配した城崎の旅館で集団宿泊していた。

職員室前で生徒たち21人解放研がハンストに入る(何も食べずに泊まり込む)。

※ちなみに
八鹿高校のある兵庫県養父市八鹿町兵庫県の北部(日本海側)のため冬は寒い。

 

・11月22日
教師達約60人は登校してすぐ年休届けを提出。

各教室で生徒に「授業ない」って言って、三列縦隊スクラムを組んで集団下校をする。

前日から職員室前でハンストに入っている生徒たちをまたぐようにして下校(翌日からは連休)。

  

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こうした教師たちの行動を知った解放同盟の地元支部長がかけつけ、教師の列の前んい両手を広げて立ちはだかるが、引きずられることに。

校長、教育委員会、育友会関係者なども教師たちを制止しようとするが、教師たちはとまらない。

最終的に、連絡を受けた解放同盟員に囲まれて、教師たちはスクラムを組んでその場に座り込む(解放同盟員の中心にいたのはハンスト中の生徒の保護者)。

このとき、解放同盟員が教師をごぼう抜きにして47人を学校に連れ戻す(13人は逃げ出す)。

 

保護者が教師への抗議と説得(糾弾)

学校に連れもどした教師に解放同盟側が抗議と説得をする(いわゆる糾弾をした)。解放同盟員は教師に自分の生い立ちもかたって説得するが、話を聞こうとしない教師たちもいた。

そんな教師の態度に我慢できなくなった一部の人が教師を暴行した。でも、解放同盟婦人部がすぐに止めに入った。

このことを当時の赤旗は「血ぬられた高校体育館」「水をかけられてずぶぬれになった男女の教師をむりやり裸に」「バスケットボールのボードの支柱にぶら下がったゴムチューブ、ここで逆さづりの拷問?」って報道したが、どれも事実ではなかった。つまりデマを報道し、デマに対する訂正記事もいまだに出していない

また、このとき共産党赤旗の記者を八鹿高校に常駐させたり、あらかじめ病院の手配していた。つまり、トラブルが起こることを想定して、生徒と保護者をふりきって、生徒や保護者の前を隊列を組んで下校するという挑発をおこなってた。

 

事件後
共産党は八鹿高校事件をつかい「解放同盟は暴力集団」という大キャンペーンをはっていく。また、この事件は部落地名総鑑を販売するためにも利用されたらしい。

 

思ったこと
たしかに殴ったのは悪いしそのことが裁判で裁かれるのは仕方ないけど、そもそも教師側が差別してきたのに対し抗議してるのに、共産党側は教師側の肩を思って、挙げ句の果てには抗議側を暴力集団っていうレッテルを貼るのおかしいやろと思った。

よく、八鹿高校事件だして「解放同盟 = 暴力集団」っていうけど、それ言う人たち差別される当事者のことは何も考えてないんやなと思った。

※参考文献
 『同和利権の真相」の深層ー何がリアルや!』(解放出版社

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https://www.amazon.co.jp/%E3%80%8C%E5%90%8C%E5%92%8C%E5%88%A9%E6%A8%A9%E3%81%AE%E7%9C%9F%E7%9B%B8%E3%80%8D%E3%81%AE%E6%B7%B1%E5%B1%A4%E2%80%95%E4%BD%95%E3%81%8C%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%82%84-%E5%AE%AE%E5%B4%8E-%E5%AD%A6/dp/4759210229

 

 

「同和地区」って呼称を使ってはいけないの?~部落問題の基礎知識①~

①「旧同和地区」という言い方

「部落差別解消推進法」をめぐる国会審議のなかで、被差別部落のことを「旧同和地区」と呼ぶ議員がいた。ボクはすごく気になった。

「特措法がなくなったのだから、同和地区はない」「実態調査で行政が、誰が同和地区出身かを特定することは差別になる」と共産党議員はいっていた。

行政が部落差別を解消するための同和行政を推進していく上で、部落差別を受ける「ひと」と「地域」を抜きには語れない。

部落差別を受けたという当事者が、行政に相談に来たとして、「同和地区出身者というのはいません」「だから、あなたが受けた差別は、差別であはありません」とでも言うのだろうか。

仮にそんなことを言っても、部落差別を受けた被害者に対して、なんの意味もない。現場では、そんな机上の空論を議論なんかしていない。

部落差別解消法が施行された。当事者の事をなんと呼ぶのか?すごく基本的で大事なことだと思う。答えは簡単。

部落差別を受る地域を「被差別部落」「同和地区」と呼べば良い。

そこで生まれた人を「部落出身者」「同和地区出身者」、部落に住んでいなくても親や、その地域にルーツがある人を「部落関係者」「同和地区関係者」と呼べばいいだけ。

もう一度、同和地区の呼称問題について、基本的な事を確認しておきたい。

 

②同和地区という呼称

「同和地区」という呼称は、部落差別を受けている地域(被差別部落)を指す行政用語として、1969年「特別措置法」以前から使用されきた。

1965年の同和対策審議会答申では、「この『未解放部落』または『同和関係地区』(以下単に『同和地区』という。)」とも記されている。

 

旧同和地区=「同和地区は存在しない」

2002年3月末の「地対在特法」失効をもって、「同和地区という呼称を使用してはいけない」というのは、おかしな話。

さらに「旧同和地区」というのは「昔、同和地区であった所」という意味。つまり、「昔は部落差別を受けていた地域」=「部落差別は今はもう存在しない」ということを意味する。

今回の部落差別解消法には「現在もなお部落差別は現存する」(第1条)としており、「昔、差別を受けていた地域」でなく「現在も差別を受けている地域」だから、「旧」でなく従来通り同和地区と呼べばいい。

 

同和地区の呼称と特別措置法

2002年3月に失効した「地対財特法」には、「同和地区」も「同和」という言葉すらない。一連の特別措置法において「同和」という文言が条文に用いられたのは1969~1982年「同和対策事業特別措置法」だけ。

33年間の特別措置法において「同和」の条文が存在したのは、1982年までの13年間だけ。以来2002年3月までの20年間、「特別措置法」の条文からは「同和」という言葉は姿を消している。法の失効=「同和地区」の文言を使用してはいけないなら、1982年に議論すべき。

 

「同和対策審議会」答申以前から使用していた

「同和地区」という呼称は、1969年の最初の特措法以前から、行政的にごく普通に使ってきた。1965年の同対審答申以前から、部落差別を受けている地域という意味で行政用語として公文書で使用されきた。なぜ、特措法失効=「同和地区」の呼称使用がダメになるのか。それは、「部落問題は解決した」という認識が前提にあるからだ。

 

③同和対策事業における地区指定

1969年の特措法以後、特別対策を実施する地域が「同和地区」(=行政用語としての部落差別を受ける地域が対象)。

「同和地区」に対する事業である以上、行政はこの事業「対象地域」である「同和地区」を限定する必要に迫られた。それが「地区指定」という作業で、地元と協議の上に設定した。

 

「同和対策事業対象地域」

「同和地区」を対象とする同和対策事業を執行するうえで、「同和対策事業対象地域」が指定されてきた。こうした経過の中で「同和地区」という言葉は、「部落差別を受けている地域」という意味とは別に、「同和対策事業の対象地域」という二つの意味が浸透していった。

こうして、「同和地区」と「同和対策事業対象地域」という意味の混同が「特別措置法が終了したら『同和地区』はなくった」との発想に。

法的に正確に言えば、特措法失効=「同和対策事業対象地域」がなくなっただけで「同和地区」(部落差別を受ける地域)は、部落差別があるから存在している。

 

④特別措置法の失効=同和行政の終了ではない。
特措法後の同和行政について議論された国の地域改善対策協議会(地対協)の意見具申(1969年)は、「現行の特別対策の期限をもって一般対策へ移行するという基本姿勢に立つことは、同和問題の早期解決を目指す取組の放棄を意味するものではない。」

「今後の施策ニーズには必要な各般の一般対策によって的確に対応していくとうことであり、国及び地方公共団体は一致協力して、残された課題の解決に向けて積極的に取り組んでいく必要がある」と、一般対策を活用して同和問題の早期解決に取り組むとの方針を示した。

「同和行政」とは、部落差別の解消を目的とする行政のこと。1965年の「同対審」答申に「同和行政は、基本的には国の責任において当然行うべき行政であって、過渡的な特殊行政でもなければ、行政外の行政でもない。部落差別が現存する限りこの行政は積極的に推進されなければならない。」と明記。

★1996年「地対協」意見具申の骨子
1,同和問題は過去の問題ではない。解決に向けて進んでいるものの、依然として我が国における重要な問題。
2,特別対策としての同和対策事業は終了する。
3,特別措置法の終了が同和問題の早期解決をめざす取組の放棄を意味するものではない。

 

【同和地区の実態把握は出来ない?】
部落差別が特定の地域に対する差別として機能している以上、それらの特定の地域を限定することによって、被差別の現実を把握する作業は、部落問題の解決に必要なのは当然。新たに「地区指定」しなくても、「旧同和対策事業対象地域」を対象にすればいいだけ。

「地区指定」したから、その地域の人は部落差別されるようになったの?No!部落出身を隠しても結婚や就職で身元調査で出自を暴き、不動産取引で同和地区を忌避する市民がいるから、「被差別」地区になっている。その差別の実態を把握することが、なぜ差別になるの?

 

まとめ

「旧同和地区」という言い方は、アウトだし、やめて欲しい。

部落差別は「存在する」のだから、従来通り「同和地区」「同和地区出身者」と使えば良い。

 

参考:『同和行政がきちんとわかるQ&A』(奥田均・村井茂,解放出版社、2008年)を、ぜひお勧めします。

https://www.amazon.co.jp/%E5%90%8C%E5%92%8C%E8%A1%8C%E6%94%BF%E3%81%8C%E3%81%8D%E3%81%A1%E3%82%93%E3%81%A8%E3%82%8F%E3%81%8B%E3%82%8BQ-%E5%A5%A5%E7%94%B0-%E5%9D%87/dp/4759230238

 

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どうする?人権教育~「差別に抗する教育の創造に向けて」~

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先日、大阪で開催された「全国人権・同和教育研究大会」に参加し、阿久澤麻理子大阪市立大学)さんの講演を聞いた。

テーマは 「差別に抗する教育の創造に向けて~ヘイトに抗し、マイノリティのエンパワメントに向き合うこと~」の講演。

在特会ヘイトスピーチ鳥取ループのことを中心に、人権教育として、どう取り組んでいくのかという視点で問題提起が行われた。


1,「法期限後」をめぐる問題提起

◆若者の部落問題認識

はじめに「法期限後をめぐる問題提起」として、若者の部落問題認識の変化が提起された。近畿圏の大学生を対象として調査結果(2014年度、対象2867人、1・2回生が7割)。

7割の学生が部落問題についての学習経験がある。しかし、

部落出身の友人・知人」が「いない・わからない」87.4%

在日コリアンの友人・知人」が「いない・わらかない」56.5%

 

部落問題は学んで「知ってはいる」けど、「顔の見えるつながり」はない。つまり、多くの若者にとって、部落問題は、リアリティを感じることが出来ないまま、知識として「知っている」という状況。


【現在の部落問題学習の問題】

⇒出会いのない、リアリティのない学び
⇒知識はあっても、抽象的な認識

 

◆マイノリティの「エンパワメント」の視点から

また、部落の子どもたちの立場の自覚の問題も課題になっている。解放子ども会などの活動が激減。自覚していない部落の子ども・青年たちも多い。

だが学校は取り組まないので、社会的立場の自覚は「親次第」になっている。

人権教育の原則は「エンパワメント」。

マイノリティという立場性を持つ当事者の教育をどう構想するのか、学校も地域、運動団体に問われている。

 

2、「ヘイト」-差別扇動が提起すること

京都朝鮮学園に対する襲撃事件(⇒マイノリティがアイデンティティを顕現させれば、攻撃が自分に向くかもしれないという恐怖)、

徳島県教組襲撃事件(⇒当事者のアイデンティを攻撃し、「つながり」を奪う行為)

鳥取ループによる滋賀県への同和地区所在地情報の公開裁判、

④「同和地区wiki」(部落地名総鑑のネット公開)など、差別の現実が語られた。

 

特に【ヘイト行為が提起する問題】として、在特会桜井誠・元会長、鳥取ループ・示現舎の宮部・三品らは、全員30~40代。まさに、ロスジェネ世代。高校・大学等を出ても、就職氷河期。そして、同和教育をフルに受けた世代。

学校で同和教育を受けた世代が「自分たちの方がマイノリティだ」「自分たちの方がひどい状況だ」「やつらは特権を持っている」「自分たちは誰も知らない真実を知っている」と叫ぶ。

同和利権」「在日特権」と叫び、反差別教育の論理を逆手にとって、自論を主張。

それが同じ境遇の人たちなどに支持され、エスカレート。そしてネットの上で起きていることが、リアルでおきている民主主義を侵食している。

 

◆「インターネットとパワー」

ヘイト行為を主導しているのがロスジェネ世代の30~40代。

頑張っても保障されなかった世代。奪われた感覚の世代。

そこに、ネットの強大なパワーを使い、自分たちのことを発信。

いくら、まじめにがんばっても、国は自分たちを守ってくれなかった。

そこに「同和利権」「在日特権」「自分たちの方が差別されている」と叫ぶ。

 

古典的な人権概念が崩れてきている。
 彼らにとって「市民」は「権利の保持者」であり、「国家」は「市民の権利を実現する責務の保持者」という古典的人権モデルは崩壊している。新自由主義の中で「自己責任論」が叫ばれ、「国は自分たちを守ってくれない」ことを痛感してきたからだ。

 

逆に「市民」が「プロバイダー」から「サービス」を購入すれば、「表現の自由」という権利を思う存分に行使できる喜びを手に入れた。無限大ともいえる受け手に向けた情報発信ができる。

大きな組織や大学の研究者、マスコミと対等に自分たちの情報が発信できる。

「サービス」購入によって手にすることが巨大なパワーと自己を承認してくれる人たち。

人権保障をめぐる国家と市民の「社会契約」より、「商契約」の方が優位になってきている。

だからこそ、Twitteryoutubeなども、人権を保障する責務が問われている。

国連・人権教育10年は、第3段階にきている。

メディアと人権教育の段階。そこでは、マスコミに対する人権教育だけでなく、SNSを使って発信する個人も含めて、対象になっている。それは、ネット配信のパワーを持っているから。

 

【部落問題学習や人権教育の課題】

① 当事者との出会い学習

学校教育での部落問題学習で問題点であるリアリティの欠如記号化する「部落」「部落民をどう阻止するのか。

そのために、具体的な「誰か」に出会うことが重要。人権学習では、必ず「当事者」を招へいし、出会わせること。

そうすることで、部落問題が抽象的・記号の問題でなく、

「それは大切な誰かのこと」になる。

 

② 自分を語れることの重要性。
自己開示をして、受けとめてくれる集団つくりの重要性。

 

③ マイノリティのエンパワメント

解放子ども会の廃止、同和教育の後退により、社会的立場の自覚は、親にゆだねられている。どうしていくか。

そんな課題が、提起されました。

 

ヘイトスピーチ解消法」も「部落差別解消法」も、「教育・啓発」が重要な柱の一つ。知識だけでなく、しっかりと「ヘイト」に抗い、マイノリティのエンパワメントに向き合う人権教育が求められている。

増えている同和地区問合せ事件~部落差別は、いま④~

 

部落差別の現実は、どうなっているのか?

日本共産党は、先日の参議院法務委員会で「部落差別解消法」の審議の時に、各地の意識調査の結果に対して有田議員から差別の現状認識を問われたとき、身元調査や結婚忌避をする回答があっても、現実はそんなに発生していない、だから調査結果自体の社会的な評価・信憑性を否定する発言をしました。

本当にそうのなだろうか?個人的な感覚でなく、この間の現実はどうか、考えてみたいです。

 

1、増えている同和地区の「問い合わせ」

①増えている行政への「問い合わせ」

都府県や市区町村役場、隣保館などへの同和地区の問い合わせは、年々増えています。

1995年~2015年まで、過去20年間で確認出来ただけでも207件(『あいつぐ差別事件』『解放新聞』等で確認)の差別問い合わせがありました。

1995年~2005年は計46件ですが、

2005年~2015年では計160件となっています。

この10年間で差別問合せ事件は3倍以上に増えています。

問い合わせ先の多くは、都府県や市区町村役場・教育委員会などの行政です。その他に隣保館、人権啓発センター、解放同盟都府県連、小学校などもあります。

世代としては20代~80代までの各年齢層であり、不動産会社・マンション開発業者・住宅会社などの社員も目立ちます。

 

②直接窓口にくるケースも2割ある

行政等への同和地区問い合わせの8割が電話です。

その多くが匿名または自称(〇〇市在住、偽名)で問い合わせをおこなっています。

なかには、直接、行政等の窓口まで来て、堂々と「同和地区はどこか」と問い合わせるケースもあります。

結婚相手の身元調査では、親子(母と娘)が役場を訪ね、

「結婚する相手が同和地区に在住しているのか知りたくて調査したい。結婚相手の戸籍を請求できるか」(大阪2006)という事件も起きています。

また、市役所に20代の女性が訪問し、「〇〇(名前)は、市内の部落に多い名字か」「調べる人が調べたら、部落の人かどうか特定できるか」(香川2011)など、結婚した相手が同和地区出身かどうか調べにきたケースもあります。

その他、直接窓口にくるケースで多いのが、不動産会社などの土地差別調査などです。

不動産会社の社員が市役所を訪問し、住宅地図を広げ、

「部落を地図上で示して欲しい」「表面上は示さないが、競売の情報として必要」(福岡2005)

「この地域に歴史的に部落が関係しているか、あるかないか教えて欲しい」(東京1995)

など、堂々と問い合わせている事件もあります。

また、建設業者が市役所に来て、

「営業所をS市に設立したい。市内に同和地区はあるか」(兵庫2010)との問い合わせ事件もあります。

 

(3)問い合わせ内容
過去20年間の問い合わせの内容(目的)の上位は下記の順になります。

1位,「同和地区の所在地情報」76件(37%)、
2位,「住宅・土地購入」56件(27%)、
3位,「結婚(交際)相手の身元調査」38件(18%)、
4位,「引越・転居」31件(15%)、
5位,「その他」(自分のルーツ等)6件(3%)です。

 

◆1位,同和地区の所在地情報
問い合わせで一番多いのは、「〇〇市の同和地区はどこか」「〇〇(地名)は同和地区かどうか教えて欲しい」など『同和地区の所在地』に関する問い合わせです。

これらは結婚や就職における身元調査、不動産取引・転居における土地差別調査など、どのようなケースでも利用される内容です。

【具体例】
①「自分の住んでいる地域に同和地区があるかどうか知りたい」「どこに聞いたら教えてもらえるのか」「自分は解放同盟とは関係ない」(福岡2015)

②「部落地区がわかる地図があるのか。同和地区の分かる地図か、それが分かるものはないか」(京都2013年)

③「〇〇市内に3つの部落があると聞いた。どこにあるのか教えてもらえないか」「どこで聞いたら分かるのか教えて欲しい」(香川2012)

④「〇〇町の△△というところは同和地区か」(滋賀2012)

⑤「自分が住んでいるところが同和地区かどうか知りたい」(奈良2009)

 

◆2位,不動産購入や引越先の物件

次に多いのが、『家や土地を購入』『引越・転居』の際に、その土地・物件が「同和地区かどうか」という問い合わせです。不動産取引において同和地区を忌避する市民の差別意識が具現化されたものです。

また、その市民の差別的ニーズに同調し、営業活動を行う不動産業者からの問い合わせも多いです。

 

【具体例】
①「この物件は同和地区の物件ですか」不動産業者(福岡2014)

②「〇〇市に転居を検討しているが、市内に同和地区はあるのか」(京都2013)

③「〇〇市内でマンションを探しているので同和地区を知りたい」(和歌山2012)

④「今度、娘が土地を買おうと思っているが、〇〇市に同和地区があったかどうか知りたい。△△川沿いにあったと聞いたことがあ る」(埼玉2011)

⑤「〇〇区内で部落だったところが、ここでわかるか」不動産業者、(東京2011)

 

◆3位,結婚(交際)相手の身元調査
次に、結婚相手の身元調査に関する問い合わせです。多くは親が子どもの結婚(交際)相手が、同和地区出身かどうかを確かめるために、身元調査をおこなっています。

 

【具体例】
①市役所に来庁、「息子の結婚相手の住所が、同和地区でないのか」(福岡2015)

②「今度、娘が結婚する相手が同和地区かどうか教えて欲しい」(高知2013)

③「いま付き合っている人がいる。どこが同和地区か教えてくれ」(和歌山2013)

④「結婚のことで、〇〇市△△番地は同和地区か」(長野2013)

⑤「〇〇市の△△が部落どうか教えて欲しい。娘の交際相手が・・」(兵庫2013)

⑥「結婚のことで伺いたい。〇〇に同和地区はあるのか?」(香川2012)

 

2、巧妙になっている問い合せ

行政などにストレートに同和地区の所在地などを聞いても、教えてくれないので、巧妙な手口で問合せをしてくるケースもあります。 

 

 (1)「解放同盟があるか?」

解放同盟の支部があるかどうかや、支部長の自宅を知りたいと同和地区の所在地を聞きだそうとするケースもあります。

 

【具体例】

①「若い頃、同和地区の団体の支部長に大変お世話になった。どうしても会ってお礼を言いたいので支部長の自宅を教えてくれ」と言う。団体の名前や支部長の名前は言わず、支部長の自宅の所在地を聞こうとする(埼玉2009)。

②解放同盟奈良県連の事務所に電話で、「〇〇(地名)には、部落解放同盟の支部があるんですか」「〇〇と□□(地名)と、どちらが活動しやすいですか?支部はありますか?」「部落があるか、ないかで答えてくれたらいい」(奈良2009)。

 

(2)「自分も部落出身」「自分のルーツが知りたい」

自分や家族が「部落出身かどうかを知りたい」という聞き方で問い合わせてくる。

 

【具体例】

 ①「私の生まれたところが部落かどうか調べて欲しい」(和歌山2014)

②「〇〇は同和地区か?」「身内がそうで・・・」(京都2011)

③「奈良の方でいわゆる部落といわれるところがあるのかどうか教えて欲しい。自分の家系はどうであったのか知りたい」(奈良2009)

④「息子の結婚相手が部落出身かどう知りたい」、差別身元調査であることを指摘すると、「自分も部落の人間だ」と偽り、聞きだそうとする。(山口2007)

 

 

(3)隣保館のある場所

隣保館の有無や所在地を尋ね、同和地区の所在地を聞きだそうとするケースもありま 

 

【具体例】

①「〇〇というところに隣保館があるが、同和地区か」(福岡2013)す。

② 「〇〇市にある隣保館の場所を全て教えて欲しい。地域の名前だけでも教えて欲しい」理由を聞くと「結婚のため」と答える。(奈良2011)

③「県内の隣保館の一覧リストが欲しい」(山口2011)

④「市内の隣保館の名前を教えて欲しい。」「〇〇市営住宅は同和地区か?」(和歌山2010)

 

 

(4)公営住宅が「同和地区かどうか」

公営住宅の申込・入居に関して、その住宅が同和地区なのかどうかを聞くケース。

 

【具体例】

①町営住宅に関して、「そこは同和地区なのか」(和歌山2013)

②  「この入居募集団体一覧で同和地区はどこか?」(和歌山2011) 

③「〇〇地区の住宅は同和対策事業の住宅か?」「結婚に関する調査」「どこへ聞けば教えてもらえるか。興信所か?」(長野2010)

④「市営住宅に申込みたいが、その建物がある場所は同和地区内か」(奈良2010)

 

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2002年3月末に同和対策事業に関わる特別措置法が終了した。
行政や学校でも「どこが部落か、誰が部落民か」が分かりにくくなった。

だから差別はなくったの?
No!

逆に同和地区問合せ事件が増えた!
部落があるから差別があるんじゃない。
結婚や引越などで部落を忌避する人たちがいるから、被差別部落になっている。

差別の原因は被差別者の存在にあるんじゃない。

同和地区問合せ事件は、そんな部落差別のあり方を考えさせられる事件。

 

参照:『本人通知制度ガイドブック(改訂版)』(2016年5月、部落解放同盟中央本部)より